二人の若い軍人と出会う美人姉妹歌手を描く、超豪華な将兵慰問映画。リチャード・コネル 、 グラディス・レーマンのオリジナル脚本をリチャード・ソープが監督したミュージカル映画。主演ジューン・アリスン、グロリア・デヘヴン、ヴァン・ジョンソン。ジョー・パステルナークの製作。
あらすじ
両親がともに芸人で楽屋で育ったパッチイと妹ジーンはブロードウェイで「デヨ・シスターズ」として、ハリー・ジェームズ、ザヴィエー・クガートさらにカーロス・ラミレスが出演する名門クラブ・フロリヤノに出演していた。ある夜から妹に蘭の花がジーンのもとに届けられるようになり、姉パッツィは妹が誑かされはしないかと心配で仕方がない。
姉妹は毎晩ボランティアで自分たちのアパートにて米軍将兵の慰問会を催していた。常連客の中にはテキサス農夫のフランク・ミラー軍曹と、ジョニー・ブラウンという水兵がいた。ジョニーもフランクもジーンに夢中だ。
客が増えアパートが手狭になったので近くの倉庫を慰問クラブにしたいと夢をジョニーたちに語った翌日、ニズビーという不動産屋が来て、姉妹にその倉庫を無償で貸すと言う。姉妹が早速行くとガラクタばかりの倉庫に、昔懐いていた芸人ビリー・キップが住み着いていた。姉妹はビリーと一緒に慰問クラブをここに作ることを決心するが、その途端に魔法のように作業員がやって来て、立派なサロンが出来上がってしまう。そればかりか蘭の送り主から酒や食事まで届けられ、ハリー・ジェームス楽団、ザヴィエー・クガート楽団、ホセ・イタービらが慰問会にわざわざ出演してくれる。
ビリーはニズビーの電話を盗み聞きして、蘭の送り主が大富豪ジョン・ディックマン・ブラウンであることを突き止める。パッツィはジーンを金で買うつもりかと憤り、抗議に行く。ところが老人のブラウン氏も、息子のブラウン2世も知らない。そこへ孫として紹介されたのが、水兵ジョニーだった。秘かにジョニーを想っていたパッツイは彼のことを諦める。そしてジーンがジョニーと結婚する前に、家を出る決心をする。
ところがジーンは存外しっかり者であり、退役するフランクと婚約して、テキサスで農業を手伝うと言い出す。ジョニーも自分が本当に愛しているのはパッツィだと告白し、パッツィは喜び承諾する。そして最後にみんなの前でラスト・コンサートを行う。
雑感
ジューン・アリスンはちょうど私の伯父が好きだった女優さんである。決して美人と思わないが、愛嬌があって気っぷも良くて、理想的なお嫁さんだろう。奥さんである伯母は全然タイプが違って、グレン・ミラー夫人役のジューン・アリスンよりベニー・グッドマン夫人役のドナ・リードの方が近かった。日本人にアリスンのタイプはタイプはあまりいない。ジューン・アリスンとヴァン・ジョンソンの6本の共演映画の一本目で、ヴァン・ジョンソンは初主役級の仕事だった。
ジミー・デュランテが歌うシーンは、1994年の「遺産相続は命がけ?!」の回想で流れていた。デュランテのしわがれ声の真似をするマイケル・J・フォックスをカーク・ダグラス演じる伯父が気にいる設定だった。
今でこそジューン・アリスンはスタアであるから、この配役は自然だ。実はキャスティングの時点でグロリア・デヘヴンが主役をやる可能性も残されていたが、実際に役を交代してみるとジューン・アリスンの方が決まっている。それで彼女の主役とデヘヴンの妹役が決まり、アリスンはこの映画の成功によってMGMでのトップスターの座を勝ち取ったのだ。
さらに娑婆で観るだけではなかった。戦地あるいは刑務所で慰問用に使われた。と言うのも、サウンドトラックは計26曲に及び、演奏している方がはるかに長い。こんなアンバランスにご陽気な映画は暗いところにいる人が見るものだ。
NYのサビア・クガートやハリー・ジェームスなど有名バンドマスターを始め、リナ・ホーン、ヘレン・フォレスト、ヴァージニア・オブライエンら錚々たる有名歌手やミュージカル・スターが顔見せ的に出演している。モブ時代のエヴァ・ガードナーまでクレジット無しでチョクチョク登場する。
さらに傑作なのが本物の指揮者アルバート・コーツが指揮して喜劇女優グレイシー・アレンがピアノで「人差し指のための協奏曲」を演奏するシーンだ。何度も「ドレミファソラシド」とアレンが人差し指だけで弾こうとするが、どうしても「ドレミファソラシレ」になってしまう。そのうちにオーケストラが指揮者を無視して伴奏を始めてしまうというものだ。この曲を作曲したのは、二回アカデミー歌曲賞(「シークレット・ラブ」と「慕情」)を受賞した大作曲家サミー・フェインだ。どうやらグレイシー・アレンのブロードウェイでの持ちネタだったらしい。
スタッフ
製作 ジョー・パステルナーク
監督 リチャード・ソープ
脚本 リチャード・コネル 、 グラディス・レーマン
音楽監督 ジョージー・ストール
振り付け サミー・リー
撮影 ロバート・サーティース
キャスト
パッツィー・デヨ ジューン・アリソン
水兵ジョニー ヴァン・ジョンソン
妹ジーン・デヨ グロリア・デ・ヘヴン
フランク・ミラー軍曹 トム・ドレイク
元芸人ビリー・キップ ジミー・デュランテ
ブラウン一世 ヘンリー・スティーブンソン
ブラウン二世 ヘンリー・オニール
アダム海兵隊軍曹 フランク・サリー
不動産屋ニズビー氏 ドナルド・ミーク
父ディック・デヨ フランク・ジェンクス
サビア・クガート ラテンバンド指揮者(本人)
ハリー・ジェームス ジャズバンド指揮者兼トランペッター(本人)
ホセ・イタービ ピアニスト(本人)
グレイシー・アレン コメディアン
リナ・ホーン 歌手
リナ・ロメイ 歌手
ベン・ブルー ダンサー
カルロス・ラミレス 歌手
ヴァージニア・オブライエン 歌手
ヘレン・フォレスト 歌手
アルバート・コーツ ロンドン交響楽団指揮者
アンパロ・ノヴァーロ 本人
ワイルド姉妹(双子) 本人
エヴァ・ガードナー (クレジット無し)