サイレントで一回映画化されているが、トーキーでは初めて。
マタ・ハリはオランダ人高級娼婦でインドネシアで暮らした経験からインドネシア風ダンサーを勤めた。第一次世界大戦ではパリで連合軍と枢軸軍の間で二重スパイとして活動して、大戦終盤にフランス軍によって逮捕され銃殺刑になる。
監督はジョージ・フィッツモーリス、主演はグレタ・ガルボ、ラモン・ノヴァロ、ライオネル・バリモア。
あらすじ
第一次世界大戦中、パリに東洋風の踊り子がいた。彼女の名はマタ・ハリといい、ドイツ軍スパイとしても働き、フランス防諜局長デュボアからにらまれていたが、証拠を掴ませなかった。
ロシアの若い将校ロザノフ中尉はロシアから見事に東部戦線と西部戦線の対空砲火をくぐり抜け、パリに到着する。
ロザノフは彼女を一目見るや恋の虜となる。ロザノフが機密文書を所持すると知ると、マタ・ハリは彼の部屋へ行き身を投げ出して、ドイツ諜報員にその文書を盗ませる。
ロシア陸軍シュバン将軍は、それまでマタ・ハリが自分のことをもっとも愛していると信じて、連合軍の情報を彼女に渡していたが、若いロザノフ中尉の登場で、マタ・ハリの気持ちがロザノフに動いているのを知った。
ジュバンは嫉妬のあまりフランス防諜局にマタ・ハリがスパイであることを密告した。そしてロシア大使館にもロザノフ中尉がスパイであると告げようとするが、マタ・ハリはそれを阻止するためシュバンを射殺する。
一方、ロザノフはロシアに飛行機で戻る途中、敵弾をうけ墜落し失明してしまう。マタ・ハリは彼女の隠れ家を抜け出して病院に訪ね、彼と結婚することを誓うのだが、病院を出るとデュボアに逮捕される。
シュバン殺人事件の裁判でマタ・ハリは、ロザノフを証人喚問するという検事の脅しに屈し、甘んじてただ一人で死刑を科せられる。マタ・ハリが手術を受けに行くものと信じている、目が見えないロザノフに別れを告げ、彼女は凜々しい態度で刑場に引かれて行く。
雑感
スパイの悲哀を描いた、トーキー初期の作品であり、なかなかよく出来ていた。グレタ・ガルボの畢竟の名作だと思う。あの冷たいまなざしに、見事に感情移入することが出来た。まだ見ていないが、サイレント版ドイツ映画「マタ・ハリ」(1927)の出来が良かったのだろう。
グレタ・ガルボの登場シーンのインド風ダンスは、当時としてはお色気満点、かなり官能的だった。
スタッフ・キャスト
監督 ジョージ・フィッツモーリス
脚色 ベンジャミン・グレイザー 、 レオ・ビリンスキー
台詞 ドリス・アンダーソン 、 ギルバート・エメリー
撮影 ウィリアム・ダニエルズ
配役
マタ・ハリ グレタ・ガルボ
ロザノフ中尉 ラモン・ノヴァロ
シュバン将軍 ライオネル・バリモア
アンドリアニ ルイス・ストーン
デュボア C・ヘンリー・ゴードン
カルロッタ カレン・モーリー
カロン アレック・B・フランシス
シスター・アンジェリカ ブランシュ・フレデリシ
ウォーデン エドモンド・ブリーズ
シスター・ジュヌヴィエーヴ ヘレン・ジェローム・エディー