バラエティの常連だった円山雅也弁護士 の原作「悪徳弁護士」を、石松愛弘と増村保造が共同で脚色し、増村保造が監督した。撮影は小林節雄。白黒映画。
主演は田宮二郎、緑魔子。
共演は佐藤慶、北村和夫、内田朝雄。
あらすじ
洋裁学校の生徒芳子は大学生と別れた後、安井と知り合い正体を聞かされぬままバーに誘われた。勧められるままに酒を飲んだが、それは睡眠薬入りカクテルだった。
翌朝、芳子は安井のマンションで目を覚ましたが、すでに処女を奪われ、ヌード写真まで撮られていた。安井の正体は、ヤクザだった。逃げ出した芳子は、安井が写真をチラつかせて追ってくるのから逃れられず、安井のマンションに監禁される。
ある日、安井はアイドル島輝夫に芳子を抱かせ、その痴態を16ミリフィルムで盗み撮りした。そして安井は、島の事務所にネガ代として500万円を要求する。島のマネージャーは驚き、裏社界に通ずる弁護士得田に依頼した。
得田が安井のマンションを訪ねると、安井と情婦扱いされていた芳子に会った。得田は良い子を一目見て玄人でないと気付き、名刺を置いて帰った。芳子は安井の目を盗んで得田の元に相談に来る。得田は、安井の手から逃れるためには殺すしかない、と話す。
その夜芳子は得田の元から安井に連れて帰られるが、酔って眠り込んだ安井の首にネクタイを巻きつけ、締め殺してした。
芳子から電話をもらった得田は、殺人現場に着くと現場の偽装工作を行ない、その上で芳子を自首させた。得田の戦略は、芳子の弁護に立ち、殺人現場に第三者が存在した物的証拠を提出して、芳子を無罪にするものだ・・・。
雑感
円山雅也弁護士は、20世紀のテレビの法律コメンテーターで頻繁にテレビでお目にかかった。他にも「妻は告白する」(1961)が若尾文子主演で大映映画になった。1977年から新自由クラブ公認で参議院議員選挙に当選したが、83年参院選では自民党に転じるが落選する。
芳子(緑魔子)は田舎者だったため、ヤクザに犯されて、売春婦への坂道を真っ逆さまに転落するはずが、得田の機転に救われたのに、チャッカリ丸々500万円を頂くとは、ものすごい変貌ぶりだ。
得田も彼女にお店を出すと良いとアドバイスしていたから、がめつい女がまた一人夜の町に生まれたことを案外感慨深く思っていたのではないか。どうせ得田のことだから、チャッカリ彼女が出す店の顧問弁護士になるだろう。
怪女優緑魔子は、東映入社後1964年に「二匹の牝犬」で初主演すると、「夜の青春」シリーズで一躍スターダムに登るが、ヌードシーンばかり要求する東映の方針に反発し、1967年から条件付き専属契約を結ぶ。これは他社から依頼があれば出演を認めるものだ。すると、この作品も含めてテレビ・映画各社からオファーが多数来て、かえって売れっ子になってしまった。フリーになった1969年からは劇団黒テントに出演し、1976年から夫になる石橋蓮司と劇団第七病棟を設立して、テレビから遠ざかった。
スタッフ
企画 関幸輔
原作 円山雅也
脚色 石松愛弘
監督、脚色 増村保造
撮影 小林節雄
音楽 山内正
キャスト
弁護士得田仁平 田宮二郎
ヤクザ安井一郎 佐藤慶
洋裁学校生徒太田芳子 緑魔子(東映)
アイドル島輝夫 倉石功
島のマネージャー 内田朝雄
岡野検事 北村和夫
マスクの男 早川雄三
元彼の大学生 森矢雄二
裁判長 伊東光一
バーテン 三夏伸
管理人 谷謙一
監識主任 中条静夫
***
裁判で得田の鮮やかな弁論は、検察側に第三者の存在を否定する責任を押し付ける。結局疑わしきは罰せずで、裁判官は芳子の無罪を宣告する。
芳子が釈放されると、島のマネージャーは得田の報酬を払い渋る。しかし、得田は警察より先に16mmフィルムを手に入れていた。結局島のマネージャーは、当初の約束通り500万円払った。得田は、この金のために危ない橋を渡ったのだ。
しかし、芳子もひどい目に遭ってきて、親からも離縁され、もはや一端のすれっからしになっていた。彼女は得田に偽装工作を警察に密告すると脅した。彼女自身は一事不再理だから殺人罪で捕まる心配がないからだ。全額を手にすると唖然とした得田を残して、出ていく。得田は男だったら復讐するのだが、芳子にはそのような気持ちは起きなかった。まるで彼女の将来を祝福したいような気持ちだった。