ブラッド・ピットが貧乏プロ野球チームのカリスマGMに扮した実話映画。「マネーボール理論」によって、メジャーリーグの歴史を変えたビリー・ビーンの半生を描く。
共演はジョナ・ヒル、フィリップ・シーモア・ホフマン、ロビン・ライト。
あらすじ
GMビリー・ジーンを擁するアスレチックスは、プレーオフに進出しながらディヴィジョン・シリーズでヤンキースに敗退する。ウィンター・リーグには好成績を挙げたデイモン、ジアンビ、イズリングハウゼンの3人が契約切れとなり、金満球団に移る。ビリー・ジーンは安く選手を補給するのに悩んでいた。インディアンズにトレードの相談に行った時、オフィスで働いていた小太りの青年が気になる。彼ピーター(エール大学経済学部卒)と話してみると、セイバーメトリクスを使い数字だけで選手を評価していた。彼のことが気に入ったビリー・ジーンはインディアンズに頼んで彼を譲ってもらい、参謀格に据えてチームをセイバーメトリクスを使って作り替えようと決心する。
この理論は、オールマイティに活躍できる選手ではなく、ある分野だけに特化した選手を自分のチームに移籍させる。統計を持ち込むことにより、選手の得意なこと苦手なことがデータで浮き彫りになる。ビーンは、統計データを助けにして、監督に選手を起用するように指示する。それに対して選手や監督の批判は強く、中々協力体制を整えることが困難だった。リーグ序盤戦は地区最下位を低迷してしまう。
しかし、GMの粘り強い説得とチームに必要ないと思われる選手の放出により、セイバーメトリクスを用いた戦術を試さざるを得なくなり、次第にチームの成績は上向きになり、選手や監督も協力してくれるようになる。特に潤沢な資金で運営するヤンキースを打ち負かす。そして記録となる20連勝を達成し、プレーオフ出場を決める。
しかし、アスレチックスは、昨年同様にディヴィジョン・シリーズのツインズ戦で敗退する。ワールド・チャンピオンになることはできなかった。ビーンはウィンターリーグに大金でボストン・レッドソックスに誘われる。彼らはセイバーメトリクスの祖であるビル・ジェイムスをスタッフに雇い入れたところだった。しかしビリーは金に目がくらみ、スタンフォード大学に奨学金で進学が決まっていたのに、メッツでプロ野球選手になり目が出なかった苦い経験を思い出し、オファーを断る。2年後の2004年、そのレッドソックスは、ビル・ジェイムズの統計学を用いて、「バンビーノの呪い」を86年ぶりに解いてワールド・チャンピオンになる。
雑感
結局、大リーグでは金があるチームがいかに効率的に使うかで優勝が決まるというのがこの映画のオチだ。貧乏チームは地区優勝が限界なのだ。
実際、アスレチックスは元中日の強打者ケン・モッカが監督になり、ディヴィジョン・シリーズを勝ち抜くが、タイガースにチャンピオンシップ・シリーズで敗退し、それ以来ワールド・シリーズどころかチャンピオンシップ・シリーズにも出場できていない。
それでもビリー・ジーンはアスレチックスを辞めずにいまだにシニア副社長として働いている。アスレチックスと心中するつもりなのだろう。
アート・ハウ監督を演じたフィリップ・シーモア・ホフマンは相変わらずそっくりだった。ハウ監督はポストシーズンでメッツの監督に転任し、ケン・モッカがコーチから昇格する。
なおこの映画は二回監督が交代している。とくに二番目のスティーブン・ソダーバーグ監督版は選手へのインタビューを使っていたので、ボツになって作り直した。その際の脚本が最終脚本の元になったため、原案者として名前を残している。
スタッフ
監督 ベネット・ミラー
原作 マイケル・ルイス
脚本 アーロン・ソーキン 、 スティーヴン・ゼイリアン
音楽 マイケル・ダナ
製作 マイケル・デ・ルカ 、 レイチェル・ホロビッツ 、 ブラッド・ピット
製作総指揮 スコット・ルーディン 、 アンドリュー・カーシュ 、 シドニー・キンメル 、 マーク・バクシ
原案 スタン・シャービン
撮影 ウォーリー・フィスター
キャスト
GMビリー・ビーン ブラッド・ピット
アシスタントのピーター・ブランド ジョナ・ヒル
元妻シャロン ロビン・ライト
監督アート・ハウ フィリップ・シーモア・ホフマン
一塁手スコット・ハットバーグ クリス・プラット
娘ケーシー・ビーン ケリス・ドーシー
秘書スザンヌ フィッシャー・タカヨ(日系二世の舞台俳優)