青春小説の大家だった若山三郎の原作を白坂依志雄、中野顕彰の共同脚本を得て、「ギターを持った渡り鳥」「愛と死を見つめて」の斎藤武一監督が映画化。

主演吉永小百合の「スチュワーデス物語」である。
共演は十朱幸代、和泉雅子、広瀬みさ、浜田光夫

 

あらすじ

 

当時日航の二番手で、国内便と国際チャーター便を運行していた全日空の東京大阪(羽田伊丹)線が舞台。スチュワーデス候補生ゆり子は初のフライトで、工藤教官と同乗して東京大阪定期便(ボーイング727)に初搭乗する。同機には先輩の矢部朝子も搭乗している。最初のアナウンスで早速失敗してしまうが、悪びれないところを立花老人に気に入られる。彼は財閥の長だった。

ゆり子は医者の娘だが、両親の仲は良いとは言えず、母は新興宗教に入れあげ、仕事で忙しい父とはすれ違い生活をしている。母は庭の手入れのために近くの大学の園芸科の学生誠を雇い入れた。何かにつけて序でだと言ってさりげなく花をプレゼントしてくれる誠に彼女は好意を抱く。矢部先輩は何事につけてもチャッカリしていて、たまにしか帰らない自宅を空けておくのは勿体ないと、学生の太郎を管理人にしてパーティー会場として又貸ししている。工藤教官は整備士の関名と付き合っているが、高校生の妹ミチ子が関名に懐いて困っている。ところがミチ子が誠と出会うと、すっかり懐いてしまい、誠の大学の研究室に出入りしてゆり子に焼き餅を焼くようになる。

 

ゆり子は卒業試験で急患を発見すると言うお手柄をあげるが、それが立花の孫だったことから、立花家に食事に呼ばれ、立花の末息子と見合いをすることになる。
立花青年とデートをするが、酔ったふりをしても紳士然とした彼と庶民派の誠を比べると、やはりゆり子が愛しているのは誠だった。
そのことを父に話すと、父は身分の低い誠との結婚は反対だと言う。それに対して、ゆり子は父と母に愛のない結婚は反対だと訴え、二人の離婚届にハンコを押せと子供から親に三行半を迫る。これには両親も参ってしまい、白旗を上げざるを得ない。

 

誠は来日したメキシコの教授から南米系ベゴニアの種を分けてもらい育てているが、なかなか花を付けない。それでもある嵐の夜、花を付けそうになり、ゆり子、ミチ子、矢部が駆けつけ、徹夜で世話をして、ついに花を咲かせる。

いつのまにか一年が過ぎ、ミチ子は高校を卒業して姉の跡を追って全日空にスチュワーデス候補生として入社する。その頃に彼女は副操縦士にご執心のご様子だ。彼女のファーストフライトで、姉と関名は新婚旅行に旅立つのだった。

 

雑感

 

スチュワーデス物語の部分は最初だけで、難なくスチュワーデス正職員になった後は早速見合い話が来てしまい、主人公が二つの恋に悩む典型的「吉永小百合映画」である。昭和37年から5年間も同じようなことを繰り返している。本人も飽きただろうし、23歳と言う大切な時期に様々な演技を学べなかったことは、彼女の演技法に制約になって残っている。

 

妹役の和泉雅子のコメディ・リリーフぶりがいつもながら楽しい。
教官役の広瀬みさは昭和40年以後の日活映画に出ていた。十朱幸代より二つ下で、吉永小百合と同じ歳なのだが、二人よりずっと大人に見えた。フジテレビの15分音楽番組「歌うトップスター」で司会を2年間務め、25歳で寿引退している。

 

今どき庭の日陰に放り出しておくだけで咲いているベゴニアが当時、温室でなければ育たない花だと知ってビックリ。50年前の日本はまだ涼しかったのだ。

全日空ボーイング727を歌った「そこは青い空だった」という吉永小百合・橋幸夫のデュエット曲があるが、これは1964年の歌である。海外旅行自由化の年だが、全日空にとっては727の国内便への導入を始めた記念すべき年だった。3年後のこの映画もその曲を、主題曲として再利用している。

 

スタッフ・キャスト

監督 斎藤武市
原作 若山三郎 (蒼樹社刊)
脚色 白坂依志夫 、 中野顕彰
企画 高木雅行
撮影 萩原憲治
音楽 小杉太一郎
協力 全日空

配役
滝村ゆり子 吉永小百合
矢部朝子 十朱幸代
工藤冴子 広瀬みさ
妹工藤ミチ子 和泉雅子
北倉誠 浜田光夫
関名俊太郎 葉山良二
太郎クン 花ノ本寿
チコ 小橋玲子
町田 小高雄二
父滝村健造 下元勉
母滝村菊子 佐々木すみ江
立花老 清水将夫
副操縦士 川地民夫

大空に乾杯 1966 日活製作・配給 吉永小百合の「スチュワーデス物語」

投稿ナビゲーション