大恐慌直後の1930年代オレゴン州で、鉄道を利用して移動するホーボーと呼ばれたホームレスと、ホーボーの無賃乗車を拒む厳格な車掌との戦いを描く。
監督はロバート・アルドリッチ、脚本はクリストファー・ノッフ、撮影はジョセフ・バイロック、アメリカン・ニューシネマ風音楽はフランク・デヴォールが担当した。
主演はリー・マーヴィンとアーネスト・ボーグナイン。
共演はキース・キャラダイン。
あらすじ
1933年不況のためにホームレスが大量発生し、彼らはホーボーと呼ばれた。ホーボーたちは無賃乗車して出稼ぎ地を移動した。主として貨物列車に乗ったが、列車の床下の空間に隠れて乗車することもあった。
オレゴン州のウィラメット・バレーに集まるホーボーは、19号列車に乗ることは避けていた。列車の車掌シャックは、ホーボーが無賃乗車するのを見つけたらすぐハンマーで殴り殺した。だが北国の帝王と言われるA-No. 1は、シャックの裏をかいて無賃乗車していた。
やがてA-No. 1に便乗して、シガレットという生意気な若者が19号列車に乗り込んで来る。おかげでシャックによって二人は貨車に閉じ込められる。しかし火事騒動を起こしてその隙に脱出する。
今度はA-No. 1が19号列車でポートランドまで行けるかどうか、ホーボーや乗員たちの賭けの対象になる。霧に紛れて猛スピードで出発した19号列車だが、ポイントを切り替えられていて引き込み線に入り車止めに衝突してしまう。その隙にA-No. 1とシガレットは乗り込む。
ところがシガレットの居場所がバレてしまい、橋の上で駐車されて捜索される。シガレットは慌てて橋脚を伝わり逃げ出した。A-No. 1は既に逃げ出し、寝転んでいた。再出発した列車の床下にA-No. 1とシガレットは潜り込んだ。シャックは、紐先に結んだ大きな釘を列車の下に放つと、釘は跳ね上がりシガレットの体を叩き付ける。A-No. 1は、釘を結んでいる紐を掴み車底に括り付けて、列車の左に回り込もうとするが、振り落とされてしまう。
線路側でひと息いれると、A-No. 1はブリキカンを集めて、缶底に残る油をレールに塗り始めた。そして通過する急行列車の車輪を空回りさせて一時停車させ乗り込み、州都セーラムで19号車の天井に乗り換える作戦を立てた。
無事セーラムに着いて降りたA-No.1は駅に留め置かれた鶏を一羽頂戴する。警官に追われるが、ホーボーたちの中に潜り込むと、逆に警官を散々揶揄って追い返す。今度はプロテスタントの洗礼式でA-No.1が囮になって、ボロ着を着ていたシガレットが立派な洋服を盗む。
セーラム駅の給水塔にA-No.1がこの列車でポートランドに行くと犯行予告があった。今回、シャックは通常運転をしてA-No.1 を誘き出して叩くつもりだ。2人は車の下に潜んでいたが、得意の綱付きの鉄棒で撃退する手を使った。今度はA-No. 1が痛めつけられたが、シガレットは知らん振りをしていた。A-No. 1は、車のエア・ブレーキをかけて列車を急停車させた。シャックはふり落とされ、機関士は気を失い、最後尾のブレーキ係は死んだ。
やがてシャックの命令により19号列車は発車した。シャックは、天井にいたシガレットを見つけたが、A-No. 1はシャックに「貴様の年貢の納め時だ」と叫ぶ。
無蓋車で鎖を持った宍戸梅軒のようなシャックと、A-No. 1との命懸けの決闘が始まる。A-No. 1がマサカリを手にして大怪我を負わせて、最後はシャックを崖底に向けて突き落とした。
シガレットは高みの見物をしていたが、シャックが死ぬとシガレットは自分の手柄のように喜んだ。切れたA-No.1はシガレットを川に突き落とした。そしてこう叫んだ、「お前は北国の帝王にはなれない」。
雑感
アメリカの大恐慌時代にホーボーと呼ばれたのは、日雇い労働者で開発工事がある飯場から飯場まで無賃乗車して移動する連中だ。鉄道が民営だから、乗車賃が高かったのだろう。
A-No.1は仕事にあぶれて本職が泥棒になっていたのだろう。真面目に働いているシーンが全くなかった。
ロバート・アルドリッチ監督らしくA-No.1とシャックの命を賭けた決闘シーンは、迫力があって好きだ。でもとどめを刺す前にA-No.1がローキックで細かなダメージを与えているあたり、実戦でも参考になる。
青二歳のシガレットに対しては、A-No.1は父親的立場で指導監督していた。シガレットは弟子入りして真面目に勤めれば、A-No.1にあらゆるノウハウを教えてもらい、北国の帝王二世になれたかもしれない。でも彼は教えを守らず、隙有らばA-No.1を出し抜こうとした。さらに自分から戦わない。こういったことが嫌われて、川に落とされ破門を命じられたのだ。
でも泥棒と旅をしていても盗む技術ぐらいしか身に付かず、人生の無駄になりそうだから、ホーボーから手を引いて堅実な道を歩むべきだよ。
スタッフ
製作総指揮ケネス・ハイマン
製作スタン・ヒュー
監督ロバート・アルドリッチ
脚本クリストファー・ノッフ
撮影ジョゼフ・バイロック
音楽フランク・デヴォール
キャスト
A-No.1 リー・マービン
車掌シャック アーネスト・ボーグナイン
シガレット キース・キャラダイン
ブレーキ手クラッカー チャールズ・タイナー
ハガー マルコム・アターベリー
警官 サイモン・オークランド
コーリー ハリー・シーザー