(☆)秀才として尊敬された青年が結核と診断され、のけ者にされて無差別殺人に走るまでを描いた映画。
津山30人殺し事件を基にした、西村望原作の小説「丑三つの村」を映画化したもので、脚本は西岡琢也、監督は田中登
主演は古尾谷雅人、田中美佐子
共演は池波志乃、五月みどり、大場久美子

 

あらすじ

軍国主義ムードが高まってきた昭和十三年、岡山県の三十人余りの日暮谷村。
十八歳の犬丸継男は、村一番の秀才として村人の期待を集めていた。しかし自分は、銃器マニアで戦場で戦いたいと思っていた。この村は閉鎖的で、ほとんどの者が親類関係にある。
継男は両親を病気で失い、二人きりの家族である祖母はんがいるため、寮に入る岡山の師範学校に行くことができ無かった。そこで検定試験を受け、教師になる道を選ぼうとしていた。
18才になって継男が、夜ムラムラして覗き回っていると、人妻えり子と村の実力者赤木が交わっているところを見てしまう。えり子は旦那が外出がちで、赤木は夜這い取り締りの責任者だった。数日後、継男はえり子の所を訪ねると、彼女は誘ってきて継男を手で行かせてくれる。調子に乗った継男は、親戚のミオコとも関係を持つ。
彼は、従姉妹のやすよが好きだった。継男は兵役検査を受けるが、結核と診断され不合格になってしまう。秀才と誉めていた村人も、彼を避け始める。同世代の和子も病気を知ると、冷たい態度を取る。やすよは嫁に行くことになり、和子も嫁いで行く・・・。

 

雑感

昭和13年に起きた「津山事件」を基にした小説の映画化であり、あくまでフィクションだが、時代や事件の背景、被害者数は実際に起きた事件と同じである。

秀才肌だった人間が挫折しひねくれてしまうと、周囲と衝突を繰り返し、どんどん孤独に追い込まれて大量殺人に走るのは、残念ながらたまにあることだ。

田中美佐子は、当時大好きだった。1980年代後期から1990年代にかけてのトレンディ・ドラマ全盛期にW浅野に離されたが、欽ちゃんファミリーに入って人気が再燃した。彼女は隠岐の島の出身だから、派手なドラマには似合わない。こんな田舎者の役がぴったりである。それに池波志乃五月みどりの豊満なヌードに食傷した後に、彼女のスレンダーな全裸を見ると、聖女を見るような神々しい気持ちになってしまう。
継男役の古尾谷雅人が、自殺の真似をしようとして首にロープを巻き付けるシーンや、実際に猟銃を首に突っ込むシーンで狂気の笑いを見せるのは印象的だった。実際、彼は自死でこの世を去ったが、最後にこの映画のことを思い出しただろうか。

横溝正史の推理小説「八つ墓村」も同じ事件をモチーフにしている。だから渥美清が金田一耕助を演じた松竹映画「八つ墓村」のセットを使い回している。

スタッフ

製作  奥山和由
原作  西村望
脚本  西岡琢也
監督  田中登
撮影  丸山恵司
音楽  笹路正徳

 

キャスト

犬丸継男  古尾谷雅人
やすよ(従姉妹)  田中美佐子
えり子  池波志乃
はん(祖母)  原泉
赤木勇造(村の実力者)  夏八木勲(当時は夏木勲)
赤木中次  石橋蓮司
赤松巡査  山谷初男
葉村文明  南城竜也
中山哲夫(先輩)  新井康弘
出征兵士  ビートきよし
竹中和子  大場久美子
赤木ミオコ(親戚)  五月みどり

 

 

***

継男は、気晴らしに山に入り、銃の練習をする。赤木たちが外から移住してきた坂本を殺すのを目撃し、翌日、駐在に知らせようと思った。しかし赤木が鋳材から離れないので、口に出せない。
やすよが離縁されて来た。原因は、継男と付き合っていたことだと言う。継男はやすよが風呂に入っているのを夜這いして、その場で激しく愛し合う。やすよは、再び嫁いでいった。
継男は、赤木ににらまれて、次に殺されるのは自分だという強迫観念を抱く。そこで近親相姦で汚れた村を戦場にしてと戦おうと決意する。やすよには「来るな」と手紙を書いた。当日、和子が帰ってきたと聞いて継男はニヤリとする。
夜になり、彼は停電を起こすため、村の送電線を切る。丑三つのときに学生服にゲートルを巻いて武装した継男は、「犬丸継男君万歳!」と叫び、一人残していくのが忍びない祖母を真っ先に斧で惨殺した。そして自分をのけ者にした人間の一族郎党を皆殺しにしたのである。和子も射殺した。
やすよは、手紙を読んで帰ってきていた。継男は、やすよの体に新しい命が授かっているのを喜び、彼女と別れて山に入った。翌朝早くに、彼は銃口を加え自殺した。

丑三つの村 1983 松竹映像製作 富士映画配給 津川事件の映画化

投稿ナビゲーション