息子を誘拐された母親の心の変化を丹念に綴ったアメリカ映画。主演は「針の眼」のケイト・ネリガン
製作・監督は「クレイマー、クレイマー」の製作者スタンリー・R・ジャッフェ、原作はベス・グッチョンの「坊やが帰ってこない」で、自ら脚色している。
 

 

あらすじ

 
コロンビア大学講師であるスーザン・セルキー(ケイト・ネリガン)は、6歳の息子アレックス(ダニエル・コーキル)を朝、学校に送り出した。講義を終えて帰ったスーザンは、アレックスの帰りが遅いので心配してママ友に電話したが、アレックスが何故か学校を欠席したことを知る。やがてメネッティ刑事(ジャド・ハーシュ)が駆けつけ誘拐の線で捜査を開始する。メネッティは、別居中の夫グラハム(デイヴィッド・デュークス)を疑うが、すぐシロと判明する。周辺で見慣れぬ青い車が見られたが、結局解らずじまいだった。
捜査は難航し二ヶ月が過ぎた。スーザンの生活は荒れて、友人はいつの間にかみんな離れていった。
突然事態は進展する。未成年虐待の罪に問われたスーザン宅の家政夫フィリップの部屋を捜索すると、アレックスの血染めのパンツが出てきた。フィリップは再逮捕されたが、どうしてもスーザンはアレックスがまだ生きている気がしてならなかった。

 
フィリップの裁判を間近に控えたある日、コネチカットの婦人から「いつ子供を迎えにくるのか」という催促の電話がかかってきた。スーザンはわけも分からずメネッティを問い質した。フィリップ犯人説を採るメネッティは相手にしなかったが、最近自分の息子と遊んでいないことを思い出し、休日を利用して息子とドライブがてらコネチカット州に向った。婦人の家に着くと、何と隣の家に青い車が止まっている。地元警察の応援を呼んで隣家からアレックスを無事保護した。誘拐したのは、障害者の老姉を持つ弟で、姉の遊び相手としてアレックスを誘拐したのだ。

 

雑感

 
はじめの1時間40分は母親の気持ちの揺れを描いている。その後、刑事の視点に変わり、事態は急転して犯人が逮捕され、息子は母親のもとに帰る。
この作品には原作(フィクション)があるが、当時話題になった児童誘拐事件を基にしている。他の行方不明の子供たちと一緒に牛乳パックに顔写真を印刷したものを、アメリカ全土で販売して探していたのを覚えている。そういう時代の流れの中でこの映画は作られた。被害者の母親はこの映画にも勇気付けられたことだろう。

 
実話もこの映画同様に行けば素晴らしい作品だったのだが、残念ながらそうはならなかった。まずフィリップに当たる人物は、この事件に無関係である事が分かる。
この事件は迷宮入りする。しかし発生以来41年経って2012年、当時近所のコンビニで働いていた犯人が自供によって逮捕された。その日のうちに首を絞めて殺したらしい。遺体は見つかっていないが、2017年に裁判で有罪が確定し25年の刑(仮釈放無し)に服している。
 
映画ではアメリカお得意の超能力(心霊)捜査も行われていた。しかも被害者の家族が刑事から超能力者を紹介されていた。

スタッフ・キャスト

監督 スタンリー・R・ジャッフェ
製作 スタンリー・R・ジャッフェ
原作 ベス・グッチェオン
脚本 ベス・グッチェオン
撮影 ジョン・ベイリー
音楽 ジャック・ニッチェ

 
配役
スーザン          ケイト・ネリガン
刑事アル・メネッティ  ジャド・ハーシュ
夫グラハム     デイヴィッド・デュークス
ジョスリン    ジャクリーン・ブルックス
フィリップ  キース・マクダーモット
ハウザー  キャスリーン・ウィドース
息子アレックス ダニエル・ブライアン・コーキル
 

 

天使の失踪 Without a Trace 1983 20世紀フォックス製作・配給 (国内配給シネセゾン)

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