三隅研二「剣三部作」の中でも人気の高い作品。第一作同様カラー作品で柴田錬三郎原作の時代劇である。
主演は市川雷蔵、共演に佐藤慶、戸浦六宏、内田朝雄、睦五郎、工藤堅太郎。紅一点は姿美千子
 

 

あらすじ

 
藩主の母君は狂人だったが、愛犬と侍女きんだけが最期を看取った。その後、きんは誰の子と知れぬ息子を産み死んでしまった。斑平と名付けられた息子は下級藩士の養子として育てられることになったが、犬の子として蔑まれた。
斑平はすくすくと育ち、花を育てるに長け、心優しい青年に育った。お咲という農家の娘はそんな彼にほのかな恋心を抱いている。
藩主は母親の悪い血を受けて気が変だった。しかし斑平は足が速いことから藩主の覚えも良かった。ある日、居合の名人醍醐に出会い、教えを請う。一年経って醍醐はもう教えることはないと去って行く。その様子を見ていた小姓頭神部は、斑平に藩内に潜む公儀隠密を斬れと命じる。その中には師匠醍醐もいた。廃屋で妖剣を手にした斑平は、公儀隠密に藩主の乱心を告発しようとする藩内の反主流派も斬る。
ところが藩主がある日突然死して、遠戚から主君を迎えることとなる。神部は失脚してしまった。その機に乗じて、藩内で斑平に斬られた者の身内が立ち上がり、さらに助太刀も加わり、30人の刺客となって斑平を襲う。場所は斑平が丹精した山間の花畑である。お咲が襲撃場所に到着したときには、30人の亡骸だけがあり、斑平の姿はなかった。
 

雑感

 
ラストの30人斬りのシーンは凄い。斑平も相当に斬られていたから、おそらく山中で犬のように死んでいるだろう。三部作の最後にこれを三隅監督はやりたかったのだろう。そのためにも、第一作「斬る」第二作「剣」の最後は潔い自決なのだ。
ただ、考えさせるラストは、第一作、第二作の方だな。

 
最後に、斑平の親は誰か。きんではなく、藩主の母ではないか。父親は分からないが、藩主の父ではあり得ないから藩主の異父弟であり、新藩主になる権利はない。
初めはきんの子として育てるつもりだったが、きんが急死したため、下級武士に世話を任せた。
すなわち、藩主同様に斑平にも狂気の血が流れていたと推理する。

スタッフ・キャスト

 
監督   三隅研次
製作   田辺満
原作   柴田錬三郎
脚色   星川清司
企画   加賀四郎
撮影   牧浦地志
音楽   鏑木創
 
斑平      市川雷蔵
お咲      姿美千子
神部菊馬     佐藤慶
虚無僧(公儀隠密) 五味龍太郎
友蔵    睦五郎
朝蔵    工藤堅太郎
醍醐弥一郎   内田朝雄
藩主海野正信   戸浦六宏

剣鬼 1965 大映京都 三隅研二・市川雷蔵「剣三部作」完結編

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