カルロ・カッソーラの小説をルイジ・コメンチーニマルチェロ・フォンダートが脚色、ルイジ・コメンチーニが演出した。
ヌーベルバーグというより、ネオリアリスモ映画だ。
撮影はジャンニ・ディ・ベナンツォ。モノクロ画像だ。灯が消えていくときの影が美しい。
音楽は「刑事」でお馴染みのカルロ・ルスティケリが担当した。
主演 クラウディア・カルディナーレ、ジョージ・チャキリス、マルク・ミシェル
1944年、イタリアは連合軍に降伏した。
ジョージ・チャキリスは戦時中、パルチザンとして戦い、今は左翼運動に従事している。
戦友の異父妹がクラウディア・カルディナーレ(CC)であった。
CCとチャキリスは文通を続ける。
翌年ぶらっとチャキリスが村に来て、CCとの婚約を父親に認めてもらう。
そしてまた運送業の仕事に出ていく。
またチャキリスが村へやって来たが、今度は様子がおかしい。
問いただすと、憲兵を殺したという。
二人はチャキリスの親元に隠れるが、警察がかぎ回っており、工場跡地に身を潜める。
やっと二人きりになれたが、そこも安住の地ではなかった。
チャキリスはCCを置いて、ユーゴスラビアに逃げる。
CCは田舎にいたたまれなくなって、都会で働く。
そこでマルク・ミシェルと出会う。

当時のイタリアの政治情勢についてはここを見てください。
ファシスト党政権が崩壊した後、キリスト教民主党と社会党が争い、刑法改正で揉めたことが、後半の裁判劇の部分で参考になるでしょう。
映画自体は小説のように淡々と展開する。
チャキリスが罪を犯し、逃亡して、捕まり、裁判に掛けられ、重い罰を受ける。
それだけの話だが、クロウディア・カルディナーレが全編に出てきて、一人称「私」になって語っている。
CCの魅力爆発の映画だ。
歩くときの鳩胸が揺すられるのが非常によろしい。
ソフィア・ローレンより個性的じゃない分だけ、万人受けする美貌だ。
この年はハリウッドの「ピンクの豹」、フェリーニの「8 1/2」、ビスコンティの「山猫」と話題作連発だった。
ただしテレビで見ると、若い頃の回想シーンの顔が疲れていて、皺がいってるように見えた。
スクリーンだったら、違って見えたのではないか。
CCは音楽に恵まれている。
「刑事」最後で主題歌が掛かるシーンが忘れられないが、「ブーベの恋人」でも音楽が感動的に使われている。

ブーベの恋人 1963 イタリア・パラマウント

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