窓際係長が、実は会社上層部と繋がっていて、会社の深い闇の隠蔽に関わっている・・・。
監督は、TBSテレビ「日曜劇場」において多くの池井戸潤原作作品を手掛けた福澤克雄である。

主演は狂言界のエース野村萬斎。共演は朝倉あき鹿賀丈史、橋爪功の他、及川光博、香川照之、片岡愛之助、北大路欣也などドラマ「半沢直樹」の主要メンバー。
本作に登場した電機メーカー「ゼノックス」は、てれb「半沢直樹(2020年版)」にも登場した。

あらすじ

中堅メーカーの東京建電の営業一課の課長である坂戸は、「八角(はっかく)サン」と馬鹿にされても北川部長と同期であるばかりに叱られない係長八角(やすみ)に対するパワハラで人事部付きに左遷されてしまう。代わりに営業二課の課長だった原島が、一課の課長になる。原島は、八角を怪しむ。
OL浜本優衣は、間もなく寿退社する予定だが、花道にドーナツの社内販売を企画し、試験販売にこじつける。上司である原島も、そのドーナツを購入している。ところが、社内に万引き犯がいて、閉店時の在庫と現金が合わないのである。優衣は、八角こそ犯人ではないかと疑っていた。

どこの会社でもあることだが経理は、営業の使う交際費問題を巡って、犬猿の仲だった。経理課の新田は、営業の八角がネジの仕入先をわざわざ単価の高い「ねじ六」という会社に変えたことを知る。坂戸の時代には、トーメイテックという新興メーカーを使って安価なネジを仕入れていたのに。
新田は、八角がキックバックを得ていると疑った。
役員会で新田は、「ネジ六」問題をあげるが、なぜか社長の宮野は「時間の無駄」と一喝した。

ドーナツ泥棒の件があるので、優衣は八角に詰め寄る。しかし、八角は優衣の伝票を見て、「ドーナツ泥棒は水曜日に出没している」と指摘する。優衣と原島は水曜日に張り込みをして、新田が犯人だと知る。新田は役員会向けの資料を作成するために、水曜日に残業していて、別れた優衣への腹いせに、ドーナツを盗んでいた。
新田は東北に異動になった。

原島は、坂戸や新田など八角を陥れようとした者が異動になるのに疑念を抱く。原島は、先の会議で原島が腰を下ろした拍子に椅子が壊れた際に、会議室の椅子がすべて入れ替えられたことを知る。椅子のねじに問題があったと思った原島は、調査する。椅子のねじは、以前ねじ六が作っていたが、坂戸が課長になってから、トーメイテックに業者が変更になっていた。そのトーメイテックのネジは、コストをダウンさせたが、壊れやすかった。それどころかトーメイテックは、航空機用や列車の部品も扱っていた。強度不足が露見したとき、リコールしなければいけなくなる。

八角はむしろ、坂戸の選んだトーメイテックの不良品のねじの強度不足を、極秘裏に「ねじ六」に戻そうとしていた。事実を知った原島は八角に詰め寄ったが、八角は「すでに社長は知っている」と答える・・・。

雑感

ショボくれた窓際族と思われていたが、実は会社をピンチにあたってタスクフォースとなり動いて、親会社もいざとなれば道連れにする野村萬斎が、格好良い。

それよりも良いのが、OL役の朝倉あきだ。かなり大きい役で、抜擢人事だ。NHKドラマでアイドル女優の頃から見てきて、二十歳過ぎで東宝芸能を退社した時はどうなるのかと思ったが、「孤独のグルメ」の端役などで食いつないでいた。そこから、よくぞここまで復活してくれた。

あとは、TBSの池井戸潤ドラマの常連が(違う役で)多く出演していたので、安心して見られた。
もう少し、新しい人を使って欲しかったが、福澤克雄という監督は、新人を使うのが苦手かな。

スタッフ

原作:池井戸潤「七つの会議」
監督:福澤克雄
脚本:丑尾健太郎、李正美
音楽:服部隆之
主題歌:ボブ・ディラン「メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ」

キャスト

八角民夫(営業第一課 係長 ):野村萬斎
北川誠(営業部長):香川照之
原島万二(営業部二課長 → 営業部一課長):及川光博
坂戸宣彦(営業一課長):片岡愛之助
新田雄介(経理課課長代理):藤森慎吾
浜本優衣(営業一課員):朝倉あき
佐野健一郎(カスタマー室長):岡田浩暉
河上省造(人事部長):緋田康人
飯山高実(経理部長):春風亭昇太
加茂田久司(経理課長):勝村政信
村西京助(副社長):世良公則
宮野和広(社長):橋爪功
・ゼノックス社
梨田元就(常務取締役):鹿賀丈史
徳山郁夫(社長):北大路欣也
・その他
三沢逸郎(ねじ六社長):音尾琢真
八角淑子(八角の元妻):吉田羊
三沢奈々子(逸郎の妹):土屋太鳳
江木恒彦(トーメイテック社長) :立川談春
加瀬孝毅(弁護士):役所広司

 

***

今から2か月前のことである。社長・宮野と北川の指示で、八角はネジ交換に動いていた。坂戸については、パワハラは表向きの理由で人事部に異動させた後、軟禁状態にして事情を聴取していた。
しかし、八角がイスの回収を終えると、宮野社長は「事実を隠蔽する」と発言する。
ショックを受けた八角は、有休を取る。原島と優衣は八角のあとを追う。墓参りだった。八角は、以前無理なセールスを掛けて、顧客が借金に追われて自殺したことがあった。その客の命日に毎年墓参しているのだ。
この事件以来、八角は同期の北川に顧客を与えて、ボンクラ係長になったのだ。

八角は、ネジの仕入れ先をトーメイテックに変えたのは、坂戸の判断でないと考えた。北川がトーメイテックを頻繁に訪れてい他ことから、北川あるいは会社の上層部が関与したと考える。そして八角は、親会社ゼノックスの社長・徳山の前で全てを暴露します。事件の報告を聞いた徳山は「私が預かる」と言ったきり、一切の事件データを東京建機から持ち出してしまった。

会社の姿勢に落胆した八角は、北山が隠し持っていたトーメイテックのネジを使って国土省に内部告発をする。

第三者委員会の加瀬弁護士に八角は、本音を聞かれる。「この世から不正はなくならない。昔から侍の生きざまとして、人より藩、人より会社という忠誠心の姿勢が、日本人にしみついてしまっている」と八角はぼやく。

東京建電は、残務整理を残して解体される。残務整理をするのは、原島と八角だ。優衣は退社したが、ドーナツ屋に就職して、彼女の無人販売は健在である。

 

 

 

 

七つの会議 2019 マックロータス制作 東宝配給 池井戸潤の人気連作短編集の映画化

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