アガサ・クリスティの名作小説「そして誰もいなくなった」は1945年にアメリカ・20世紀フォックスで一度映画化されているが、これが二度目の映画化である。

基本的には小説版ではなく、戯曲版に沿っている。

離れ小島から設定を変えて、閉ざされた雪山に舞台を移している。また10人の職業も時代を反映して、マーストンに当たる青年がアイドル歌手、ブレントさんが美人女優のベルゲンになっている。山特有の殺人方法も使われている。

今回も10人しか出演者がいないので、俳優は豪華な顔ぶれだ。

 

Synopsis:

オーエン夫妻という見知らぬ夫婦に8人の男女が招待状をもらって、雪山の別荘にはるばる出かけてくる。そこにはグローマン夫妻という使用人がいたが、オーエン夫妻は夜に現れると言う。ところが夕食後、オーエン夫妻は現れず突然テープが鳴り出し、10人全員に殺人の経験があることを暴露した。それだけでなく、歌手のマイクが毒殺される事件が起こる、まるで「10人のインディアン」の歌のように。

外部との連絡手段は絶たれていた。週明けにならなければ、ここに閉じ込められてしまう。翌朝ロープウェイを操縦してグローマン夫人が逃亡を図るが、途中でロープが切れて墜落死する。さらに罪を告白したマンドレイク将軍が刺殺される。ロンバートとグローマンも争って遺恨を残す。

翌朝、登山の経験があるグローマンがザイルを伝わり雪山を脱出しようとするが、ザイルは根元から切断され、墜落死する。さらに女優のベルゲンキャノン判事が殺される。

翌朝、残された4人は次第に疑心暗鬼を強める。先ずブロア探偵が頭の上から石像が落ちてきて殺される。ところがもう一人、アームストロング医師が雪原で死んでいるのが発見される。昨夜のうちに殺されたらしい。

残るは二人だけだ。秘書アンは犯人は自分ではないからもう一人の生き残りロンバートが犯人だと気が付く。そのとき持っていた銃でアンは彼を射殺して室内に戻ると、死んだはずの人物が微笑んで待っていた・・・。

 

Impression:

原作よりも最初の映画化のエンディングが好きだった。だから同様のエンディングを使っている、この作品も気に入っている。。

元々は1943年に、舞台用に戯曲をクリスティが書いたとき、暗いエンディングは時節柄、相応しくないと考えてハッピーエンドにした。

映画脚本もそれを元にしている。クリスティ存命時はこれが映像化条件だったのだろう。(没後の作品はクリスティの方針を守ってないものがある)

 

ただ、雪山設定は少し陳腐だ。グローマン夫妻の殺され方が、ともに山ならでは豪快なものだった。
松本清張や井上靖のような山岳小説を得意とする作家ならまだしも、女流のクリスティ的なトリックとは感じなかった。だいたいロープウェイが谷に落ちたら、雪崩が起きるような大きな音がして誰かが気付くだろう。

出演者ではラストのヒロイン、シャーリー・イートンの顎が張っているのが気になるが、ヒュー・オブライエンが格好よかったから良しとしよう。

ウィルフリッド・ハイド・ホワイトスタンリー・ホロウェイはともに英国を代表する名優で、オードリー・ヘップバーン主役のミュージカル映画「マイ・フェア・レディ」にともに重要な役で出演していた。ここでも存在感を示す。

総括してアメリカ市場向きの大らかなところがあったが、基本的には犯人の手がかりを開示する、英国らしい伝統的推理映画だった。

 

Staff/Cast:

監督 ジョージ・ポロック
製作 オリヴァー・A・アンガー
原作 アガサ・クリスティ
脚色 ピーター・イェルドハム 、 ピーター・ウェルベック
撮影 アーネスト・スチュワード
音楽 マルコム・ロックヤー

 

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出演
ヒュー・オブライエン ヒュー・ロンバード (50年代にヒットした連続TVドラマ「保安官ワイアット・アープ」主役など)
シャーリー・イートン アン・クライド (「ゴールド・フィンガー」のボンド・ガール)
フェビアン マイク・レイヴン (英国のアイドル歌手)
レオ・ゲン マンドレイク将軍
スタンリー・ホロウェイ 探偵ブロア (英国人、「マイ・フェア・レディ」父親役)
ウィルフリッド・ハイド・ホワイト キャノン判事 (英国人、「マイ・フェア・レディ」ピカリング大佐役)
ダリア・ラヴィ ホナ・ベルゲン (「サイレンサー沈黙部隊」の悪役)
デニス・プライス アームストロング医師
マリオ・アドルフ グローマン氏 (「ブリキの太鼓」)
マリアンネ・ホッペ グローマン婦人

 

 

姿なき殺人者 (Ten Little Indians) 1967 イギリス製作 ワーナーブラザーズ配給 —アガサ・クリスティ原作の世界的名作推理小説を映画化

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