浅草の禿ずらの大スター大宮デン助。
これは、彼が映画界に進出して第2作目らしい。
浅草人脈では清川虹子、坊屋三郎が共演している。
この時期の新東宝はまだコメディーを作るだけの余裕があったようだ。
監督は名匠斉藤寅次郎。
殺人事件が起きた。被害者は混血児の母であり、その子供ジョージは殺人魔の目をかすめ逃げてしまった。
ジョージは寒さから逃れて屋根の中に隠れているところを煙突掃除人の善太に保護される。
善太は町の発明家であるが、実業家の妻と別れて一人で暮らしていたのだ。
善太はジョージを我が子のように可愛がるが、そこへ善太の娘京子が訪ねてきた。
彼女は今度結婚するので母と仲直りしてくれないかと言う。
善太は結婚を祝福するが、自分から妻に折れるのは嫌だと言って断った。
ところが京子の婚約者寛平がこの殺人事件の重要参考人にされてしまう。
一方、善太とジョージは町で殺人魔矢代に見つかり、寝ているところを小屋ごと連れ去られる。
ジョージとともに小屋から命からがら逃げ出した善太は、仕方なく妻文子の元へ戻った。
しかし文子はジョージが気に入らず、追い出してしまった。
ついにジョージは矢代に捕まり、来日していたある国の国王陛下のもとへ連れて行かれる。
実はジョージの父は国王陛下のただ一人の息子で、朝鮮戦争の従軍中に亡くなっていた。
はじめは、新東宝だけにエログロかなと心配したが、さにあらず、デン助さん大活躍の巻である。
タイトルは「デン助の発明狂時代」の方がもっともらしい。
クレジットでは池内淳子が大きく扱われていたが、この作品の主役は大宮デン助でヒロイン(?)は清川虹子だ。
浅草で演じるような禿づらで、唄付きドタバタ喜劇を見事に演じている。
9つ年上の榎本健一が往年の輝きを失ってシリアス演技に傾いていた時代だから、大宮デン助のドタバタ劇は広く大衆に受け入れられたと思う。
ただし浅草オペラの時代は遠い昔のことで、飽きられるのも早かった。
その後も彼は浅草の松竹演芸場で劇団を主宰して長く活躍し、1973年に劇団解散後はテレビに本格的に進出し再びブームを呼び活躍したが、おしくも1976年になくなる。
個人的には小学生の頃に見たテレビドラマ「ぶらり信兵衞道場破り」の演技が忘れられない。
あのときは放送期間が半年の予定がヒットしたため一年に延長されデン助さんは途中から藤原釜足に交替したが、子供心にもの足りなく思ったものだ。
監督 斎藤寅次郎
脚本 中田竜雄
製作 柴田万三
撮影 友成達雄
美術 加藤雅俊
音楽 原実
出演
大宮デン助 (善太)
清川虹子 (お文)
池内淳子 (京子)
和田孝 (寛平)
小倉繁 (矢代)
坊屋三郎
永遠のセルマ・リッター
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