これも昔、学校で見た映画。鳩山一郎首相や河野一郎農相、フルシチョフ書記長の尽力で発効した日ソ共同宣言から10周年の記念映画で、史上初の日ソ合作映画だった。日本側監督は衣笠貞之助、脚本は黒沢組の小国英雄、撮影監督は宮川一夫。
あらすじ
流しのバイオリン弾きの小父さん(宇能重吉)と暮らす小学生の健(稲吉千春)は、まぶたの父を探すために一人黙ってソ連へ旅立つ。ナホトカまで船で密航して見つかってしまうが、ソ連側が招待した形でモスクワまで送ってくれると言う。でも途中で案内してくれるはずのロシア人とはぐれて、リュック一つでソ連の大地に放り出されてしまう。
日本語しか話せない健だったが、そこで会うロシア人は皆、物怖じしない健に対して我が子のように優しく接してくれて、列車と自動車を乗り継ぎレニングラードに到着する。そこで東京で会ったことのあるボリショイサーカスの花形道化師ニクーリンと再会し、モスクワの日本大使館に照会してもらう。ところが父は5年前に病死していた。ニクーリンは健を預かり、モスクワ音楽院に入学させる。
10年後、指揮者ルドルフ・バルシャイが率いるモスクワ室内管弦楽団とともに青年になった健がバイオリンのソリストとして来日する。健はテレビを通じて小父さんの行方を求めるが、誰も知らなかった。
その頃、小父さんは孤児院で下男として働いていた。事情を知る園長が名乗りを上げてはどうかと言うが、小父さんはテレビで演奏を聞くだけで良いと言って、断る。
雑感
昔見ていて、主人公はろくなものを食べずソ連の東端から西端まで移動してるのに、どうして痩せないのかと不思議に思った。
外務省から受けた仕事だけに、税金が投入されたはずだから、大映としては美味しい話だったのだろう。
子供向け日教組映画に関わらず、京マチ子、船越英二、宇津井健ら、すごい俳優が出ていた。
小父さん役宇野重吉が全く手を抜かず、流石の好演である。
他に当時旬の若手だった安田道代、太田博之が共演。
この映画のおかげで上の世代と比べて、我が世代はソ連人に対する免疫が出来た。今のロシア人の方が怖い。
ユーリー・二クーリンはロシアの喜劇俳優。代表作は「祖国のために」。
スタッフ・キャスト
監督 衣笠貞之助 、 エドワールド・ボチャロフ
製作 永田雅一 、 ゲ・イ・ブリチコフ
脚本 小国英雄 、 エミール・ブラギンスキー
撮影 宮川一夫 、 ピーター・カターエフ
音楽 エミング・ハチャトリヤン
指揮 ルドルフ・バルシャイ
演奏 モスクワ室内管弦楽団
配役
川間健(子役) 稲吉千春
健の小父さん 宇野重吉
道化師ニクーリン ユーリー・ニクーリン
道子(成人) 安田道代
川間健(成人) 太田博之
園長 京マチ子
ソビエト国立ボリショイサーカス