個性派俳優が総出演なのに原爆が爆発するラストシーンを大映が取りやめたため、市川崑が監督としてのクレジットを断った作品。今でも原爆マグロなど地上波では放送できない内容を含んでいる。
佐藤栄作の造船疑獄+指揮権発動事件と第五福竜丸事件さらにゴジラ上映の年に政治家官僚汚職原水爆をテーマにするという当時としては非常にタイムリーな映画だった。

原爆で家族を失ったとても気の弱い税務署徴税官館香六(木村功)が主人公である。納税者の元を訪れても、なかなか税金を払えと言えない。失業者の鷹さんのもとに税金を取りに訪れる。しかし二十人以上の子沢山で長男は劇団の研修生で無収入、下宿人のすてに至っては頭がおかしくなり原爆を作っていて、香六は怖くなって逃げ出した。アルマイト会社社長が飛行機事故で亡くなっても徴税官は税金を取りに行かなければならない。未亡人は大勢の子供を育てながら鍋の店頭販売をしている。その未亡人に大目に見て欲しいと10000円を握らされる。汚職と縁がなかった香六は罪の意識におののく。人気芸者の花熊は香六にもっと大きな汚職を暴露して世に知らせてやればいいと唆す。しかし花熊はそれをネタにゆするつもりだった。そして税務署長の悪事をせっせと記録した文書が流出し大騒ぎになる。さらに鷹は香六が赤札を貼ったために原爆マグロを食べて一家心中してしまう。生き残ったすては、原爆を爆発させるつもりになってしまい香六はまた逃げ出すのだった。

ナンセンス調のブラックユーモアだ。でも木村功自身も家族を原爆で失ったと聞くと、笑えないものもある。
脚本クレジットは市川崑だが、脚本協力として和田夏十だけでなく漫画家の横山泰三、さらに芥川賞作家の安部公房も名を重ねている。それ故いつもの脚本和田夏十調とは大きく違う。安部公房が元ネタを考え横山泰三がユーモア風に脚色した感じがする。

監督 市川崑
脚本 市川崑
脚本協力 安部公房横山泰三 、 長谷部慶次 、 和田夏十
音楽 団伊玖磨

配役
舘香六 木村功
すて 久我美子
花熊 山田五十鈴
海老蔵 伊藤雄之助
十二 信欣三
その妻 高橋とよ
長男 岡田英次
伝署長 加藤嘉
麻子 左幸子
社長夫人 北林谷栄

億万長者 1954 青年俳優クラブ/大映

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