「はいからさんが通る」は、講談社の「週刊少女フレンド」で1975年7月から2年間連載され、名門日本アニメーションが制作し朝日放送系列で1978年から1979年まで3クールに渡って放送された。
しかし放送終了の理由は、打ち切りだったのだ。1980年に開催されたモスクワ五輪の関係で編成が変わったためと朝日放送は言い訳をしたが、翌年日本はソ連のアフガン侵攻を理由にして五輪に出なかった。
真実は視聴率に問題があったのだと思うが、朝日新聞は当時の大和の思想と合わなかったのかもしれない。
その後、頭に来た原作者の大和和紀は39年間アニメから手を引き、舞台化された「あさきゆめみし」「天の果て地の限り」「ヨコハマ物語」「虹のナターシャ」のアニメ化についても一切OKしなかった。実写映画化や3度のテレビドラマ化がなされたのにである。
しかしアニメで他社に後れを取っている講談社と汚点を残してしまったテレビアニメ制作会社日本アニメーションは、大和先生に再度のアニメ化を懇願して38年ぶりに許可をいただき、この度の劇場版映画化と相成った。
前編のあらすじ
前半は蘭丸中心のコメディだったが、紅緒が伊集院家に住み込んで少尉を本当に愛し始めたときに少尉がシベリア出兵(ロシア革命)で遠征し行方不明となる。伊集院の祖父も祖母も諦め少尉の葬儀を執り行うが、紅緒は「両夫に見えず」と言って白喪服で葬儀に出る。その後、資産のない伊集院家のために青江の許で新聞記者となるが、満州から少尉に似た人がいるという噂が届く。
誰が見ても分かるとおり、この内容は1時間半の映画というのは詰めすぎている。本当は三部作にすべきだ。
しかし40年前にテレビアニメを見ていた人には、既に放送したところはすっ飛ばした方が良い。関東大震災が起きてから(後編の後半)が重要なのだ。そういう意味で40年前に打ち切りに悔し涙を流した50代の大人にも配慮した構成だと言える。
作画は紅緒の目が大きすぎる点が残念。声優では紅緒役の早見沙織や蘭丸役の梶裕貴、鬼島役中井和哉、吉次役伊藤静が合っていない。中でも蘭丸は女形なんだから、声の低い女性声優が演ずるべきだ。
ただ、50代の人間はそんな欲張りを言わない。エンディングの前にテレビアニメのテーマが流れただけで満足である。
後は無事に後編を作り上げて完成させて欲しい。そして大和和紀作品が次々とアニメ化される流れを作ってもらいたい。それだけである。
<スタッフ>
監督・脚本:古橋一浩
キャラクターデザイン:西位輝実
原作:大和和紀
<声の出演>
花村紅緒:早見沙織
伊集院 忍:宮野真守
藤枝蘭丸:梶 裕貴
北小路 環:瀬戸麻沙美
花村少佐:石塚運昇
ばあや:鈴木れい子(テレビアニメと同一キャスト)
鬼島森吾:中井和哉
青江冬星:櫻井孝宏
前編に引き続き、2018年に馬賊のエピソードと関東大震災を描いた後編が上映される予定。ここで上映を中止したら、日本アニメーションは二度と立ち直れない。
テレビアニメのED「ごきげんいかが、紅緒です」は、西野バレエ団ダンサー兼作詞家のマルチタレントでありながら若くして亡くなった中里綴の名作詞である。
ちょうど次のED+予告編で劇場版後編に直接繋がる。