(★)文学者サマセット・モームの名作で自伝的小説三度目の映画化。
ブライアン・フォーブスが脚本化し、TV出身のケネス・ヒューズが監督したイギリス文芸映画白黒映画で撮影はオズワルド・モリスが担当した。
主演はキム・ノヴァクローレンス・ハーヴェイ
共演はロバート・モーリー、シオバン・マッケナ、ナネット・ニューマン

雑感

原作は、男と女は一度愛し合ったが最後、絆(縁)が出来てしまい、そう簡単には離れられないという話。

サマセット・モームの原作小説「人間の絆」最初の映画化のタイトルは、谷崎潤一郎原作小説と同じ題名の「痴人の愛」だった。英国の名優レスリー・ハワードとアメリカのベティ・デイビスが主演した。とくにベティ・ディビスは、人の嫌がる汚れ役を厭わず挑戦し、出世作となりアカデミー賞候補と見なされる。しかし、所属するワーナーブラザーズでなくRKOラジオ映画の作品だったため、ワーナーのせいで受賞できなかった。翌年、「青春の抗議」でアカデミー主演女優賞を受賞するが、本人は前年の「痴人の愛」で取れなかったことを悔いていた。
映画化二作目は、1946年のワーナーブラザースのリメイク映画で、オーストリア人ポール・ヘンリードと米国人エリノア・パーカーが主演したが、当時は国内で上映されなかった。

そして三作目として日本題「人間の絆」が1964年に公開される。監督はヘンリー・ハサウェイから二転三転して、テレビからケン・ヒューズが呼ばれた。当初はモンゴメリー・クリフトとマリリン・モンローが主演する構想があったが、マリリン・モンローの死とクリフトの交通事故による後遺症による体調不良で頓挫した。
主演に選ばれたローレンス・ハーヴェイは、フランスに晩年のサマセット・モームを訪ね、役柄について語り合った。一方の主演キム・ノヴァクは、最初の映画化の主役ベティ・デイビスのサポートを拒否した。

渋い映画化だけれども、個人的にキム・ノヴァクの汚れ役は気に入っている。ベティ・デイビスの援助を断って自己流で演じたのはさすが役者魂だなと思う。しかし、監督が英国人で脇役も英国俳優で固めたせいか、彼女の演技にハリウッド的な華やかさは感じられなかった。

 

キャスト

キム・ノヴァク  蓮っ葉な女ミルドレッド
ローレンス・ハーヴェイ  医学生フィリップ・ケイリー
ロバート・モーレイ  ジェコブス教授
シオバーン・マッケンナ  作家ノラ・ネスビット
ロジャー・リヴシー  ソープ・アセルニー
ジャック・ヘドレー  友人グリフィス
ナネット・ニューマン  ソープの娘サリー・アセルニー
ロナルド・レイシー  友人マシューズ
アンソニー・ブース マーティン

 

スタッフ

製作  ジェームズ・ウルフ
監督  ケネス・ヒューズ
脚本  ブライアン・フォーブス
原作  サマセット・モーム
撮影  オズワルド・モリス
音楽  ロン・グッドウィン

 

ストーリー

フィリップ(ローレンス・ハーヴェイ)は巴里に行き画家になろうとするが、師に諦めるように言われた。ロンドンに戻った彼は、医師になるため学校に入る。そこでは、グリフィス(ジャック・ヘドレイ)やマシューズといった悪友が出来る。
フィリップは、喫茶店の娘ミルドレッド(キム・ノヴァク)と出会い、恋に落ちる。それまで奥手だった彼は、彼女に積極的に迫り付き合うようになる。ところが、彼女は浮気性であり、愛よりも自由を求めた。フィリップは、勉強をおろそかにして卒業試験に落第してしまう。
フィリップは、ミルドレッドと一度は距離を取るが、再会して寄りを戻す。意を決して彼はミルドレッドに求婚するが、彼女は野卑なミラーという男と結婚すると言って出ていく・・・。

再び試験の季節が来た。あるサロンでノラという未亡人作家が彼の前に現れた。彼は、年上で教養深い彼女に愛されて勉強に集中できた。
彼の前にミルドレッドが再び現れた。彼女は、ミラーとの子供を宿すが、途端にミラーに捨てられたそうだ。彼女の謝罪に応えて、ノラと別れて彼女を部屋に住まわせた。ところが、彼女はグリフィスと遊んでいた。フィリップは三度ミルドレッドと別れた。
彼は吹っ切れたようになって、卒業試験の勉強に勤しむ。そんな彼を入院患者のアセルニーや娘のサリー(ナネット・コールマン)は、支援する。
そして彼は卒業試験に合格する。病院に勤務していたある日、夜勤をしていると、ミルドレッドが不調を訴えてやって来た。検査の結果、重症の梅毒に冒されていたが、彼女は治療に応じなかった。
再び担ぎ込まれたときは、瀕死の状態だった。そして、彼に立派な葬式を出してと言うと、息を引き取る。ミルドレッドの葬式を出すと、フィリップは病院を退職する。サリーから求婚されるが、彼女を幸せにする自信がなくて彼は旅立った。車中でふと気がつくと、サリーが微笑を浮べて隣にいた。

 

人間の絆 Of Human Bondage 1964 セブン・アーツ製作 MGM配給 – サマセット・モームの自伝的小説の映画化

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