障害者問題にメスを入れた「聲の形」の監督山田尚子、待望の新作は京アニが吹奏楽部に青春を掛ける高校生群像を描いたアニメ「響け!ユーフォニアム」からのスピンアウト作品。
具体的には第1部前後編を受けての第2部前編に当たるが、原作第二巻に大胆にメスを入れて原作以上に群像劇らしく仕上げると同時に、女子高生の一瞬のきらめきと微妙な心理を描いている。
あらすじ
久美子たちが2年になって、コンクールの曲は「リズと青い鳥」と決まった。三年生になったフルートの希美、オーボエの天才みぞれ、トランペットの優子部長、ユーフォニアムの夏紀副部長ら吹奏楽部執行部の面々は自らの進路も含めて悩みは尽きない。
希美が持っていた「リズと青い鳥」の原作にみぞれは興味を持つ。その話は一人ぼっちのリズの元に不思議な女の子が現れることから始まる。リズと女の子は楽しく暮らし、明るさを取り戻すが、やがて秋になり、女の子はソワソワし始める。リズが寝たふりをしていると、女の子は青い鳥に変身する。そしてひとっ飛びすると戻ってきて再びベッドで眠っている。リズは秋も終わろうとする日に決意を固め、女の子にもう一緒に暮らせないと宣告する。女の子は嫌がるが、最後にそれがリズの幸せになるならと言って、南の空に飛び立っていく。
みぞれはそれを読んで、自分はリズに似ているが、青い鳥を逃がしはしないと思う。そして希美は青い鳥で私から離れたいのではないかと思っているのでないかと訝しむ。
一方で希美は進路をみぞれと同じ音大にして良いか迷っている。
合同練習で滝先生たちは二人のコンビネーションが悪いと指摘する。
木管担当の新山先生がのぞみの相談に乗る。そして「あなたは勘違いしている」と言う。
一方、希美もその投げやりな態度を優子と夏紀に責められていた。そこで希美はみぞれに持ち続けてきたコンプレックスを告白する。
一方、希美もその投げやりな態度を優子と夏紀に責められていた。そこで希美はみぞれに持ち続けてきたコンプレックスを告白する。
雑感
昔話や童話をネタにして現代に与える影響は、最近のジブリ映画の主題の1つだったが、京アニはジブリよりずっとうまくこのテーマを映像化してしまった。
実はみぞれはリズではなく、青い鳥として新しい世界へ飛び立つべき存在だったのだ。希美こそが青い鳥の成長を喜ぶリズなのだ。二人は住む世界が初めから違うのだ。
作画、背景美術は「響け!ユーフォニアム」と全く違ったが、女の子の瑞々しい感じが見れて全く文句なし。
声優では、もともと芸達者の東山奈央と成長著しい種崎敦美、さらにリズと女の子(青い鳥)の二役演じた本田望結も良かった。
強いて言えば、本編の主人公久美子と麗奈が、やや影は薄かったかな。
でもそれが、この話をより群像劇らしく見せてくれるのだから良いとしよう。
原作第2部の設定を大きく変えてしまったが、この続編である「響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜」も影響は受けたことだろう。
そのために一年間をかけて準備してきて、現在も大ヒット上映中だそうだ。
そのために一年間をかけて準備してきて、現在も大ヒット上映中だそうだ。
スタッフ・キャスト
監督 山田尚子
原作 武田綾乃
脚本 吉田玲子
キャラクターデザイン 西屋太志
美術監督 篠原睦雄
キャスト
種崎敦美 鎧塚みぞれ
種崎敦美 鎧塚みぞれ
東山奈央 傘木希美
本田望結 リズ/少女(二役)
山岡ゆり 吉川優子
藤村鼓乃美 中川夏紀
杉浦しおり 剣崎梨々花
黒沢ともよ 黄前久美子
朝井彩加 加藤葉月
豊田萌絵 川島緑輝
安済知佳 高坂麗奈
リズと青い鳥 2018 京アニ制作 松竹配給 「響け!ユーフォニアム」みぞれ・希美編