「君たちがいて僕がいた」に続く東映青春映画は、戦前にハワイへ渡った祖父のために、ワイキキで盆踊りを開催しようと尽力する青年の物語だ。
戦後、日本人は、外貨持ち出し制限、出国資格制限があり、海外観光旅行を自由にできなかった。オリンピック・イヤーの1964年4月から、ようやく海外旅行が自由化された。
戦後初めて青春映画の海外ロケを行ったのは、この作品の本間千代子と舟木一夫らだった。
あらすじ
ハワイから剛造(笠智衆)とマリ(高見理沙)が日本旅行にやって来る。東京ヒルトンの前で雲助タクシーにたかられそうになっていて困っているところを夏夫(舟木一夫)が救う。剛造は夏夫の身の上を聞き、心当たりがあった。戦前、息子が静江という日本人の女性を好きになり、日本に駆け落ちしてしまったが、戦死してしまった。夏夫は息子の忘れ形見だったのだ。
剛造は、夏夫に内緒で静江を訪ねるが、お互いに相手に近寄れず喧嘩別れしてしまう。それを聞いた夏夫は自分がハワイへ行き、母と祖父を仲直りさせようと決心する。
アルバイト漬けになる夏夫だが、何かと美代子(本間千代子)が邪魔をしてくる。どうやら美代子は、夏夫のことが好きらしい。ある日、バイト先のヒルトンの支配人から、書類を剛造に渡しにハワイへ出張するように頼まれる。実は美代子が支配人をする父に頼んだのだ。
夏夫はハワイに行って美代子の魂胆に気付くが、祖父の嬉しそうな顔を見ると、何も言えない。祖父に母と仲良くしてくれるように頼むと、夏夫が一人前の仕事をすれば考えると答える。
夏夫は剛造が故郷の盆踊りを懐かしんでいたのを思い出して、ワイキキで盆踊りを開催しようと考える。そこへ美代子や高木(高橋元太郎)、松井(堺正章)ら友達たちも合流してくる。みんなは協力して、盆踊りイベントを成功させる。しかし剛造は顔を見せない。美代子は車を走らせ、剛三を迎えに行く。
雑感
舟木一夫の母役に加藤治子が出演しているが、その後の母役と違ってまだ色っぽかった。こういう時代もあったのだなw。
本間千代子は車を乗り回すシーンがある。当時こういうシーンは動く背景を付けてスタジオ録りしたのだが、彼女は運転に自信があるのか、スタント無しの路上撮影だ。歌のシーンも一曲ある。残念ながらソロのシーンではなく、運転シーンのBGMとしてだ。他の会社専属のの歌手が大勢出演しているので、遠慮したかな。
高橋元太郎はスリーファンキーズを脱退し、ソロ活動をしていた頃。のど自慢シーンで彼も一曲歌っている。翌年、NHKのうたのお兄さんに就任。その後、役者へ転向し、「水戸黄門」ウッカリ八兵衛として活躍する。
コロンビア・ローズが最も多い二曲聞かせる。一曲は当時大ヒットしてレコード大賞を競い、紅白歌合戦にも選ばれた「智恵子抄」、もう一曲は「佐渡おけさ」。彼女の全盛期だった。これで海外生活に慣れたのか、今はロスにいるそうだ。
ラストシーンで舟木、本間、高橋、コロムビアが主題歌を合唱していたが、そこに堺正章ははいっていない。まだ、映画界では堺は俳優という扱いだったのだろう。
マリ役の高見理沙は高見エミリーの姉。エミリーは鳩山邦夫に嫁いだが、理沙はブリジストンの監査役石橋寛に嫁いだ。実は鳩山邦夫と石橋寛は従兄弟同志だ。
かつて映画版で月光仮面を演じた大村文武が、踊りのお師匠さんで登場。どうやらオネエ役らしいが、全く似合ってなかった。
スタッフ・キャスト
監督 鷹森立一
製作 大川博
脚本 長谷川公之 、 山本英明
撮影 山沢義一
音楽 船村徹
主題歌 「夢のハワイで盆踊り」唄:舟木一夫
協力:パンアメリカン航空
舟田夏夫 舟木一夫
風間美代子 本間千代子
高木源一郎 高橋元太郎
松井正也 堺正章
夏の母、静江 加藤治子
夏夫の祖父・剛造 笠智衆
マリ・スミス 高見理紗
コロムビア・ローズ コロムビア・ローズ
美代子の父 北龍二
美代子の母 風見章子
寿司屋、松井の父 桂伸治 (のちの落語家桂文治)
立花宏 大村文武
司会者 ロイ・ジェームス