タイトルは「やばいことなら・・・」と読む。
都筑道夫原作小説「紙の罠」より池田一朗と山崎忠昭が共同脚色し、中平康が監督したクライム・コメディー。
主演は宍戸錠、共演は長門裕之、浅丘ルリ子、草薙幸次郎。
あらすじ
紙幣を印刷するための用紙10億8000万円分が運搬中に強盗によって奪われ、運転手二人が殺された。それを聞いた近藤錠治(ガラスのジョー」、沖田哲三(計算機の哲)、芹沢健(ブル健)は、それぞれ用紙を盗んだ犯人に贋幣の名手坂本を紹介して手数料を取ることを思い付く。しかし坂本は香港から戻ったところを誘拐されてしまった。
実は、横浜のキャバレー「アカプルコ」のオーナー土方が、強盗団の首領だった。坂本は「贋幣は芸術」がモットーなので気が乗らなければ贋札作りをしないと言う。土方は、坂本の要望を汲んでキャバレーのショーが下から覗ける地下室を用意する。
ジョーは、拳銃商人の政から情報を得て探り出した事務所に乗り込む。しかし秋山とも子という美女が留守番をしているだけだった。
ジョーは、とも子とキャバレー「アカプルコ」の玄関に出入りする人間を外から眺めていた。そこにブル健が紺野を脅してダンプに乗ってやって来る。彼が入店した隙にダンプを乗っ取ったとも子が、キャバレーの玄関に突っ込む。
お客とヤクザがパニックになるのに紛れて、ジョーが坂本を連れ出すが、漁夫の利を得た計算機の哲が、坂本を連れて行った。哲は、警視庁で人質坂本と身代金の交換を土方に約束したが、当日になってジョーが邪魔をして失敗する。一方、お札の印刷用紙はワゴン車に保管されていたが、とも子がこれを積んだまま逃げ出した・・・。
雑感
当時、浅丘ルリ子は22歳で最も美しかった時期である。彼女が慣れないアクションにも挑戦しているアクション・コメディ映画だ。
形式上の主役はガンマニアの宍戸錠で、長門裕之が計算担当、劇団民藝出身の草薙幸二郎が珍しく腕力担当、浅丘ルリ子はルパン三世で言う峰不二子の役どころだ。
彼らが、浜田寅彦扮するギャングのボス相手に一歩も引かず、贋札師と印刷用和紙を奪い合う。
物騒な話にも関わらず、お洒落な台詞回しが、都会派の中平康監督の腕の見せ所だ。
中でも左卜全(当時68歳)扮する贋札作りの名人と武智豊子(当時54歳)扮する恐妻が、殺伐とした雰囲気に癒しをもたらしている。
55歳定年制の時代だったから、武智豊子は老け込むにまだ早かったが、彼女はこういう芸風の喜劇人だったから違和感はなかった。(60歳定年制が義務付けられたのは、1994年から)西部劇のガンスピンを見せるシーンで、武智豊子が成功させた後、照れた素の顔を見せたことを忘れはしない。
ちなみに左卜全は戦前浅草のオペラ歌手だった。戦後は脱疽を患って、杖を手放せなくなったが、それが功を奏して老け役が多くなり、黒沢映画の名脇役になった。
宍戸錠の愛車は、運転席と後部席しかなくて余りロマンティックでない、赤いツーシーター・カー。1955年から1964年まで製造されていた西独メッサーシュミット社のKR200だ。今でも修理され続けて走っている。
スタッフ
企画 久保圭之介
原作 都筑道夫「紙の罠」
脚色 池田一朗、山崎忠昭
監督 中平康
撮影 姫田真佐久
音楽 伊部晴美
主題歌 三宅光子「危いことなら銭になる」
舞踊 日活ファミリークラブ・ダンシング・チーム
キャスト
近藤錠次 宍戸錠
沖田哲三 長門裕之
秋山とも子 浅丘ルリ子
芹沢健 草薙幸二郎
坂本 左卜全
坂本の妻 武智豊子
土方 浜田寅彦
ボーカーフェースの秀 平田大三郎
ビッグの修 郷英治
紺野 野呂圭介
拳銃商人の政 井上昭文
ネタばれ
その頃ジョーは哲、ブル健と共に坂本家を訪ねると、土方一派も現れて捕まってしまう。そこへ印刷用紙盗難の知らせが入る。土方はジョーを唆して、事務所にとも子に用紙を持って来させる。
そこで一旦ジョーら四人は土方に捕まるが、隙をついて壮絶な銃撃戦のはて、敵を全滅させる。
贋札は坂本夫妻が印刷していた。坂本は自分のサインを透かしに施していたため、ジョーたちは本物の札27万円を合わせて計画通り香港人の王と会い、ドルに交換した。
祝杯をあげる四人組だが、坂本がそのドル札を見ると「これはワシの作った偽ドル紙幣じゃ」と言った。