名犬ラッシー・シリーズの第三弾だ(前作の第二弾は「ラッシーの息子」という題名だった)。
コリー犬ビルは、二度の銃撃と一度の交通事故でも生きていたが、精神を病んでいた。そのとき、元の持ち主ケイシーは・・・。
今回ラッシーという役の犬は出てこない。その代わりラッシーに主人公を演じさせた。ところが、ラッシーは第一話の主役の名前であって、犬の本名はパルだった。
主演はパルと若き日のエリザベス・テイラー。
共演はフランク・モーガン。
監督はフレッド・ウィルコックス。
あらすじ
舞台はアメリカ西海岸。コリーの子犬は好奇心旺盛のために母親からはぐれて、森の中で他の動物や鳥と友だちになり、成長する。急流に流されて見知らぬ土地で若いハンターに撃たれた後、子犬はケイシーに彼女の家まで運ばれた。親切な羊飼いのマクベイン氏とケイシーのおかげで彼は助かる。ケイシーは、彼をビルと名付け、牧羊犬に育てる。
ある日、羊を追っていたビルはトラックと衝突し、運転手が慌てて動物病院に担ぎ込む。ケイシーは命がけでビルを探し回るが、一向に行方が知れなかった。
ビルは病院で2か月保護されて、すっかり健康を取り戻していた。治療費用の請求先がわからないので、軍用犬訓練所に送られ、そこで「デューク」と呼ばれるようになった。
訓練後、デュークはスミティー軍曹と共にアリューシャン列島に送られる。1943年の日本軍との戦闘でデュークは伝令犬として働き、銃で撃たれるが殊勲をあげて表彰される。その一方、激戦をかいくぐってきたためPTSDを患い、スミティー軍曹まで威嚇するようになる。治療のためシアトルの軍用犬訓練所に送り返されるが、列車からデュークは逃げ出す・・・。
雑感
再会ものだった第一話と違い、第二話と第三話は戦争映画になっている。第二話は対ドイツ戦での軍用犬ラディー(成犬後はラッシー同様にパルが演じている)の活躍を描いていて、ナチス・ドイツ降伏直前の4月20日に封切られている(ナチスの降伏は4月30日)。
終戦の翌年に公開された第三話は、対日本戦を描いている。ショッキングだったことは、せっかく大活躍で軍功を挙げた主人公ビル(やはりパルが演ずる)がPTSDになってしまい、殺処分されるかもしれないことだ。初めて見たチビっ子は、ショックで泣いてしまうかもしれない。
個人的には、見た目は動物虐待映画なのだが、実際に犬が怒って逃げ出したわけでないので、これはパルの名演技だと思う。
これほどの犬の努力にかかっては、アッツ島を米軍に取られても仕方がない。
軍での犬の世話役としてトム・ドレイクが出番が少ないのに出演している。
スタッフ
監督 フレッド・M・ウィルコックス
製作 ロバート・シスク
脚本 ライオネル・ハウザー
音楽 スコット・ブラッドリー、ブロニスラウ・ケイパー
撮影 レオナルド・スミス
キャスト
ビル パル(クレジット名ラッシー)
キャサリン エリザベス・テイラー
羊飼い フランク・モーガン
ペイソン判事 ハリー・ダベンポート
母親 セリナ・ロイル
スミティー軍曹 トム・ドレイク
最初のビルの持ち主 ジョージ・クリーブランド
***
野良同然の状態に戻ったデューク(ビル)は家畜を食い殺し、攻撃する人々を威嚇した。しかし、ケイシーに発見され、彼女やマクベインの元に帰ることができて、次第に我に帰り、落ち着きを取り戻す。。
損害を受けた隣人たちはビルの処分を求めて、公聴会が開かれる。マクベイン氏が被告ビル側の証人を務める。彼はビルの耳に彫られた入れ墨を示し、軍用犬であることを示す認識番号だと言う。調査すると、ビルが戦争の英雄であることが明らかになった。戦場で仕えた犬は人間同様に復員後、普通の生活に慣れるのに時間がかかるのだ。ペイソン判事はビルの処分なしを決定し、隣人たちも納得する。ビルは解放され、喜び勇んでケイシーの元に戻る。