アメリカではシャーリー・マクレーン主演「カンカン」(1960)やニコル・キッドマン主演「ムーランルージュ」(2001)などパリのショービジネスを描いたミュージカル映画がある。
本家フランスでは完全なミュージカルでないが、ジャン・ギャバンが主演して若く奔放でピチピチのフランソワーズ・アルヌールが大スターの仲間入りを果たした作品「フレンチ・カンカン」。
監督はルノワールの次男ジャン・ルノワール、公開は1955年でアメリカ映画よりも美しいカラー作品である。途中でエディット・ピアフの歌唱シーンがある。
映画の興行は成功裏に終わったが、ヌーヴェルバーグの批評家たちは退屈な映画だ言って無視した。

あらすじ

ダングラール氏(ジャン・ギャバン)は盛り場の主人だったが、かつての踊り子ローラ(マリア・フェリックス)が愛人である男爵を使って嫌がらせをするため、店を失う。モンマルトルを徘徊していて、かつてのカンカン踊りに再び流行の兆しがあることを知る。そこで洗濯屋の娘ニニ(フランソワーズ・アルヌール)を主役としてダンサーチームを結成して、新しい店「ムーランルージュ」でカンカンを中心としたショーを行おうと考える。店が新築するまで、ニニと関係を結んだり、ニニの恋人に襲われ骨折したり、ニニが某国の王子様から求婚されたり、色々あったが、1889年に無事完成にこぎ着ける。ところが最初の興行でダングラール氏が歌手のエステル(アンナ・アメンドーラ)を愛していることを知り、ニニはカンカン直前でストライキを起こしてしまう。

雑感

最後のカンカンシーンは、アメリカ映画「カンカン」のアクロバティックなダンスシーンと違い、観客と入り乱れてカンカン娘が踊り狂うものだった。だからアクロバットのもつ芸術的な美は欠片もないが、俄然フランス映画の群舞が迫力があった。
そもそもアメリカ版はモーリス・シュバリエやルイ・ジュールダンの共演はあったとは言え、シャーリー・マクレーンの相手役が何故かフランク・シナトラだから、所詮勝ち目はなかった。アメリカ版で良かったのはシャーリー・マクレーンのダンス。さすがのフランソワーズもこれには敵わなかった。
ダングラール氏の独身主義ぶりはアメリカ版「カンカン」の設定にも生かされている。

スタッフ・キャスト

監督・脚本 ジャン・ルノワール
製作 ルイス・ウィプフ
音楽 ジョルジュ・ヴァン・パリス
撮影 ミシェル・ケルベ
配役
アンリ・ダングラール ジャン・ギャバン
ニニ フランソワーズ・アルヌール
ローラ マリア・フェリックス (メキシコ女優、彼女は「裸足の伯爵夫人」でエヴァ・ガードナーが演じていた役を蹴っていた)
エステル アンナ・アメンドーラ (イタリア女優)
ヴァルテル男爵 ジャン=ロジェ・コシモン
アレクサンドル王子 ジャンニ・エスポジート
ヴァロゲイル大佐 ミシェル・ピッコリ(チョイ役)
歌手 エディット・ピアフ
フレンチ・カンカン French Cancan 1954 フランス製作 ジャン・ギャバン/フランソワーズ・アルヌール主演

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