第一次世界大戦終盤戦におけるアメリカ陸軍の秘密兵器と言うべき名スナイパーの伝記映画。この作品でゲイリー・クーパーは主演を演じてアカデミー主演男優賞を受賞した。
監督はハワード・ホークス、脚本はジョン・ヒューストンら四人の脚本家チーム。音楽はマックス・スタイナー。
共演はウォルター・ブレナン、マーガレット・ワイチャリー、ジョージ・トビアス。まだ野生児のような若干16歳ヒロインに新人ジョーン・レスリー。
あらすじ
テネシー州の田舎町にアルヴィン・ヨークは生まれ育つ。父を早く亡くし、母は貧しい開墾地を耕し生計を立てていた。子供の頃から銃は百発百中で、若い頃は不良青年だった。しかしグレイシーに恋してから、ガラリと変わる。グレイシーの父が売りに出している肥えた土地を買うため、せっせと働き始める。しかしアルバイトだけではなかなか金が貯まらず、期限が切れてしまう。彼は何とか週末まで待ってもらう。そして射的大会に出場し見事優勝し賞金を得て、代金を払いに行くが既にゼブに売り渡したと言う。怒ったアルヴィンはライフルを持って復讐に行こうとするが、その時雷が落ちてライフルが壊れてしまう。
この事をきっかけに彼はクリスチャンとしてキリスト教に目覚める。彼はゼブに頭を下げて土地を半分借りて耕すようになり、教会の仕事も手伝うようになる。グレイシーもそんなアルヴィンを愛していることを自覚する
しかし、時は1918年、第一次世界大戦にアメリカは参戦する。やがて彼も戦争に徴兵される。牧師の知恵で牧師補に就いて良心的兵役拒否を申し立てるも、教会がマイナーすぎて認められない。彼は渋々アメリカ国内で訓練を受ける。
アルヴィンの射撃の腕は鈍っておらず、いつも的のど真ん中を射抜く。彼は伍長に出世して、射撃訓練を部下に課すが、戦争も終わりに近づき出征命令が下る。
アルヴィンは十戒の人を殺してはならないという教えに背くことに悩む。
上官の少佐は彼にテネシーに帰ってどうするか考える時間を与える。彼は地元の高い山に登り、一日考え抜いて、やはりフランスへ行くことを決心する。
彼はアルゴンヌの戦いにおいて、分隊の仲間を多く失う。残った8人の仲間とドイツ軍の背後を突いて、彼はライフルと拳銃で射撃するだけで敵を恐怖のどん底に突き落として、降参させる。
ドイツ兵25名を射殺、捕虜が132名という結果にフランス、イギリス、アメリカは沸き立ち、各国の勲章を受勲され、軍曹に昇進する。
彼がアメリカに凱旋帰国した時は、ニューヨークで英雄扱いされる。しかし彼は一刻も早くテネシーへ帰ることを希望する。
彼がテネシーに帰ると母親は泣いて喜び、グレイシーはアルヴィンにテネシー州から贈られた新婚夫婦用の自宅を見せる。
雑感
ヨーク軍曹は貧農の生まれで若い頃はヤンチャだったそうだ。それがあることをキッカケに聖書を読んで信心深くなる。ところが銃の腕前は世界一と言っても良いほどだった。1917年に遅れてアメリカが参戦した第一次世界大戦で招集され、良き上官に会い、アメリカ国民の絆の大切さを教え込まれる。以来、仲間の危機には得意の銃を敵に向けるようになり、大戦果を挙げる。
ストーリーはだいぶん脚色されているが、対独戦での事実は正しくて一人で25人射殺して8人の仲間と共に132人を捕獲している。
1941年と言う開戦直前期に、如何にも戦意高揚映画を公開するのは、アカデミー賞狙いと言うこともあるが、ヨーロッパや太平洋がきな臭くなってきて、とうとう尻に火がついたと言うことだ。
助演女優賞を母役を演じたマーガレット・ワイチャリーに取らせたかった。とても共感できた。
ジョーン・レスリーは発育がいいから、いくらアメリカ人とはいえ、初めて見る人にはまだ十六歳だとは思われなかったろう。自然な演技ができたのに、この後、戦争映画に出過ぎて演技が伸びなくて残念だ。
スタッフ
監督ハワード・ホークス
脚本ジョン・ヒューストン、ハワード・コッチ、エイベム・フィンケル、ハリー・チャンドリー
製作ジェシー・L・ラスキー、ハル・B・ウォリス
音楽マックス・スタイナー
撮影ソル・ポリト
編集ウィリアム・ホームズ (この映画でアカデミー編集賞を受賞)
キャスト
アルヴィン・C・ヨーク:ゲイリー・クーパー (アカデミー主演男優賞受賞)
グレイシー・ウィリアムズ:ジョーン・レスリー
アルヴィンの母:マーガレット・ワイチャリー
ロジエ・パイル牧師:ウォルター・ブレナン
‘プッシャー’・ロス一等兵:ジョージ・トビアス
ゼブ:ロバート・ポーターフィールド
バック:ノア・ビリー・Jr
ボトキン:ワード・ボンド
弟ジョージ:ディッキー・ムーア
妹ロージー:ジューン・ロックハート
バクストン少佐:スタンリー・リッジス