1973年テレビアクションドラマ「キーハンター」の終了に伴い、俳優千葉真一が新分野に乗り出す。
極真空手の使い手が凄腕ボディガードになると言う梶原一騎原作劇画をもとにした「ボディガード・牙」シリーズだ。監督は鷹森立一、共演は大映から移籍してきた渥美マリ。
あらすじ
牙直人(芸名です)はハイジャックに遭遇したが一瞬のうちにゲリラを倒し、記者会見の席上、ボディガード業の開始を公表した。牙は自宅に妹春日マキとともに会社「神の手機関」を設立した、最初の客は、美輪伶子だった。小切手帳を取りにいったマキがマフィア(何故か日本人)に襲われた。怜子でないと知れたので、全裸にされたが命は取られなかった。伶子はニューヨークのマフィアのボスの情婦になったが、そのボスはイエローマフィアとの抗争で暗殺されたために、ドサクサに紛れて伶子が麻薬5億円を持ち逃げしたのだった。伶子は貿易商海老名とかつての愛人鷹見に売ろうとした。だが鷹見は海老名を殺害し独占しようとした。さらにマフィアが次々と牙と怜子に襲いかかるが、牙がことごとく撃退する。鷹見は三人兄弟のチンピラ猛、徹、茂と手を結んだ。猛らは牙に迫り激しい死闘となった。鷹見がその隙に麻薬を独り占めしようとするが兄弟に打たれる。牙は三段蹴りで立ち向かい、三兄弟を倒す。その時牙に向かって走り寄る伶子は、最期の力で撃った鷹見の拳銃に倒れた。
牙は再び記者会見に臨み、(麻薬を警察に届けたのか)ヒーローに持ち上げられていて、次は世界へ飛び立つと宣言する。
雑感
初の極真映画。千葉真一は体操選手としてオリンピックを目指していたと言うが、実は学生時代から極真空手の道場にも通っていたそうである。
だから台詞はないが、牙が所属した徹真流の祖として大山倍達御大が自ら出演している。これによって正統な極真映画であることを示している。
敵は大概銃や刃物の使い手だが、牙(千葉真一)は拳一つで倒してしまう。
ただし、映画の内容としては劇画をそのまま脚本に生かしたし、怜子(渥美マリ)の麻薬にたかってマフィア、ヤクザ、地元のチンピラが互いに殺し合っているので、余り牙の活躍シーンはなく面白くない。妹マキのスタントを志穂美悦子が行っていたことが有名である。
ブルース・リーはアメリカで殺陣師としても俳優としても実績を残し、地元香港に凱旋し主役映画を連続して撮っていた頃に映画「ボディガード・牙」は公開されたから、一般人はまだカンフーブームがアメリカや香港に来ていることを知らなかった。
そういう意味では先見の明があった。1973年7月にブルース・リーがなくなり12月以降ブルース・リー映画が公開され、カンフー・ブームが日本で発生したのだ。当時の日本人は空手、極真、カンフーの区別が付かず、みんな同じものと考えていた。
次回作「ボディガード・牙 必殺三角飛び」は1973年10月の公開。そこでは牙の妹役に志穂美悦子が昇格する。渡辺やよいも可愛いのに脱ぎっぷりが良くて好きだったのだが、宮下順子と同じタイプだったので出世はしなかった。1979年大相撲の蔵間と結婚したが、蔵間が亡くなり早くに後家になってしまった。
一方、大映でヌードになって早くから主演作に出演した渥美マリだが、大映が潰れた後、関根恵子や松坂慶子と言った同時期の大映出身者がテレビや映画で仕事を増やす中、焦って松竹、東宝と移ったがヌードを拒否して嫌われ、東映でもご同様。1978年に自殺未遂事件を起こして芸能界から消えた。
スタッフ
企画 太田浩児 、 高村賢治
原作 梶原一騎 、 中城健(作画)
脚本 中西隆三
監督 鷹森立一
撮影 中島芳男
音楽 津島利章
キャスト
牙直人 千葉真一
美輪伶子 渥美マリ
鷹見鋭次 内田良平
熊沢猛 山本麟一
熊沢徹 郷英治
熊沢茂 滝波錦司
春日マキ 渡辺やよい
海老名謙三 伊達三郎
大東徹源 大山倍達
ドウべ 安岡力也
(マキのスタント 志穂美悦子)