エーゲ海に眠る古代ギリシャの秘宝(古代船の舳先を飾る、イルカにのった少年像)を、セクシーなあまちゃん、ハンサムな考古学者、盗掘も辞さない古美術蒐集家が相争うという海洋アドベンチャー映画である。
あまちゃんに扮するソフィア・ローレンのハリウッド映画初主演作でもあり、ダイナマイト・バデーを惜しげもなく晒してくれる。
お相手の考古学者は「シェーン」のアラン・ラッド。本当に美しかったのはB級映画に出ていた頃であり、当時は酒焼けしてしまい、顔のむくみが酷くなっていた。
さらに「ローラ殺人事件」「愛の泉」のクリフトン・ウェッブがおしゃれで老獪な蒐集家役で登場する。
主題歌でも英語の歌詞の方は、ジュリー・ロンドンの歌で世界的に有名になった。タイトルも「Boy on a Dorphin」で内容も映画に無理矢理こじつけている。しかしオリジナルのギリシャ語版 “Ti ‘ne afto pou to lene agapi ” は財宝とも関係ない完全なラブソングである。
「Boy on a Dorphin」=「イルカにのった少年」というと、城みちるが歌った唄や、手塚治虫と西崎義展+富野由悠季がコンビを組んだアニメ「海のトリトン」がイメージされる。
例えば、城みちるの「イルカにのった少年」は、恋人のためイルカに乗ってわざわざ南の海からやって来るわけだし、「海のトリトン」だってギリシャ神話をベースにしてる。
城みちるの歌や「海のトリトン」は、この映画や英語版主題歌「Boy on a Dorphin」があって、初めて生まれた発想なのだろう。
Synopsis:
海女フェードラはヒュドラ島から少し行った沖まで漁師のリフに乗せて行ってもらい、そこから海綿漁に潜っている。今日は海中で足元を取られ滑り落ちて、少年がいるかに乗っている、古代船の穂先の装飾を見つける。最初は誰も信用しなかったが、村のヤブ医者ホーキンスは、彼女が持っていた釘を調べて船舶が2000年前のものだと分かる。そうすると相当に高そうな美術品だ。フェードラはこれを売って弟ニコの学費にしたいと思う。
工芸品だと国内で売ろうにも規制があって高く売れない。ただ問題があってギリシャの国宝を外国へ無許可で輸出することは違法行為なのだ。そこで工芸品に目がない外人が狙い目とホーキンスは教え、フェードラをアテネの博物館に送る。
アテネでフェードラは二人のアメリカ人と出会う。一人はギリシャの文化財保護に協力する考古学者ジムで、もう一人は美術品には糸目をつけない大金持ちパーマリーだ。
フェードラはよく考え、リフ、ホーキンスと相談した結果、金持ちのパーマリーと組むことになった。
しかしジムも情報を知って島にやって来る。フェードラはジムを案内するふりをして見当違いの海にばかり潜る。
ある日、フェードラも騙しているのが辛くなってきた頃、ジムにニコがフェードラたちが本当の在処を隠しているのを教えてくれる。
今度は、ジムは本土から金属探知機を送らせて探しはじめる。
一方、パーマリーは探索を妨害するため、宝物を洞窟に移動させる。
フェードラはいつのまにか他国の財宝のために尽くすジムに心を許すようになっていた。ジムも人生で最も重要大切なものは金銭ではないことを教えようとしていた。フェードラは迷ってしまう。
翌日、金銭と引き換えにリフたちは宝物をパーマリーに渡すことになっていた。「イルカにのった少年」を洞窟から引き出し、ひもに垂らして船で曳航している。フェードラは裏切り者としてリフの船に括り付けられていた。
そのとき、ギリシャ警察が現れた。ずっとパーマリーの動きを探っていたのだ。文化財保護法違反でパーマリー、リフらを括ろうとする。ところが水中曳航しているはずの「イルカにのった少年」は盗まれていた。結局、全員釈放となる。彼らは狐につままれたような気持ちだった。
港へ帰ると、町中お騒ぎだ。弟ニコと新しい島の守り神として「いるかにのった少年」を乗せた大漁船団が帰ってきたのだった。
Impression:
ソフィア・ローレンはローマ生まれのナポリ育ち。1951年17歳の時、ロバート・テイラー主演のMGM映画「クォ・ヴァディス」に奴隷のちょい役で出演していたが、その後1953年頃からイタリア映画界でブレイクして、1957年ハリウッドから招かれてアメリカ映画主演第一作を撮った。それがこの映画だ。シネマスコープのカラー画面で撮影され、迫力ある映像がソフィアのバストを映し出すと観客は熱狂したという。
しかしこの映画は慣れない英語で苦労しているのか、イタリア語の演技よりもやや硬い。
ギリシャ人のダンスは「日曜はダメよ」の主演メリナ・メルクーリでお馴染みのように、手の使い方が特殊である。一方、ソフィアが披露するダンスは、一見してトルコ系かコサック・ダンスの変形かと思ってしまう。もちろんギリシャにもいろいろなダンスがあるのだろう。
水中シーンはアップ以外吹替えである。そのシーンも水槽で撮影しているようだ。
アラン・ラッドは、西部劇「シェーン」で押しも押されぬトップ俳優だったが、ここではイタリアの新鋭を受けて立つ立場だ。1940年頃のデビュー当初と比べて、美しさの点では老いてしまったが、まだパンツ一丁でダイビング出来るだけのスタイルは保っていた。(元はアメリカの体操競技オリンピック候補)でも本音はギリシャの酒が飲みたかったのだろう。
その後、海洋アドベンチャー映画はたくさん作られたため、現在ではこの映画の評価は低い。しかし当時リアルタイムで見た人は、ソフィアのバストに目が釘付けになったから、依然として人気があるそうだ。
監督はルーマニア生まれでギリシャ育ちのジーン・ネグレスコ(「ジョニー・ベリンダ」「百万長者と結婚する方法」)。
原作はデビッド・デヴァインの傑作海洋小説。(他に「激戦ダンケルク」の原作小説:イギリス軍から見たダンケルク大撤退)
この映画のヌーヴェルヴァーグ版が1967年のアラン・ドロン主演フランス映画「冒険者たち」の海洋シーンである。あの映画はジョアン・シムカスがヒロインで、テーマソング「レティシア」が劇中何度も流れる。
Staff/Cast
監督 ジーン・ネグレスコ
製作 サミュエル・G・エンジェル
原作 デイヴィッド・デヴァイン
脚色 アイヴァン・モファット 、 ドワイト・テイラー
撮影 ミルトン・クラスナー
音楽 ヒューゴー・フリードホーファー
主題歌
作曲 タキス・モラキス
作詞 J.フェルマンルー、 ポール・F・ウェブスター
編曲 ヒューゴー・フリードホーファー
唄 ジュリー・ロンドン、劇中ではソフィア・ローレン
出演
アラン・ラッド ジム・コールダー
ソフィア・ローレン フェードラ
クリフトン・ウェッブ パーマリー
ホルヘ・ミストラル リフ
ローレンス・ナイスミス ホーキンス医師
ピエロ・ガニョーニ フェードラの弟ニコ
ゲルタルード・フリン コールダーの秘書ミス・ディル
アレクシス・ミノシス 謎の男
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