イタリア建国の歴史は、ナポレオン戦争(1796年イタリア遠征)以後、ウィーン体制(1814)、二月革命(ウィーン体制崩壊)(1848)、第一次イタリア独立戦争の敗戦(1849)、そしてサルディニア王国による第二次イタリア独立戦争の開戦(1859)と続く。
オーストリア帝国の衛星国家だったロンバルディア・ヴェネト王国には大都市ミラノ、ヴェローナ、ヴェネチアがあったが、第二次独立戦争が始まり、サルディニア=フランス連合軍にロンバルディア(ミラノ)を奪われてしまう。
その後1866年、イタリア独立軍は、ヴェネトに侵入しオーストリア帝国と衝突が起きる。その戦いに翻弄された男女の運命を映画は描いている。
監督はルキノ・ヴィスコンティで、初のカラー映画である。台詞にはテネシー・ウィリアムズが加わっている。音楽はアントン・ブルックナーの交響曲第七番を上手く使っている。
主演はアリダ・ヴァリ(第三の男)、ファーリー・グレンジャー(ロープ、見知らぬ乗客)。
ちなみに原題「Senso」は「官能」という意味である。
あらすじ
1866年5月オーストリア占領下のヴェニチア、フェニーチェ劇場でオペラが上演されていたが、ビラが急に播かれた。さらにオーストリア軍将校フランツ・マラー(ファリー・グレンジャー)中尉とイタリア独立軍に属するロベルト・ウッソーニが喧嘩を始め、決闘騒ぎに至る。リヴィア・セルピエーリ(アリダ・ヴァリ)伯爵夫人は従兄弟であるロベルトを助けるためにフランツに近づき、親しくなる。ロベルトはオーストリア軍に逮捕されたが、リヴィアの恋心は誰にも抑えられなくなった。
再び戦争が激化し、伯爵一家はアルデノの別荘に移る。リヴィアはロベルトと再会し、ロベルトは彼女に軍資金を託す。別の夜彼女のもとに人恋しくなったフランツが現れた。敗色濃厚で厭戦気分だったフランツは、医者に金品を渡して証明書を書いてもらえば傷病兵扱いになり戦わずに済むと話した。それを聞いた彼女は軍資金を丸ごと渡してしまう。
イタリア独立軍とオーストリアの戦闘は大方の予想に反して、オーストリアが完勝し、ロベルトは重傷を負う。リヴィアは家庭を捨ててアルデノから、ヴェローナ駐屯地のフランツに会いに行く。しかし負けると思ってずる休みしていたのに、自軍がまさかの勝利を挙げて心が荒んでいたフランツは、娼婦を呼んで酔っ払っており、彼女を侮辱してしまった。リヴィアはオーストリア軍司令官に面会して、全ての真実を語る。同夜フランツは逮捕され、銃殺刑に処された。
雑感
ヴィスコンティの長編映画は初めて公開されたため、これほどの名作が公開当時は日本の評論家に全く評価されなかった。
オペラのようなドロドロした男女関係を、ブルックナーの交響曲で描くとは大した物だ。話すオペラのように聞こえる。
伯爵夫人はすっかりその気になってしまったわけだ。平時なら、こういう出会いもなかったのだが、戦時だったため、女も官能に燃えてしまった。
スタッフ・キャスト
監督 ルキノ・ヴィスコンティ
原作 カミロ・ボイト
脚本 ルキノ・ヴィスコンティ 、 スーゾ・チェッキ・ダミーコ
脚色 スーゾ・チェッキ・ダミーコ 、 ルキノ・ヴィスコンティ 、 カルロ・アリアネロ 、 ジョルジョ・パサニ 、 ジョルジョ・プロスペリ
台詞 テネシー・ウィリアムズ 、 ポール・ボウルズ
撮影 G・R・アルド 、 ロバート・クラスカー
音楽 アントン・ブルックナー 交響曲第七番
配役
リヴィア(伯爵夫人) アリダ・ヴァリ
マーラー中尉 ファーリー・グレンジャー
ロベルト・ウッソーニ マッシモ・ジロッティ
セルビエリ伯爵 ハインツ・モーグ
メイドのローラ リナ・モレリ
フランツの愛人 マルチェラ・マリアニ