1944年に起きたドイツ国防軍将校クラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐を中心にしたヒトラー最期の暗殺計画「7月20日事件」を描いている。
1943年に入るとドイツ国防軍にも反ヒトラー派が台頭してくる。当時、北アフリカ戦線の敵の爆撃で左目、右手を失い、左手指も2本失う重症を負ったシュタウフェンベルグ大佐はベルリンのドイツ予備軍司令部に転属する。オルブリヒト将軍はその決断力を買いヒトラー暗殺計画に勧誘するが、ヒトラー死後のビジョンが何一つ描けていなかったので一度は断る。しかし再度要請され、計画立案に関わることを条件に参加する。そこで非常事態に軍が全権を掌握できるように予備軍のマニュアルである「ワルキューレ」作戦を改訂してヒトラーの承認を得る。
1944年7月に一度暗殺のチャンスはあった。ワルキューレ作戦は一旦発動したが、ヒムラーが同席していなかったため、将軍たちが計画実行を渋って中止になる。5日後再びチャンスがあり、中級将校の判断で暗殺計画を実行した。ヒトラーの足下に爆薬を置き、10分後に爆破するものだ。爆弾は見事に爆発した。それを離れたところで見ていたシュタウフェンベルクはベルリンに戻りワルキューレ作戦を実行する。しかし現場は混乱した。ベルリンからの命令とヒトラー側からの命令が錯綜していた。実は爆弾を邪魔に思った将校がヒトラーの足下から離してしまい、かすり傷しか負わせられなかった。その夜ラジオにヒトラー本人が現れた。結局、反ヒトラー派は逮捕されて処刑された。ヒトラーが自殺する9ヶ月前だった。
反ヒトラー派はヒトラーの死後、ヒムラーとナチスの私兵団である親衛隊が台頭することを恐れていた。しかし軍事音痴だったヒムラーなら力押しすれば潰せたのではないか?しかし親衛隊や突撃隊に対する潜在的恐怖が軍部や政治家にあり、それがヒトラーを延命したようだ。
自爆テロとかいくらでも暗殺方法はあったが、安全策をとったような気がする。爆弾の威力もアクシデントで半減してしまったとは言え、あまりに低くて中途半端な暗殺計画だったと思う。
そのおかげで国民に人気があったロンメル将軍まで自決させられるなど、戦後ドイツにも多大な影響を与えた。
映画としては、歴史の真実は曲げられないから、トム・クルーズが製作総指揮までする映画ながら全体的に地味で実直な作りだ。好感は持てるが、トム・クルーズでなくても良かった気はする。たとえばケネス・ブラナ-なんて最初と最後しか出番がないが、彼が主役をやった方が渋くて面白い映画になりそう。
とくにシュタウフェンベルクはカトリック教徒だったため、ドイツでカルト認定された宗派に属するトム・クルーズに対して相当な反発があったそうだ。
監督 ブライアン・シンガー
脚本 クリストファー・マッカリー、ネイサン・アレクサンダー
製作 ブライアン・シンガー、ギルバート・アドラー、クリストファー・マッカリー
製作総指揮 トム・クルーズ、ポーラ・ワグナー、クリス・リー
音楽 ジョン・オットマン
撮影 ニュートン・トーマス・シーゲル
配役
トム・クルーズ
ケネス・ブラナー
カリス・ファン・ハウテン
ビル・ナイ
ジェイミー・パーカー
クリスチャン・ベルケル
テレンス・スタンプ
ケヴィン・マクナリー
エディー・イザード
デヴィッド・スコフィールド
トム・ウィルキンソン
トーマス・クレッチマン
デヴィッド・バンバー
トム・ホランダー
ケネス・クランハム
マティアス・フライホフ
ハーヴェイ・フリードマン