「イカス美人とよろめき車掌が東京ー鹿児島笑いの道中五000キロ泣いたり笑ったり怒ったり!人生を乗せてシュッポッポ!寝台列車は今日も行く!!」

意味のわからない文章だが、東映宣伝部の作文かな。当時の社長も監督も東大を卒業したのに、出来の悪い文だ。要するに車掌が人妻によろめくが、やがて古女房を見直すお話。

監督は瀬川昌治、脚本は舟橋和郎に音楽が木下忠司で完璧なスタッフだ。
主演は渥美清、共演が佐久間良子楠トシエ、鈴木ヤスシ、大原麗子。他にお笑い界から多数出演。

あらすじ

東京駅車掌区から青木専務車掌と見習い古川、ウェイトレス遠藤が長崎行き寝台特急さくらに乗車する。青木は岩手県出身の叩き上げで専務車掌にまで出世した。
乗客は水商売風の明美と銀子らに挟まれて老けた学生風の男、岩手訛りのある老人、新婚カップルの雰囲気を邪魔する喧しい男がいた。いよいよ東京駅を出発する。まず横浜に停車するが、そこで美しい毬子が乗車してくる。
これから車掌が食事を取ろうとすると、老人が車掌室にやって来る。老人は気仙沼線で機関士をしていたそうで、寝台列車に乗るのは初めてということで中を見たいと言う。同郷人の訪問に青木は快く応諾し、列車内を案内する。案内を終え、食事にありつきながら岩手の陸前橋上駅員時代を思い出す。その後は今はSUICAのおかげで無くなった検札だ。

 

すると毬子が乗車しているのに気付く。思わず青木は血圧が高くなってしまう。その昔、青木が横須賀線に転勤になり、社内検札をしていたとき女学生だった毬子と出会ったのが最初である。当時の青木は淡い恋心を抱いていたが、大学卒業後彼女はある男性と結婚してしまったのだ。そのときの気持ちが独り言になってスラスラ出て来るが、車掌室のマイクが入ったままだったのでそのまま放送されてしまった。おかげで乗客は大爆笑、毬子は顔から火が出る想いをする。
夜になって寝台をセットするが、毬子が車掌室にやって来て余所余所しい態度で、電報を打ってくれと言う。その電報は夫に宛てた離縁状のようなものだった。就寝時間になったので見回りすると、例の明美と銀子らが酒を飲んで騒いでいるので、注意する。担当の古川はウェイトレス遠藤といちゃついていたので、これも注意した。

朝になり徳山駅に到着する。すると例の明美が寝台から落ちて床で寝ている。起こすとブラジャーがないと叫び出す。調べると金銭も盗まれている。プロの詐欺の犯行だ。そのとき、毬子が目配せをする。通路に呼び出されると毬子は犯人を見たという。そこで青木は車両を回って首実検してもらうことにした。その結果一号車のゴルフ旅行客が犯人らしい。門司駅で鉄道公安官が乗り込んでゴルフ客に尋ねるが、証拠はあるのかと居直られる。青木が隣のマダムを見ると犬の籠を持ったままトイレに立った。怪しく思い声を掛けると、犬の籠からネックレス類が出てきた。二人はグルだったのだ。

やがて博多を通って終着駅長崎に着く。車掌たちも自由時間となり青木が平和記念公園を歩いていると毬子と出会い、町を案内する。長崎ちゃんぽん屋で二人でチャンポンを食べていると、スリを未然に防げなかったため謹慎を申し付けた古川と遠藤がやって来る。青木は気不味いので、古河たちのチャンポン代を払って出て来た。二人で歩きながら何とか毬子に夫と寄りを戻させようと、熱弁を振るう。昔のような青木の迫力に、毬子も学生時代を思い出し元気が戻って来た。
その夜、青木は毬子との熱い一夜を夢に見る。

 

三日後東京に戻ると、古びた女房きぬ子と息子の特急、娘さくら、つばめ、ふじの待つ自宅に帰る。次に乗る出発日に毬子の礼状をきぬ子に見つけられ、青木は慌てて長崎で世話した婆さんだと嘘を吐く。
青木が今日搭乗するのは、毬子が暮らす鹿児島行きの寝台特急富士だ。彼は浮き浮きしながら東京駅に急ぐが、きぬ子も怪しいと思い客として特急富士に乗り込む。
列車には心臓の悪い鉄オタ幼年も乗っていた。母親によると別府の病院で叔父が専門医をしているので、手術を受けいくそうだ。名古屋を過ぎたとき、青木は見回ると少年が起きていた。心臓病のことで悩みを告白する少年に対して青木は機関車の砂パイプが壊れたときの経験談を話し人間の心臓は機関車のエンジンより頑丈だからと安心して眠らせた。翌朝青木と古川は列車内部や機関室を少年に見せてやり心臓と鉄道の仕組みが似ていることを分からせる。一連の青木と少年のやりとりを聞いていた古川は車掌の仕事に生きがいを見出し。きぬ子も夫の別人のような仕事ぶりを初めて間近で見て、驚くのだった。

延岡駅を前にして突然、乗客の一人が産気づく。青木はきぬ子がサンバの免許を持っていたことを思い出す。きぬ子はテキパキと乗員やウェイトレスを差配して、無事男を出産させる。青木はきぬ子の偉大さを再認識する。

鹿児島駅に着くと毬子が待っていた。青木はきぬ子に婆さんだと言っていた毬子が絶世の美女だったもので決まりが悪い。毬子は夫が鹿児島まで迎えに来たので東京に戻ることにした。青木に礼を言って東京行きの列車に飛び乗る。

桜島を一緒に眺めるのは毬子でなく古女房のきぬ子だった。そこへ古川と遠藤がやって来て、結婚の報告をする。古川は青木を見習って車掌試験を受けるそうだ。

雑感

本当にこの渥美清は面白い。前半の「七年目の浮気」をパクったような艶笑劇と後半の人情劇が実に良い塩梅でミックスされている。さすが瀬川昌治監督だ。
山田洋次監督の渥美清は若干湿っぽいし、晩年の寅さんは達観しすぎた所があった。

佐久間良子大原麗子も綺麗だった。
脇役も上手に使い分けている。
今の若い人間から見るとやや説教臭いかもしれないが、我々の時代での傑作コメディだと思う。

スタッフ

製作 大川博
企画 秋田亨 、 加茂秀男
脚本 舟橋和郎
監督 瀬川昌治
撮影 飯村雅彦
音楽 木下忠司
協力 日本国有鉄道
主題歌 渥美清

キャスト

青木吾一専務車掌 渥美清
塚田毬子 佐久間良子
青木の妻きぬ子 楠トシエ
部下古川 鈴木ヤスシ
ウェイトレス遠藤 大原麗子
同僚岡島 関敬六
老機関士 西村晃
老けた学生今井 小沢昭一
かつての駅長 左卜全
新婚の隣客 宮城けんじ(Wけんじの眼鏡無し)
新郎 東けんじ(Wけんじの眼鏡あり)
新婦 田沼瑠美子
乗客あけみ 根岸明美
乗客銀子 桜京美
スリ 三遊亭歌奴(三代目三遊亭円歌)
スリの情婦 三原葉子
毬子の夫真太郎  江原真二郎
若い妊婦 桑原幸子
坊や 石崎吉嗣
坊やの父親 村上不二夫
坊やの母親 川尻則子
犬塚公安調査官 岡崎二朗

喜劇 急行列車 1967 東映製作・配給 渥美清の喜劇列車シリーズ第一弾

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