田宮二郎と天知茂が凸凹コンビを組み、藤本義一が脚本を書いて、田中徳三が監督したアクション映画「犬」シリーズ第一作。
主演は田宮二郎、共演は天知茂、江波杏子、水島道太郎。白黒映画。
あらすじ
一匹狼のヤクザ鴨井大介は、母の墓参りのため高松を訪れた。墓地は、開発されてゴルフ場となっていた。大介は、金比羅参りの途中、印象に残る強烈な美人麻子と出会った。
宿に帰った大介は、やくざに囲まれる麻子を見て、助けに入るが、勢い余ってヤクザ一人を刺してしまった。
神戸港を出航する船で、大阪の沼野観光社長から30万円を渡される。大介が喧嘩した相手は、神戸の大興組だった。彼らは、沼野の暗殺を狙ったのだが、大介が騒ぎを起こしたため助かったのだ。大介が聞き捨てならなかったのは、大興組が墓園をゴルフ場に開発した張本人だったことだ。大介は気色ばんだが、沼野は引き止めて食客とした。
沼野の経営する、大阪のラブホテルの番を任された大介は、女中柳子と寝ようとしたとき、ホテルに火事が起きる。沼野の腹心である青井が放火して、保険金詐欺を働き、4200万円を懐に入れて大興組に逃げたのだ。
大介は、沼野から青井を殺すよう依頼されたが、一匹狼なので断ってしまう。途端に住処を追い出され、ドヤ街に移る。そこへ刑事の木村が現れ、大興組と沼野観光の対立関係を断つため、青井を捕まえて欲しいと頼む。
麻子は、大興組舎弟康市の愛人だということだ、麻子の情夫康市が、朝子を連れて逃げようとする現場に大介は出くわす。そして、麻子か保険金4200万円を渡せと脅した。康市が麻子と心中しようとする現場を見た大介は、康市を海に突き落し、麻子を旅館に匿った・・・。
雑感
今東光原作、勝新太郎主演映画シリーズ「悪名」からのスピンアウトと言える藤本義一脚本「犬」シリーズ。
関西弁の田宮二郎と標準語の天知茂の腐れ縁は、今でも十分受け入れられると思う。
女優は、江波杏子が良かった。いずれ独り立ちする女優と確信した。それが、「女賭博師お銀」シリーズにつながる。
水島道太郎が早撃のライバル役だが、最後に同士討ちで倒れるから、東大中退成田三樹夫が田宮二郎の真のライバルのだろう。
そうだったら、もう少し面白いアクションを見せてほしかった。
少し物足りない。
スタッフ
企画 辻久一
脚本 藤本義一
監督 田中徳三
撮影 武田千吉郎
音楽 塚原晢夫
キャスト
鴨井大介 田宮二郎
木村準太 天知茂
唐沢麻子 江波杏子
柳子 坂本スミ子
康市 五味龍太郎
神沢 島田竜三
佐伯伸一郎 須賀不二男
沼野五郎 佐々木孝丸
青井喜六 水島道太郎
新楽会顧問 水原浩一
瓜生 成田三樹夫
本橋 寺島雄作
彦松 木村玄
咲枝 西岡慶子
マダム 毛利郁子
＊＊＊
翌日、康市が死んだことが報じられた。実は、康市と麻子がたった二人の姉弟で、姉の貞操を守るため、康市が朝子を愛人に仕立てて、組の連中に手を出させなかった。このことを知った大介は、後悔の念が先にたち、麻子を抱くことはできなかった。
しかし、刑事の木村は康市の死因は溺死ではなく、ドスによる刺殺と教えてくれる。大介が康市を殺したわけではなかった。その夜、二人は果てしなく愛し合った。
康市の骨を引きとり大興組に出向いたが、佐伯は銃の名人青井との対決を条件に渡すと言う。
大介と麻子は、覚悟を決めて決闘場に乗り込む。当然、青井だけでなく、大興組の幹部連中も集合をかけている。大介は、自慢のコルトで、敵を次々と始末する。焦った敵幹部瓜生は大介を狙おうとして謝って青井を撃ってしまう。総大将を失った敵は、闇雲に撃ってくるが、もはや早撃の大介の敵でなかった。
大興組を壊滅したところに、刑事の木村がパトカーで駆けつける。大介は、麻子の前で木村に手錠を掛けられる。大介は、麻子の身が立つように世話してやってくださいと、木村刑事に頼んでパトカーに乗り込む。
