ジャン・ギャバンと共演した「ヘッドライト」など名作に出演したが、フランソワーズ・アルヌールの代表的主演作と言えば「過去を持つ愛情」などとともに「女猫」が挙げられる。
この題名は「メスネコ」でなく「メネコ」と読む。当時のポスターにちゃんとルビが振ってある。メネコは日本古来の呼び方であり、メスネコが明治以降作られた生物学用語であろう。
フランソワーズ扮するコーラが猫のような目をしていることからフランス語の原題として”La Chatte” と付けられた。その直訳である。
フィルム・ノワールっぽい白黒映画だ。
フランソワーズ・アルヌールと言えば、我々の世代には石森章太郎「サイボーグ009」の003のことだが、実は彼女をモデルにした。
あらすじ
1943年、連合軍とドイツ軍は激しい戦闘を繰り返していた。フランスはドイツに占領されていたが、レジスタンスが抵抗運動を続けていた。
夫をドイツ軍に殺されたコーラは、レジスタンスの一員としてドイツ軍施設に潜入してドイツ軍ロケットに関する秘密書類を盗み出すことに成功。
ドイツ軍はコーラの似顔絵を描き配布すると、将校ベルナールが昨晩会った女に瓜二つだった。そこでドイツ軍は、ベルナールを中立国のスイス人としてその女に色仕掛けで近付け、レジスタンスを一網打尽にしようと考える。
計画通りベルナールは、レジスタンスの一味に近付き一部を捕らえることに成功するが、誤算は彼もコーラを愛したことだった。
煮え切らないベルナールに変わって、同僚ミュラーはコーラを捕らえて残りのレジスタンスの氏名を白状させようとする。しかし彼女は拷問されても言うつもりはなかった。そんな彼女を見てベルナールは耐えられず、秘かに調査した一味の氏名や所在と交換にコーラの釈放を上司に願い出た。
コーラは突然釈放されることになった。しかし自分と入れ替えに多くの仲間たちが収監されるのを見て絶望を感じる。ふらふらと通りへ出てきたコーラの前で一台のジープが停まる。そして幌が開いてレジスタンスの隊長が容赦なく彼女を射殺するのだった。
雑感
この映画はフランソワーズ・アルヌールの魅力が詰まった作品であり、スレンダー好きにはたまらない。
本来、戦争映画だが、愛のために結果として味方を裏切ることを主題に置き、救いの無いバッドエンドは如何にもフィルム・ノワールだ。
戦前から名監督アンリ・ドコアンの演出は、ヌーヴェルバーグって何?と言いたくなる、古臭いものだが、それも主役を活かすためと考えれば許される。とくに彼女の良さを引き出した脚本は素晴らしい。
ともに芯の強いタイプだったが、芦川いづみが耐える女を演じたならば、フランソワーズは幸薄い女を演ずるのが得意だった。
スタッフ・キャスト
監督 アンリ・ドコアン
原作 ジャック・レミー
脚色 ジャック・レミー 、 アンリ・ドコアン 、 ユージェーヌ・テュシェレエ
撮影 ピエール・モンタゼル
配役
コーラ フランソワーズ・アルヌール
レジスタンスの首領 ベルナール・ブリエ(ジャン・ギャバン「レ・ミゼラブル」のジャベール警部)
ベルナール ベルナール・ヴィッキ
ミュラー大佐 クルト・マイゼル
女猫 La Chatte 1958 フランス映画 フランソワーズ・アルヌールのフィルム・ノワール