高倉健、大原麗子、ちあきなおみという奇跡の顔合わせが見られる佳作映画。
高倉健は昔高校野球のエースとして鳴らしたが肩を壊し、造船会社に入ったがリストラ専属の総務課長にされて会社が嫌になり辞めて赤提灯を開業した。
ヤンデレのさえ大原麗子)は昔付き合っていた高倉健が忘れられずに、今の主人が経営する牧場に放火して逃げる。警察は主人に対する放火殺人未遂でないかと疑いを持っている。
この二人を軸に「居酒屋兆治」に集まる人の悲喜こもごもを描いている。
ちあきなおみは赤提灯の向かいのカラオケを経営するママを演じる。歌が上手くて地元の集会では引く手数多だ。
そんな芸達者を集めた映画が面白くないわけがないと思うだろう。
さえが札幌で亡くなり葬式で関係があった3人の男がともに酒を飲んでいる。かつて恋人だった高倉健、夫だった左とん平、生前の愛人だった平田満がそれぞれの悲しみ方を表現してる姿は、思わず見入ってしまった。
また伊丹十三の悪役演技、美里英二の狂った艶技には敬服する。
加藤登紀子が作って高倉健が歌う主題歌も良い。

 


しかし満足してるわけでもない。いささか実験調の映像が鼻についた。

木村大作の撮影は、カメラマンの個性がそのまま出て来ている。でもカラーフィルムを使うカメラマンの個性が前に出過ぎてる作品は嫌いだ。

大野靖子の脚本は味があるものなのだが、山口瞳原作の作品とは相性が悪いようだ。原作の味わいを生かすべきだと思うが、彼女はさよの一生を軸に関わりの少ない短編のぐっと圧縮したダイジェストとして繋いでいく手法をとった。おかげで薄味の作品に仕上がっている。決して山口瞳は薄味の人ではない。
原作が好きな人には合わないかもしれない。

 

監督 降旗康男
脚本 大野靖子
原作 山口瞳
製作 田中壽一
撮影 木村大作
主題歌 高倉健「時代遅れの酒場」(加藤登紀子作詞作曲)

配役
藤野英治 高倉健
藤野茂子 加藤登紀子
神谷さよ 大原麗子
岩下義治 田中邦衛
河原 伊丹十三
神谷久太郎 左とん平
井上 美里英二
越智 平田満
堀江 池部良
秋本 小松政夫
相場先生 大滝秀治
峰子 ちあきなおみ

居酒屋兆治 1983 東宝

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