アカデミー主演女優賞(ルイーゼ・ライナー)と撮影賞(カール・フロイント)受賞。
原作は満州事変が起きた1931年にパール・バックが出版した「大地」(第一部)であるが、1932年に英国で舞台化されており、オーウェン・デイヴィスとドナルド・デイヴィスによる戯曲を元にして、改めてハリウッド映画用にタルボット・ジェニングスらが脚色している。監督はシドニー・A・フランクリン、主演はポール・ムニとルイーゼ・ライナー。
反日世論用に作られた部分もある。
あらすじ
王龍は中国北部の貧しい農夫である。彼は、奴隷身分の阿蘭を妻として迎える。阿蘭は無口で従順な、良く働く妻だった。夫婦はコツコツ働き、土地を買い増して行った。阿蘭は長男、次男、長女と生んだが、長女は聾唖だった。
しかし干ばつによって村から逃れ、王龍の一家は南の都市部へ移った。彼らは乞食に身を落としたが、この土地が革命の波に襲われた。そして阿蘭は荒れ果てた豪族の屋敷で宝石の入った袋を拾った。追っ手を逃れて一家は再び故郷に帰り、宝石を元手にして大地主に成り上がる。
急に金持ちになった王龍は、酒と女にうつつを抜かした。踊り子蓮英が王龍の第二夫人に迎えられたが、息子と浮気をしていた。
ある日バッタの大群が襲った。このままでは作物はやられてしまう。阿蘭に悪夢が蘇る。阿蘭の実家も土地を持っていたが、蝗害にやられドレイとして身を売ったのだ。今度ばかりは王龍は息子たちに助けられ、小作人と協力してバッタの攻撃に耐えた。そのうちに風向きが変わってバッタは逸れていった。
やがて次男が結婚する日、王龍に見とられた阿蘭は、穏やかな表情になり息を引きとる。
雑感
ルイーゼ・ライナーが演ずる阿蘭を醜女というのは無理がある。
パール・バックの小説「大地」は第三部まであるが、やはり「おしん」のように女の一代記になっている第一部が一番良い。
ただ、この作品がアカデミー主演女優賞を取るほどのものかどうかについては疑問が残る。この年ぐらいは、「椿姫」のグレタ・ガルボで良かったのではないか。母国スウェーデンが中立国になったことで、アカデミーのユダヤ人の反感を持たれたかも知れない。
スタッフ・キャスト
監督 シドニー・A・フランクリン
製作 アーヴィン・タルバーグ(死後に公開される)、アルバート・リュイン
原作 パール・バック (1938年ノーベル文学賞受賞)
戯曲 オーウェン・デイヴィス 、 ドナルド・デイヴィス
脚色 タルボット・ジェニングス 、 テス・スレシンガー 、 クローディン・ウェスト
撮影 カール・フロイント (アカデミー撮影賞受賞)
配役
王龍 ポール・ムニ
阿蘭 ルイゼ・ライナー (この作品により二年連続でアカデミー主演女優賞受賞)
叔父 ウォルター・コノリー
蓮華 ティリー・ロッシュ
老父 チャーリー・グレイプウィン
老夫人 ジェシー・ラルフ
叔母 ソー・ヨング
長男 ケイ・ルーク
次男 ローランド・ルイ
長女 スザンナ・キム
チン チン・ワー・リー
従兄弟 ハロルド・ヒューバー