片岡千恵蔵の無宿シリーズ第二弾。今回の主人公は登山家土門健吉というどこかで聞いた様な名前だが、ヒマラヤで謎の雪男を発見して日本に連れ帰る。ところが土門も雪男も国際陰謀に巻き込まれて行く。
監督はシリーズ前作(「アマゾン無宿 世紀の大魔王」)と同じ小沢茂弘。共演は水谷良重(現二代目水谷八重子)、佐久間良子、進藤英太郎、江原真二郎、羅生門綱五郎他。
年末にニュー東映は親会社東映に吸収合併されたため消滅。無宿シリーズも二作で終了する。
あらすじ
ヒマラヤに怪物が現れ、世界各国の探検隊が襲撃される。一部の学者は、怪物の正体は雪男にちがいないと考える。それから日本のエベレスト探検隊が雪男を捕えたというニュースが世界を駆け巡る。ラスベガスでどの国が雪男を捕えるか賭けを行っていた。ヨッチイ・三谷という女性歌手が日本に賭けてただ一人当てた。
土門健吉博士率いるエベレスト探検隊のが、日本に帰国した。ごった返す羽田空港には、大竹社長が子分に拳銃を抱かせ雪男を殺そうと狙っていた。雪男は姿を見せなかった。新聞カメラマンで土門の妹道子は、兄に探りを入れるが何も喋らない。
ある夜、土門の助手秋山は大きな箱を横浜港から荷上げしてきた。雪男が入っているようだ。探検隊のトラックを、道子の恋人早田記者のポンコツ車が追った。大竹社長とチャン博士も追いかけた。
一方、道子は土門家の浴室にいた雪男を見つけ写真を撮る。道子は恋人早田記者を出世させるために特ダネを与えた。ヨッチィ三谷が土門の前に現れ、協力したいと言う。ボリショイの熊三はジーナ姐御と組んでクラブでの雪男ショーで一稼ぎしていたが、本物の雪男が現れたので失業してしまう。雪男暗殺を謀って土門宅に潜入するが、雪男はヨッチィのホテルに泊まっていた。土門は雪男の餌代のために東京タワーで行われる雪男大会に出場する。熊三も賞品欲しさに出場する。将来参議院議長になる女優などを審査員として厳正なる審査の結果、土門が熊三を破って優勝し、商品の山羊三頭を獲得する。もちろん、その山羊は雪男の食用だ。
土門が雪男を公開しないので、世界の科学者たちが第一回雪男会議が招集した。土門と熊三が化けた雪男が現われ、チャン博士と本物か否か執拗な論争になったが、電気ショックをかけると熊三は降参して正体を明かしてしまう。
そこにヨッチイ・三谷が現れチャンの悪事を暴露した。チャンはヒマラヤでウラン鉱探索をしていたのだ。その際にヒマラヤ人シェルパを口封じのため抹殺したのだ。満を辞してその場に登場した雪男は現地に住むシャルパで、その時の生き残りだったのである。
さらに、ヨッチイこと国際刑事水の江良子はチャンの資金源大竹とモハメッドの悪事もあばいた。その後、大竹らと銃撃戦になったが、土門の銃捌きの方が上だった。全員逮捕あるいは死亡し、雪男くんは再びヒマラヤに帰っていった。土門は雪男くんに別れの挨拶をする。
「ネッパ・カメハメ・ヒマラヤ・ヒポカルチョ」(ヒマラヤで来年の夏に会おう!)
雑感
最後の片岡千恵蔵御大が晴れやかな表情でヒマラヤへ帰る雪男氏に言うセリフはネパール語だろうか、ハナモゲラ語に聞こえて仕方がない。
映画自体は悪ノリがすぎる。これではニュー東映が消滅しても文句は言えない。
それでも日活出身でその後アメリカで映画監督やプロデューサーになった才媛筑波久子や小宮光江(張本勲や青年実業家との交際が噂れたが翌年一月ガス自殺)、山東昭子(参議院議長)が出演していたり、女優ファンには懐かしいところもある。
この映画の1番の見所は、進藤英太郎扮するボリショイの熊三(「アマゾン無宿」ではゴールドラッシュの熊吉だった)だろう。筑波久子が演ずる姉御ジーナのコンビを組む芸人であり、ほとんど上半身裸でフル出場する。雪男大会で女性審査員に身体中触られ、挙句に雪男会議で丈夫さを確認するため人体実験される。いつもの悪役ではなく、コミカルな役だ。これをやらせる監督も監督だが、嫌がる感情を表に出さず演じてしまう役者もすごいw。感服した。
プロレスラー羅生門綱五郎は同年の東宝映画「用心棒」で三船敏郎をぶん投げたが、この映画でも派手に暴れていた。
スタッフ
企画 玉木潤一郎 、 植木照男
原作 松浦健郎
脚色 松浦健郎
監督 小沢茂弘
撮影 西川庄衛
音楽 鈴木静一
キャスト
登山家土門健吉 片岡千恵蔵
ボリショイの熊三 進藤英太郎
ヨッチィ三谷 水谷良重
カメラマン土門道子 佐久間良子
ジーナ 筑波久子
新聞記者早田雄次郎 江原真二郎
助手秋山正三 片岡栄二郎
雪男 羅生門綱五郎
大竹社長 山形勲
チャン博士 三島雅夫
モハメッド委員長 ジョージ・ファーネス
新聞社社会部長 花澤徳衛
山岳評論家・大賀 堺駿二
実況アナウンサー 押坂忍
<雪男大会審査員>
小宮光江 本人
三田佳子 本人
星美智子 本人
山東昭子 本人
久保菜穂子 本人