カレン・ブリッセンが書いた、マカオを舞台に老商人が最後の願望を実現する、原作短編小説を映画化した。
監督と脚本はオーソン・ウェルズ。
主演はジャンヌ・モロー、オーソン・ウェルズ。
あらすじ
豪商クレーは70歳を過ぎて、痛風に苦しみ痛みで眠れない。そんな夜は書記ルヴィンスキーに過去の帳簿を読み上げさせる。しかしその帳簿も二回も読み上げてしまい、飽きてしまう。クレーは何か呼んでくれと書記に頼む。ルヴィンスキーは旧約聖書からイザヤ記の一節を読むが、クレーはいつ起きるかわからぬ預言書なぞ読むなと言う。そして船で聞いた話をする。船乗りが豪商に5ギニーで雇われ、美女と一晩を共にする話だ。ルヴィンスキーはそれも船乗りの中で言い伝えられた嘘と指摘する。するとクレーは、わしの財力でこの話を現実のものにするぞと言い出す。その顔には死相が漂っていた。
ルヴィンスキーは美女の人選を任せれた。かつてクレーに借金の方として全ての財産を取り上げられて自殺した商人がいたことを覚えていたが、その娘ヴィルジニーがあちこちを旅した後、再びマカオに舞い戻って来ていた。ルヴィンスキーは娘に会って100ギニーでスカウトした。彼女は最初嫌がっていたが、300ギニーで折り合った。
一方、船乗りの方も金髪でガタイの良いイケメンがぶらぶらしていた。クレーが聞けば、1ヶ月の間漂流していてやっと今の船に助け出されたと言うので、一晩5ギニーで雇う。
その夜、金髪のポールとヴィルジニーは初対面だったが、お互いに相手を気にいる。クレーたちが驚いたことにポールは童貞だった。しかしヴィルジニーが誘うと、ポールは雄々しく挿入した。
翌朝、クレーは自分が生きていた証としてこの事件を残せたことに感動していた。ポールは漂流した島で拾ったと言う見事な貝を一つクレーに進呈して船旅に出た。ルヴィンスキーが君は伝説を作ったと声をかけると、誰に言っても信じられないから誰にも言わないと答えた。涙目のヴィルジニーはその後ろ姿を目で追う。ルヴィンスキーがクレーを見ると、興奮してこと切れていた。
雑感
この作品はフランスのテレビドラマとして作られたが、後に編集して映画化された。今回は英語版58分とフランス語版50分を共に字幕版で見た。
どちらも小品だが、一度見始めると吸い込まれるように最後まで見てしまった。枝葉を切ったフランス語版の方が良かった。オーソン・ウェルズの老人英語は何を話しているのかわからず、苦手だ。
ナポレオン3世が失脚した後と言っていたから、時代は1900年前後のマカオ(澳門)だろう。
不滅(immortal)というから死なないことかと思ったが、物語が現実になることを不滅と言うようだ。しかし現実になっても経験者が全員亡くなれば、再び物語になるのではないか。それとも伝説になるのかな。実話だって、噂になると枝葉が付いて何が本当か嘘かわからなくなる。
ジャンヌ・モローは実際はしわくちゃなのだが、撮影がソフト・フォーカスで思わず色気を感じてしまった。
スタッフ
製作 ミシュリーヌ・ロザン
監督 オーソン・ウェルズ
原作 カレン・ブリッセン(筆名イザーク・ディネセン) (「バベットの晩餐会」の原作者)
脚本 オーソン・ウェルズ、ルイーズ・デヴィルモリン
撮影 ウィリー・クラント
キャスト
娼婦ヴィルジニー ジャンヌ・モロー
クレー老人 オーソン・ウェルズ
書記レヴィンスキー ロジャー・コジオ
船乗りポール ノーマン・エシュリー
商人 フェルナンド・レイ