ドリス・デイ追悼特集第三弾は「情欲の悪魔」の前年に公開された、クラーク・ゲーブル主演映画「先生のお気に入り」、つまり「先生のお気に入り(ティーチャーズ・ペット)」を主題歌とする白黒映画である。「先生のお気に入り」と言う題名の映画は、戦前に小学校の悪ガキと女先生の微笑ましい映画として撮られているが、こちらは仕事を持つ人が通う夜間大学(大学二部)を舞台にした、「なりすまし」型ロマンティック・コメディである。

監督は「聖処女」「三十四丁目の奇蹟」「喝采」「大空港」を撮った名匠ジョージ・シートンだから、面白くないわけがない。

共演は、「ミンクの手ざわり」にも出ていたギグ・ヤング

 

 

あらすじ

 

新聞社のギャノン編集長は中卒で叩き上げであることに誇りを持っている。そんな彼も自分を引き上げてくれた社長には口答えが出来ない。
ある日、夜間大学(コミュニティ・カレッジ)のストーン教授からジャーナリスト講座で話を聞かせて欲しいと手紙が届く。ギャノンは素っ気なく断るが、社長が怒ってしまい、渋々教授に謝罪に行く。教授は講義の真っ最中だったが、意外にも美人教師だったので、彼は工員のギャラガーと名乗って教室に潜り込む。そこではジャーナリズムの基礎を教えており、質問に対して彼はことごとく答えてしまう。教授にすっかり気に入られた彼は、個人教授を受けることになる。
しかし彼女は夜な夜な著名な心理学者パイン教授とデートしているようだ。偶然にも酒場で彼女とパイン教授と出会った彼は、学歴の引け目から何としてもパイン教授を懲らしめてやろうと、アルコールを3倍に濃くしてしこたま飲ませる。その甲斐あって、パイン教授は沈没。
二人きりになり、ストーン教授は彼を自室へ導く。しかしそこでストーンがピューリッツァ賞を受賞した新聞記者の娘だと知ったギャノンは、途端に酔いが醒め、羞恥心で部屋から逃げ出してしまう。
翌日、ギャノンはパイン教授を訪ね、恋の悩みを打ち明ける。ギャノンの正体を知ったパインは、早く彼女に告白すべきだと忠告する。しかし新聞社に戻ると、ストーンがギャラガーの才能を売り込みに来たところに鉢合わせする。正体がばれてしまい、彼女はカンカンになって口も聞いてくれない。
再び、パインの部屋へ行き自信をなくしたと訴えていると、ストーンがやって来る。パインはひとまずギャノンを自室に隠して、意固地なストーンを説得に掛かる。ストーンがパインの話術ですっかり素直な感情を取り戻した頃、ギャノンはストーンの父の記事を読み、それがもはや今の時代に通用しない過去の遺物と知り、自信を取り戻す。そしてストーンと顔を合わすと、また一悶着起こしてしまう。
最後はストーンが新聞社を訪れ、社長に対してギャノンを講義を担当して欲しいと直訴するところで終わる。

 

雑感

 

一瞬も飽きることなく非常に面白かったのだが、もし主役がクラーク・ゲーブルでなければ、もっと面白い脚本に出来ると思った。
例えば、どちらが優秀なジャーナリストか証明するために、実際に起きている事件を調査する。そこでストーンは犯人に繋がる手がかりを先に得るが、犯人に裏をかかれて誘拐されてしまう。しかしギャノンも別の手がかりから犯人を推理して、見事彼女を救出する。
おそらく、クラーク・ゲーブルはこういう複雑な脚本を拒否するだろう。ジェームズ・スチュアートならありだろうが。
ドリス・デイは主題歌を歌っているが、劇中では全く歌わない。彼女のコメディエンヌとしての才能は輝いていたが、主演を張るようになってから相手役に恵まれたとは言えない。彼女はクラーク・ゲーブル、ケーリー・グラントのような古いタイプ(1900年代生まれ)にも通用するが、ギグ・ヤング、ロック・ハドソン・ジャック・レモンの世代(1910~1920年代生まれ)に最も合っている。

ギグ・ヤングは「ミンクの手ざわり」同様にキューピット役の心理学教授を演じる。良い味を出していて、この作品でアカデミー助演男優賞にノミネートされた。(のちに「ひとりぼっちの青春」で受賞)

 

 

スタッフ・キャスト

監督 ジョージ・シートン
製作 ウィリアム・パールバーグ
脚本 フェイ・カニン 、 マイケル・カニン
撮影 ハスケル・ボッグス
衣装デザイン エディス・ヘッド
音楽 ロイ・ウェッブ

 

配役
ギャノン編集長 クラーク・ゲーブル
ストーン教授 ドリス・デイ
パイン教授 ギグ・ヤング
ペギー マミー・ヴァン・ドーレン
バーニー ニック・アダムス

 

 

先生のお気に入り Teacher’s Pet 1957 パラマウント配給 クラーク・ゲーブル×ドリス・デイ

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