成瀬巳喜男監督作品。
井出俊郎と松山善三が共同脚本。
カラー作品である。
高峰秀子、森雅之の「浮雲」コンビで、17年間続いた愛人関係の崩壊を描く。
正妻は淡島千景。
正妻の子どもとして育てられた娘、息子が実は○○だったというオチだ。
高峰秀子と淡島千景は最初のうちは平穏な関係を保っていたが、
高峰と森雅之との別れ話が持ち上がり、手切れ金のことで正妻と愛人がついに激突する。
森雅之は、二人の強烈な女の間でおろおろして、
ついにはどちらが良いか、子どもに聞いてみようよ、と言い出す。
このときの彼が面白い。
どろどろしているんだが、何故か笑ってしまう。
けれども最近テレビで見られるようなコミカルな演技をしているわけではない。
妻と愛人に挟まれる夫をやらせたら、彼が一番だ。
淡島千景は脂が乗りきっている。
仇のような愛人の子を自分の子として育てる、複雑な女心を実に達者に表現した。
ただ最後はあきらめが良すぎるように感じた。
今のドラマなら、育ての母親はもっと強いだろう。
40年違うと母心も違うのかなあ?
中北千枝子(プロデューサー田中友幸の妻)は淡島千景の身内で相談相手の役。
この映画では妙に存在感があった。
もっとも好きな場面は、高峰秀子が森雅之との別れ話を、
友人の淡路恵子、藤間紫、関千恵子、丹阿弥谷津子と相談するところだ。
五人も大女優が揃うと、実に楽しい。
こういうシーンは小津監督の得意技と思っていたが、成瀬監督もやるものだ。
妻として女として 1961 東宝