3人の若妻に届いた見知らぬ女からの手紙が元で起こる浮気騒動を描く喜劇映画。ジョン・クレンブナーによる原作をヴェラ・キャスパリーが脚本にしたものを、ジョセフ・L・マンキウィッツが監督、脚色した。
主演はジーン・クレイン、アン・サザーン、リンダ・ダーネル。
共演はジェフリー・リン、カーク・ダグラス、ポール・ダグラス、バーバラ・ローレンス。(再掲示)
あらすじ
ある土曜日の三人の妻の日常とアディの独白で始まる。
妻三人が子供たちを連れて遊覧船に乗って遊びに出かけようとしていたところに、街を去った美女アディから手紙が届く。そこには「あなたたちの夫の一人と駆け落ちします」と書いてあった。船はすでに動き始めている。誰の夫と逃げたのか。
デボラは農家の出身で、名門の子息ブラッドと不釣合な結婚をしたことを自覚していた。デボラは初めて街にやってきてパーティーで初めてアディを見かけた。その時、学生時代に二人は良い仲だったと気付いたのだ。
リタは教師のジョージと結婚したが、彼の収入だけでは家計が苦しく、ラジオ放送作家として夫以上の収入を得て、夫婦仲は上手くいかなくなっていた。リタは上司を呼んだホーム・パーティーで上司は夫ジョージに話しかけるが、ジョージは教養をひけらかすだけで話は噛み合わなかった。実は放送の編集の仕事に空きがあったのだが、リタはジョージにどうかと思っていたのだが、ジョージは怒ってしまった。
ローラメイは貧民窟出身で百貨店王と玉の輿狙いで結婚したことにひけめを感じていた。結婚前は身分の差で色々あったのだ。その時もアディの影を感じていた。
お互いの回想シーンの後、下船時刻になり、妻たちは家に帰る。リタが帰ると、ジョージが先に帰っていた。今日は演劇部指導の初日だったそうだ。
ローラメイが帰ると、しばらくしてからポータが帰ってきたが、やはり口喧嘩を繰り返している。
デボラが帰った時、ブラッドは今晩帰らないという置き手紙を残して消えていた。
パーティに出掛けたデボラと二組の夫婦だったが、やはりデボラはたまらなくなり、全てを告白して帰ろうとする。
その時、デボラを留めたのはポーターだった。実はポータがローラメイとの生活に飽き足りず、アディと一緒に逃げるはずだったのだ。しかし寸前になって、ポーターは家に残り、アディは街を引き払った。ポーターはローラメイに詫びて、復縁した。
雑感
アメリカの古き良き時代である。
赤狩り(ハリウッドにとっては左派ユダヤ人狩りである)直前であった。
マンキーウィッツ監督はこの作品でアカデミー監督賞・脚本賞を獲得して、
さらに翌年「イブの総て」で監督賞を連覇する。
いま見ると何故三人の妻は、自分が悪いと思っているのだろうか。
今だったら、妻は愛人であるアディを恨むものだろう。
この作品には当時のアメリカの超保守的な夫婦観が反映されている。
お芝居としてはジーン・クレインをメインに扱っているように見せかけておいて、実はリンダ・ダーネルが主役だった。
この映画でセルマ・リッターのお手伝いさん姿が、はじめて世に出た。
この方が僕にとっては重大事である。
彼女にとって「34丁目の奇跡」に次ぐ、実質的二作目である。
クレジットされていないが、アン・サザーン家のお手伝いさんであり、リンダ・ダーネルの実母の親友と言う重要な役である。
二つの回想シーンに登場し、台詞は三夫婦に次いで多い。通いのお手伝いさんが友人とともに主人の悪口を言う。
市原悦子と野村昭子の「家政婦は見た」名シーンはこの映画が起源ではないか?
スタッフ
原作 ジョン・クレンブナー
脚本 ヴェラ・キャスパリー、ジョセフ・L・マンキーウィッツ (アカデミー脚本賞)
監督 ジョセフ・L・マンキーウィッツ (アカデミー監督賞)
撮影 アーサー・C・ミラー
音楽 アルフレッド・ニューマン
キャスト
デボラ・ビショップ ジーン・クレイン
リタ・フィップス アン・サザーン
ローラ・ホリングスウェイ リンダ・ダーネル
夫ブラッド・ビショップ ジェフリー・リン
夫ジョージ・フィップス カーク・ダグラス
夫ポーター・ホリングスウェイ ポール・ダグラス
ベイブ・フィニー バーバラ・ローレンス
フィップス家の家政婦セイディー セルマ・リッター(クレジット無し)
アディ・ロス セレステ・ホルム (声と後ろ姿のみ、顔の露出無し)