2017年のアカデミー作品賞を受賞したクリーチャー映画「シェイプ・オブ・ザ・ウォーター」は、半魚人ギルマンが1950年代のユニバーサル映画に登場しなれば、存在することはなかった。
「大アマゾンの半魚人」は1950年代SFモンスター映画の中でも人間と自然の対立を描いた、素晴らしい作品だ。本来メガネを掛ける3D映画としてユニバーサルは売り出したかったようだが、2D映画としても傑作であることは変わらない。
監督はSF映画の巨匠ジャック・アーノルド、製作はウィリアム・アランド。主演はSF映画の常連リチャード・カールソン、化粧が濃すぎるジュリー・アダムズ。
あらすじ
カール博士がアマゾンの奥地で半魚人の化石を発見してマークやデビッドのいる研究所に持ち込んだ。研究員は興奮して、急遽探検隊を結成し化石が発見された土地を訪れる。探検隊が調査に出ている間に現地人の強力たちが人間と思われない力で殺されてしまう。探検隊はさらに帰ってきたものがいないと言われる、奥地の潟湖(ラグーン)に行って、この謎を解こうとする。
危険と言われているラグーンでは能天気な女性隊員ケイが気持ちよさそうに水泳をしている。それを生きている半魚人が水中から見て一目惚れをする。ところが網にかかってしまい危ういところを逃げ出した。その後も半魚人はたびたび彼らの前に姿を現す。
マークは神経毒をラグーンに投入して、半魚人を殺そうとする。デビッドは生け捕りにすべきと主張するが、マークは聞かない。二人が毒を撒いたため、数え切れない魚が湖面に浮いたのを見てケイはタバコの吸いさしを湖面に捨てる。その様子を見ていた半魚人が、人間は潟湖に住んでいる生物に害になると気づき、次々と隊員たちを殺していく。さらにラグーンの入り口に枯れ木を集めて堰き止め、外に出られないようにしてしまう。
こうなった以上、人間は半魚人と対決せざるを得なくなる。マークとデビッドが潜り、水中銃で戦うが、マークは水中で半魚人に倒され絶命する。さらにケイを拐って、陸の洞窟に連れて行く。デビッドはナイフで戦いを挑み刺したところへカールと船長がライフルで射撃する。さすがの半魚人もフラついてラグーンに沈んでいく。
雑感
考えさせられる映画で、アカデミー作品賞映画「シェイプ・オブ・ザ・ウォーター」に繋がる内容だった。人間対半魚人を人間対自然と捉えて、人間が自然破壊をしていることを告発している。またケイが水面で泳ぎ、半魚人が水中で泳ぐ姿は、一種のラブシーンだった。それほど見事に水の上と水の中で演技を合わせていた。スーツ・アクターの一人リクー・ブラウニングの名演だった。
マークが電気棒で半魚人を殴るシーンは、「シェイプ・オブ・ザ・ウォーター」でも見たシーンだった。そして殴った人間は、どちらの映画でも半魚人に殺されていた。
大ヒットを受けて1955年の続編映画「半魚人の逆襲」では、この続きが描かれ半魚人は人間に捕われ、研究所に連れて行かれ、一般公開されるが・・・。
スタッフ・キャスト
監督 ジャック・アーノルド
製作 ウィリアム・アランド
原案 モーリス・ジム
脚本 ハリー・エセックス、アーサー・ロス
撮影 ウィリアム・スナイダー
水中撮影 チャールズ・ウェルボーン
音楽 ヘンリー・マンシーニ(ロマンチック)、ハンス・サルター(汎用)、ハーマン・スタイン(ホラー)
半魚人メイク バド・ウェストモア(美人だったので宣伝に一役買った)
配役
デビット・リード博士 リチャード・カールソン
ケイ・ローレンス ジュリー・アダムス
マーク・ウィリアムズ博士 リチャード・デニング
カール・マイヤ博士 アントニオ・モレノ
ルーカス船長 ネスタ・パイヴァ
半魚人ギルマン ベン・チャプマン(地上)、リクー・ブラウニング(水中)