明鏡大師が来日する。
彼は日本の残留孤児として苦労しながら、養親の一家に可愛がられ、後に中国の寺に学び高僧となった。
そんな彼を見つめる、一人の老人がいた。
彼の実の母親である。彼女は終戦時、なくなく生まれたばかりの子供と別れたのだ。
来日最終日、母は名乗り出て、明鏡は彼女の家に招かれる。
最初は異様な映画だった。
明鏡大師が小さい頃から賢かったが、日本人としては虐められたエピソードだ。
戦時中、日本人に虐められた中国人が、戦後になって村でたった一人の日本人である明鏡を虐めている。
しかし文盲の養親のもとで育ちながら彼はスラスラと文字を読むようになる。
中国人の日本人に対する憎しみと憧れは非常に複雑だ。
最後は日本での母と息子の出会いと別れの話だから、お涙頂戴なのだが、明鏡の着替えのシーンで早回しを使ったりして、違和感が拭えなかった。
日本と言うより台湾かどこかでロケをしてるようだ。
中国仏教についてもよくわからなかった。平和仏教と言っているが、少林寺しか中国仏教なんか知らない身には、へーへー!だった。
また文革の歴史については全く語られなかった。
いろいろ都合の悪いことがあるのだろう。
完全に中国映画だ。
謝晋監督は日本人が見ることを考えずに作っている。
もし日本人のスタッフを入れていれば、もう少し分かりやすい映画になっただろう。
もっとも当時は中国映画も日本にはそう多くは入ってなかった。
それから鑑真について。
鑑真は日本が好きだから日本布教にこだわったのだと、日本人は考えがちだ。
しかし明鏡は映画の中で「彼は日本が好きだったのではない。使命感を感じていたのだ。」と言った。
宗教者の考えとしては、その通りだと思う。
かえって法難に遭ったおかげで、使命感が増したのだ。
栗原小巻も老け役すると下手だ。
まだ若いんだから無理に老けなくても良いだろう。
川田あつ子は久しぶりに見たが、美人だった。
今や柳ユーレイ夫人だ。