(○★)タイロン・パワーの復員第一回主演映画で、W・サマセット・モーム原作小説の映画化である。
脚色はラマー・トロッティが担当し、エドモンド・グールディングが監督した。
白黒映画で撮影はアーサー・ミラーが指揮した。

主演はタイロン・パワー。共演はジーン・ティアニー。クリフトン・ウェッブ、ハーバート・マーシャル、ジョン・ペイン、新人アン・バクスター(この作品でアカデミー助演女優賞を受賞)。

雑感

第一次世界大戦で主人公は、さっきまで元気だった仲間を敵の攻撃で失う。その後、彼は婚約者の元に戻るが、再び真理を求めて自分探しの旅に出かける。
サマセット・モームの原作小説と比較して、前半は宗教劇のように映画の通り主人公の解脱を中心に描かれ、映画後半は世俗劇のように女性たちの生きざまをドラマティックに描いている。
その辺りの好みが、映画の好き嫌いが分かれる点である。
私は、聖と俗が描き分けられていて興味深く見た。

悟りに到達することが「剃刀の刃」の上を歩くように難しいものだというタイトルの意味が分かったことで満足してしまう人には、後半部分は退屈だろう。
しかし、この映画がアン・バクスターという若き演技派女優をイントロデュースするために作られたと考えたら如何か?
彼女が、アカデミー助演女優賞を受賞してスターダムにのし上がるのだから、この後半の世俗ドラマにも意味はあったと思う。
どんな剃刀にも哲学はある」。村上春樹によれば、サマセット・モームの言葉だそうだ。

日本では1948年公開。
1984年には、ビル・マーレイ主演でリメイクされている。

 

キャスト

タイロン・パワー  ラリー
ジーン・ティアニー  イザベラ
ジョン・ペイン  グレイ
アン・バクスター  ソフィー

ハーバート・マーシャル  ウィリアム・サマセット・モーム
クリフトン・ウェッブ  イサベラの伯父エリオット
ルシル・ワトソン  イザベラの母ルイーザ
フランク・ラティモア  ボブ・マクドナルド
エルザ・ランチェスター 秘書ミス・キース
フリッツ・コルトナー 坑夫コスティ
セシル・ハンフリーズ  聖者

 

スタッフ

製作  ダリル・F・ザナック
監督  エドモンド・グールディング
脚色  ラマー・トロッティ
原作  サマセット・モーム
音楽  アルフレッド・ニューマン
撮影  アーサー・C・ミラー

ストーリー

第一次大戦が終わってすぐ、イギリス人の大作家モームは、シカゴでラリー・ダレルという青年に出会う。彼は、大戦でのPTSDを抱えて、自分が幸福になることに懐疑心を抱き、婚約者イザベルとの結婚を延期してでもパリに戻る。一年後、イザベルはセレブな伯父エリオット・テンプルトンを頼りパリに来る。彼は、結婚して正しい信仰を探求しようと、イザベルに申し出る。しかし、彼女は定職も持たず、聖人のような生活をしたいという彼の気持ちを、理解できず、婚約を解消し他。そして、シカゴでラリーの親友グレーと結婚した。

ラリーは、北フランスの炭鉱で働いた。そこでかつて牧師だったという坑夫コスティと知り合う。彼は、ラリーにヒマラヤへ行って、聖者の教えを受けろと言った。
ラリーは、ヒマラヤに行き聖者に教えを請うた。聖者は、物資を超越した精神生活の実践を説き、ラリーに山に登り修行をしなさいと言った。そこで、ラリーは超自然的体験を経験し、聖者はラリーに、再び街に戻り、ここで学んだことを実践することを勧める。

結婚してから8年経って、グレーは1929年の大恐慌で全財産を失う。二人の子供とと神経衰弱に見舞われたグレーを連れてイザベルは、パリ在住のエリオット伯父のもとに身を寄せる。エリオットは大恐慌時に空売りを仕掛けて、さらに裕福になっていた。
パリに戻ったラリーは、モームとやイザベルたちと再会する。下町のキャバレーに一緒に行くと、幼馴染みのソフィが酌婦としていた。夫と娘を交通事故で失い、世をはかなんでアルコール中毒になっていたのだ。ラリーは、彼女を救おうとして婚約する・・・。

しかし、まだラリーを愛しているイザベルは、ソフィーに嫉妬した。ウェディング・ドレスを作るという口実でイザベルは、ソフィを高価な酒を置いた部屋に一人にして外出してしまう。ソフィは再び酒に溺れて酌婦に墜ちる。ラリーは探しまわったが屈強なトルコ人街に入り込んで救い出せない。
そしてしばらくしてから、ソフィがツーロンで何者かに殺された、という知らせが入った。ラリーとモームはツーロン警察で葬式の段取りを決める。

エリオット・テンプルトンが天寿を全うした。ラリーは、この機会にアメリカへ帰ることに決め、イザベルに別れを告げる。イザベルは、今になってグレーと離婚してラリーと結婚したいと告白する。しかし、ラリーはイザベルにソフィを死なせた責任があると断言する。ラリーは、大西洋の貨物船に水夫となって乗り組み、アメリカへ向かう。

 

剃刀の刃 The Razor’s Edge 1946 20世紀フォックス製作・配給 – サマセット・モーム晩年の作品を映画化

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