日本とイタリアが企画制作し、1976年のクリスマスに日本で上映された白血病の悲劇。
上映当時は田舎でこそ「カサンドラ・クロス」と二本立てで上映されたが、都会では大々的に女性向け新聞広告を打って話題になった作品だ。

 

あらすじ

イギリス人のジョンソン(リチャード・ジョンソン)が手の治療のため、パリの医者に行くと若い娘の父親と間違えられてその娘が白血病に罹り数ヶ月の余命と知らされる。その後会った若い娘ステラ(パメラ・ヴィロレージ )は病状を聞かされても、誤診と言って取り合わない。それより父親を探す旅をしていると言う。しかし父の家に行くと誰もいず、ピアノが置いてあった。ジョンソンはそこで華麗な演奏を聴かせる。彼の本職は売れない作曲家だったのだ。

彼らは父親が住むというパリに向かった。ステラはジョンソンが仕事を探す手伝いもするが、なかなか上手くいかない。ある日、二人は喧嘩して別れ、ステラは一人で父に会いに行く。しかし父は他所の女と一緒になり子供に囲まれ幸せそうに暮らしていた。自分の居場所はないと悟ったその時、ジョンソンが迎えに来て、一緒に暮らそうと言ってくれる。

しばらく二人は貧しいが、幸せに暮らしていた。やがてジョンソンの曲が認められ、自作曲のコンサートに自らピアニストとして出演することが決まる。しかしステラの病状は日に日に悪化の一途を辿り、リハーサル中に入院する。「君がいなければ弾かない」と駄々をこねるジョンソンに対し、彼女は「私はいつもあなたと一緒にいる」と勇気付ける。

そしてコンサートが開幕する。知り合いのシモーヌ(マリア・アントニエッタ)に介助してもらいウェディングドレスを身にまとい、ステラは舞台袖から見守っていたが、彼がソロを演奏し始めると静かに息を引き取った。

 

 

雑感

 

お涙頂戴映画としては、あまり出だしは良くない。大体、最初に白血病に罹ったヒロインがイギリス人の中年作曲家と恋に落ちる過程があまりにも唐突だw。ヒロインがイタリア人ならあり得るのかもしれないが、ヒロインがフランス人でしかも処女の設定なのでちょっと無理がある。
しかし、一旦恋に落ちると、意外にも年の差カップルが本物らしく見えてくる。ヒロインの方はまだ映画の経験は浅いはずだが、「奥様は18歳」という感じが出て来る。でも蜜月は長く続かない。
そして突然の再宣告から入院、夫のコンサートまで怒涛の展開で進んでいく。

唐突なエンディングだが、 その勢いに飲まれてしまう。何故、この映画に乗せられるのだろう。まず、日本ヘラルドの社長が製作の古川勝巳だったが、その下の日本側のプロデューサーが脚本段階から相当口を挟んだんだろう。まるで日活の「絶唱」のようなベタなエンディングだ。カメラに関しては「エマニエル夫人」や「シビルの部屋」のように紗に掛けた撮影が多く見られる。別にヒロインは十分若いのだから、変な撮影テクニックを使う必要はないのだが、これまた日本ヘラルドのプロデューサーの注文だろう。日本ではデビッド・ハミルトン(1977年「ビリティス」の映画監督) の写真集が女性に売れていて時代だったから。

要するに日本人が惹かれたのは、日本の女性向けに作ったからだ。映画ポスターのステラが見上げる姿が印象的だった。まるで少年のようなあどけなさを感じる。

 

なお、リチャード・ジョンソンはロンドンからハリウッドに移りアクションスターとして活躍した。
一方、パメラ・ヴィロレージは映画から舞台生活に戻り活躍して、15年ほどして再び映画に出演しているようだ。映画を見ても下手なのか上手なのかよくわからなかったが、下積み生活を重ね、演技派女優となったそうだ。

 

スタッフ

 

監督 ルイジ・コッツィ
脚本 ルイジ・コッツィ、ミケーレ・デレ・アイエ、ダニエレ・デル・ジュディチェ、ソニア・モルテーニ
製作 オビディオ・G・アソニティス、古川勝巳
音楽 ステルヴィオ・チプリアーニ
撮影 ロベルト・デットーレ・ピアッツォーリ

 

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配役

 

ステラ  パメラ・ヴィロレージ 
リチャード  リチャード・ジョンソン
シモーヌ  マリア・アントニエッタ

 

ラストコンサート (The Last Concert; Dedicato a una stella) 1976 イタリア+日本ヘラルド合作

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