シャム双生児分離手術の名医が複数の人間の口と肛門をつなげてムカデ人間を作りたいという真逆の願望を持ち人々を誘拐してしまうカルト・ホラー映画。オランダ本国やアメリカで公開されるや、グロい内容から評価が分かれた。
コロナ騒動で人々の絆や繋がりが問われている最中に、公開10周年を記念してニコニコ生放送でVtuber 月ノ美兎により実況上映配信された。
あらすじ
ドイツの名形成外科医ハイター博士は、生物の肛門と口を繋ぐ結合手術を施してムカデのようにしたいという願望があった。ある夜、運転手が野糞をしているところを麻酔銃で撃って誘拐する。
翌日雨の中、車のエンコでアメリカ人女性二人が博士の自宅に助けを求めて来た。これも睡眠薬で眠らせ監禁する。
運転手は適合しなかったので空気注射をして殺して庭に埋める。そして代わりの被験者として日本人を誘拐して監禁する。
手術の日、三人を前にして結合手術の方法を解説する。二人のアメリカ人女性は泣き出すし、英語が分からない日本人も図を見て理解し、関西弁で喚き散らす。一人の女性が逃げ出すが麻酔銃で眠らされる。
三人が眠っている間に、日本人男性が先頭になって、一人目のアメリカ人女性が日本人の肛門に口を繋がれ、二人目の女性が一人目の女性の肛門に口を繋がれる。三人は一緒に四つん這いになって、合図を送らないと移動できない。先頭の日本人は食事が与えられる。翌日日本人が便をすると後続の女性の口にそれが入っていく。三番目もそれが移っていく。ところが最後に繋がれた女性は便秘になってしまう。
三人は犬のように博士に足蹴にされる。しかし逃げられないし、普段地下の防音室にいるので誰も助けてくれない。
ある日、行方不明者の足取りを追う警察の刑事二名が博士を訪ねる。博士の怪しい態度に刑事は一旦署に戻って令状を用意して来る。
その間、先頭の日本人が博士のアキレス腱を隠し持っていたメスで切って、博士を倒す。日本人は博士を殺すこともできたが、鬼畜の真似をするわけにいかないと自ら喉を掻っ捌いて自害する。驚いたのは博士の方で、せっかくの実験材料が自殺することを失念していた。
そこへ刑事が戻ってきて、銃撃戦になって刑事二名も博士も死んでしまう。残された二人の女性のうち後ろの方は手術の傷が化膿して衰弱して死んでしまう。真ん中の女性だけが声も上げられず呻いているが、近所の人は誰も気付かない。
雑感
不思議な映画だ。普通だったら怒るほどのクソ映画だが、実際に見てみると(第一部に限っては)博士にも日本人カツローにも情が移るという異常な経験をする。
「ムカデ人間」三部作は2010年代を代表するZ級映画(要するに低予算糞映画)だが、ニコニコ生放送でのVTuber月ノ美兎による同時実況をリアルタイムで見て、まさか感動することになろうとは、、、。滅多に舞台挨拶に行かないから免疫が出来ていなかったのかな。
2月末に主演ディーター・ラーザーが亡くなり、追悼の意味もあり、共演者北村昭博(「SRサイタマノラッパー」「地獄でなぜ悪い」)が映画終了後オンラインで再登場してきた。
そして涙ながらに「多くの人達(当日の視聴者数は61万人!)に見て頂いてありがとうございます」と言ったときは、思わずウルッと来た。とくに彼にとって歴史に残るような作品が初めてだったので思い入れが大きかったのだろう。
高知人である彼の台詞は99%アドリブだったが、最後の辞世だけ監督の指示があった。それも日本語訳を自分で考えて作ったということを聞くと、彼が映画作りに積極的に役割を演じたことが分かって、クソ映画と馬鹿に出来なくなる。どんな映画でも人生をかけている人がいるのだ。
しかし、あらすじに興味がある人も調べない方が良いと思います。第一部は面白いんだけどグロいです。
Virtual Idol 月ノ美兎は最初の頃「ムカデ人間2」を見たと言ってブレークしたが、第1部は見ていなかったらしい。
スタッフ
監督・脚本トム・シックス
製作トム・シックス、イローナ・シックス
音楽パトリック・サベージ、オレグ・スピーズ
撮影グーフ・デ・コニング
キャスト
ヨーゼフ・ハイター博士 ディーター・ラーザー
リンジー アシュリー・C・ウィリアムズ
ジェニー アシュリン・イェニー
カツロー 北村昭博
クランツ刑事 アンドリュー・レオポルド
フェラー刑事 ピーター・ブランケンシュタイン