有名なアーサー王伝説の映画化。MGM配給映画だが伝説の本場である英国スタジオで製作している。
監督は「姉妹と水兵」のリチャード・ソープ。主演はロバート・テイラー、共演はエバ・ガードナー、メル・ファーラー、アン・クロフォード、スタンリー・ベイカー。英国の俳優を多く起用している。
カラーのシネスコ映画。
あらすじ
6世紀のイングランドは群雄割拠の時代だった。覇王アーサー・ベンドラゴンが亡くなり、妾腹の息子アーサーは聖剣をただ一人抜いて、英国王としての正統性を主張するが、彼の異母姉モーガン・ル・フェイは自分の夫モードレッドこそ正当な王だと反対する。賢者マーリンは各地の諸侯によって円卓会議を開いて王を決定しようと提案した。
諸侯の一人ランスロットはアーサーに初お目見えすることを楽しみに、円卓会議に向けて出発する。途中で少女エレーヌと同道するが、そこをモードレッド派の暴漢たちに襲われる。すると謎の騎士が一人加勢して、悪漢を駆逐してしまう。その騎士こそがアーサーであった。そこにエレーヌの兄パーシファルも現れ、ランスロットとパーシファルはアーサーに帰順を誓った。
円卓会議は揉めてしまいアーサーは王に選出されなかったが、マーリンが新しい王のもとで法治国家にすることを宣して閉会する。アーサーとモードレッドは雪解けを待って、共に兵を挙げて衝突する。アーサーは、ランスロット、パーシファルとともにモードレッドと北部諸侯を破り、王位に就く。アーサー王は反乱軍を罰しなかったため、不満に思うランスロットはアーサー王の元を一時去る。
このときランスロットは緑の騎士に捕われていた絶世の美女を救う。放浪を続けた後、アーサー王に詫びて宮廷復帰を許されたランスロットは、ギネヴァ王妃を一目見て驚く。救助して以来秘かに想っていた、あの美女だったのだ。鈍感なアーサー王はランスロットをギネヴァの世話役に任命する。
その頃、エレーヌはランスロットを愛する気持ちを王妃に打ち明ける。そう言われてもギネヴァはランスロットへの想いを諦めきれなかったが、男女の仲に聡いモーガン・ル・フェイが不貞に気付き宮廷に暴露しようとした。マーリンの入れ知恵でランスロットはエレーヌと急遽結婚し、北のノーザン・ウォールに向かった。二年後、エレーヌは息子ガラードを残して亡くなり、北部諸侯はアーサーに偽りの降伏をしたので、ランスロットは王宮に帰った。王妃はある夜ランスロットの許を訪れた。間諜から不貞の知らせを受けたモードレッドはランスロットを逮捕しようとするが、ランスロットはギネヴァとともに逃げた。モードレッドは円卓会議でランスロットを死刑に処することを決定するが、王は円卓会議の決定を覆し、ランスロットを流刑に処し、王妃を修道尼院に閉じ込めた。法による決定を覆したことを口実にモードレッドと北部諸侯は再び反乱を起こした。ランスロットを失ったアーサー王は重傷を負った。ランスロットは王の許にかけつけるが、ランスロットの息子ガラードに王位を継承すると言い残し、失意のまま亡くなる。ランスロットはモードレッドと決闘して今度こそ息の根を止め、荒れはてたキャメロット円卓に赴く。その時一緒にいたパーシファルは宙に浮く聖杯を見つけて、神の赦しの言葉を聞く。
雑感
アーサー王(メル・ファラー)とランスロット(ロバート・テイラー)が出会ってすぐ対決するシーンは、迫力が全くない。いくら初手合わせで力試しだったからと言って、あそこまで遠慮したシーンを見せられると客はがっかりして帰りかねない。もう少しマシな殺陣を付けられなかったのか?
モードレットとの最初の合戦シーンも子供でも気付くような手に引っかかってモードレッドは破れるが、もう少し気の利いた作戦はなかったのか。
ランスロットとモードレットの最後の決闘シーンも迫力が足りない。腰が入ってない。
MGMはアクションシーンにあまりに弱すぎる。
アーサー王伝説は12世紀からテキストになったようだが、伝承文学として4世紀にローマ帝国が去った後の時代から語り継がれてきたもの。バージョンごとに配役や内容が違っている。
モーガン・ル・フェはアーサー王の姉の一人だが、妖精モルガンとも言われ、バージョンによって善玉として描かれたり悪玉として描かれる。その姉モルゴースもいるが、この映画では現れない。
スタッフ
製作 パンドロ・S・バーマン
監督 リチャード・ソープ
脚本 タルボット・ジェニングス 、 ジャン・ラスティグ 、 ノエル・ラングリー
原作 トーマス・マロリー
撮影 フレディ・ヤング 、 スティーブン・デード
音楽 ミクロス・ローザ
キャスト
ランスロット ロバート・テイラー
ギヌベール王妃 エヴァ・ガードナー
アーサー王 メル・フェラー
アーサー王の姉モーガン・ル・フェ アン・クロフォード
モードレッド スタンリー・ベイカー
宰相マーリン フェリックス・エイルマー
パーシファルの妹エレーヌ モーリン・スワンソン
騎士パーシファル ガブリエル・ウルフ
騎士ガレス アンソニー・フォーウッド
騎士ガウェイン ロバート・アーカート
緑の騎士 ナイアル・マクギニス