「吸血鬼ゴケミドロ」に続く松竹怪奇特撮シリーズ第2弾だが、既にカラー映画が隆盛を極めていたのに、モノクロで撮影されている。モノクロのフィルムの在庫がダブついたのだろうか。

内容は、「宇宙大怪獣ギララ」や「ゴケミドロ」のSF要素が全く無く、かつての新東宝も吃驚の漂流船怪談を作っている。従って1950年代日活に出演していた悪役俳優陣(金子信雄、小池朝雄、内田朝雄、岡田眞澄、西村晃)を揃って起用している。大松竹らしさは皆無だった。

さらに脚本を担当した小林久三によれば、船のオーナーがクレームを入れたので、使えるシーンが少なくなり、悲惨な結果となったそうだ。

 

Synopsis:

神父の助手をしていた冴子は恋人の望月と海で潜っていると、互いに鎖で繋がれた骸骨を発見する。さらに冴子は沖で漂流船龍王丸をも発見する。その船は三年前に冴子の一卵性双生児の姉、依子船医西里と新婚旅行で乗った船であり、その最中に金塊とともに行方不明になっていた。船室に入ると航海日誌があり、金塊が一部の船員の反乱で強奪されたことが書いてあった。
その日から冴子は姿を消す。彼女は五人の犯人に一人ずつ復讐して行くつもりだった。まずアル中の江尻、潜水夫の小野、木っ端役人をしているを順に殺していく。
しかし望月神父に見つけられ、冴子はひとまず教会に連れ戻される。告解室で事件の真相を神父に語ると、その夜急に神父に首を絞められ失神させられる。実は神父こそ真犯人田沼の変身した姿だった。
田沼と残る共犯者末次は沖合の龍王丸にモーターボートで乗り付け、分かれて探索を始める。そして末次は船医室でとんでもないものを発見する。殺したはずの西里船医が頰もこけた恐ろしい形相で立っていたのだ。西里は依子と新婚旅行の最中にともに撃たれたのだが、西里は生き返り、ミイラとなった依子も生きかえらそうとして、自分の血を輸血し続けていたのだ。(西里自身は3年間も呑気に魚を釣って生き延びてきたのだろうか) 末次は鉄をも溶かす濃硫酸で殺される。それを見た田沼は部屋の外へ逃げ出す。西里は追いかけるが、足がもつれて階段を踏み外し最下部まで落下して死ぬ。しかし田沼を外で冴子が待ち受けており、濃硫酸の中に突き落として殺してしまう。
最後に望月がモーターボートで追って来るが、冴子に海に突き落とされてしまう。望月は命からがらモーターボートに捕まるが、濃硫酸に侵食された龍王丸と冴子は海の藻屑と消えるのだった。

 

Impression:

入川保則以外、登場人物が全員死亡で「おしまい」である。復讐と古いイギリスの漂流船怪談を合わせただけの作品だった。
船のオーナーがケチをつけたから、修正版はひどい出来になったというが、オーナーは仮完成版を見て判断したのだから、演出も美術も十分にひどかったのだと思う。それが証拠に、海中に並んだ骸骨がオモチャにしか見えなかった。人体模型ぐらい借りて欲しかった。
ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作「武士道残酷物語」「007は二度死ぬ」など日英の大作に出演した松岡きっこだから、ここではチラリと片乳をさらすお楽しみシーンがある。乙女の柔肌を思い切ったシーンのはずが、作品自身が話題にすらならず、可哀想だった。間もなく彼女は映画から身を引いて、テレビタレント専業となる。
なおダイビングシーンの吹き替えは、竜宮城水中バレエ団となっているが近藤玲子水中バレエ団である。竜宮城というのは、よみうりランドにあった水中バレエ団劇場のことだ。

Staff/Cast:

監督 松野宏軌
製作 猪股尭
脚本 下飯坂菊馬 、 小林久三
撮影 加藤正幸
音楽 西山登
美術 森田郷平

 

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出演
松岡きっこ 冴子 、依子の二役
入川保則 望月
西村晃 西里
岡田眞澄 明石
金子信雄 末次
小池朝雄 辻
内田朝雄 江尻
山本紀行 小野
谷口香 まゆみ

 

吸血髑髏船 1968 松竹 「吸いついて離れないミイラの手!海底にゆらぐ亡霊の行列!」

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