大富豪が殺され、未亡人とその愛人が逮捕される。無敗を誇る弁護士が有能な元刑事を彼女のボディガードにするが、彼女を愛してしまった彼は疑心暗鬼に陥る。カーク・ダグラスが主演し、シルヴァ・コシナ、イーライ・ウォラックが共演している。監督はラナ・ターナー主演の「母の旅路」のデビッド・ローウェル・リッチ、脚本はA.J.ラッセル。
1992年ホイットニー・ヒューストン、ケビン・コスナーの主演映画「ボディガード」(製作・脚本ローレンス・カスダン)の元ネタである。ラストカットなどいくつかカットがそっくりだ。しかし92年作より68年作はチープ感満点だが、この作品の方が面白いし、音楽も好みだ。
あらすじ
正義を重んじるニューヨーク市警のスカイラー刑事は上司と衝突して退職する。友人で弁護士のフレデリクスはスカイラーを依頼人のボディガードにスカウトする。依頼人は富豪ウェストブルック氏の若き未亡人で、愛人フレミングとともに夫殺しの疑いをかけられ逮捕され、これから裁判に受ける身だ。彼女のアリバイ証人はマクルーガーだったが、どこかへ忽然と消えてしまう。
未亡人の犯行当日の足取りを追ううちに未亡人とともにフィンチレイという隣人に出会う。フィンチレイは礼儀正しい男だったが、裏で何やら隠し事をしているようである。
初めのうちスカイラーは未亡人を信用していなかったが、打ち解けるうちにベッドを共にしてしまい、未亡人を愛するようになる。
ところが翌日の夜、未亡人は一人で出かけて酒場で愛人と相談していた。またマクルーガーの証言も嘘だった。それ以来未亡人をまた信用できなくなり、遠ざけるようになる。未亡人もスカイラーから見放され、頼りになる側近がいなくなってしまい、自暴自棄になる。
スカイラーの車にマクルーガーが銃殺死体となって現れる。そのことを未亡人を問い詰めるが知らなかったようだ。フレミングに尋ねるとサムソンという大男のボディガードが現れ、スカイラーは痛い目に遭う。しかし殺されなかった。
判決日にマクルーガーの得意先を当たるとフィンチレイの名前があった。警察の友人にフィンチレイについて問い合わせると分厚いファイルを見せてくれるが顔写真は見たことがなかった。スカイラーがフィンチレイ邸に忍び込み彼の部屋に入ると、冷凍保存されていた本物のフィンチレイが横たわっていた。どうやらフィンチレイの振りをしているのはフィンチレイの子分で、その一味は彼の財産を横取りするつもりだった。そのためには顔を知られた未亡人とマクルーガー、スカイラーが邪魔であり、未亡人が無罪判決を受けたら暗殺する予定だ。予想通り未亡人らへの判決は無罪で、彼らは未亡人が帰ってきたところを暗殺しようとする。
スカイラーは彼らに襲われるが脱出して、前もって連絡しておいた警察ヘリに乗り込み未亡人の乗った車を停めようとする。しかし彼女はスカイラーの顔を見た途端、運転手に逃げるように言い、フィンチレイ邸に逃げ込む。ウェストブルック氏を真夜中に遠距離射殺したライフルの名手が未亡人を狙っているのにスカイラーは気付いて真先に射殺すると、悪党どもは一斉に逃げ出すがパトカーに捕まり御用。スカイラーの顔を見た未亡人は訳が分からず叫ぼうとするが、スカイラーの熱い口付けに腰が砕けるのだった。
雑感
オープニング・タイトルバックがテレビドラマかな?と思うほど安っぽい作りだったので、全く期待しないで見ていたらまんまと騙されてしまった。ちゃんと分かりやすい伏線は提示されていたのに、52歳のカーク・ダグラスと35歳のシルヴァ・コシナの熟年コンビにミスリードされてしまった。若者たちに囲まれて二人は年甲斐もなくゴーゴーダンスを踊っていたのだぞw。
とくにシルヴァ・コシナは30代のクロアチア美人らしく、顔にシワが目立ってきた。それでも19歳でミスコンに優勝し23歳でピエトロ・ジェルミ監督の「鉄道員」で妊娠してしまう長女役を演じて国際的女優となった頃のように、球体に鼻を付けたような丸顔で肌に張りがあるからまだ大崩れしない。
この映画は犯人の意外性よりも、作られた1960年代後半のNYサイケ感覚と、ファンクを中心にした音楽が好みだ。同名主題歌を歌うのはジャッキー・ウィルソン。若い頃から黒いエルヴィスと呼ばれて白人女性にキャーキャー騒がれていたファンク歌手だった。
スタッフ
監督 デビッド・ローウェル・リッチ
脚本 A・J・ラッセル
製作 リチャード・ルイス
音楽 ケニヨン・ホプキンス
撮影 モーリス・ハーツバンド
キャスト
元刑事スカイラー:カーク・ダグラス
富豪の未亡人レナ:シルヴァ・コシナ
弁護士フレデリックス:イーライ・ウォラック
愛人フレミング:ケネス・ヘイグ
隣人フィンチレイ:マーティン・グリーン