42歳で遅咲きハンフリー・ボガートの事実上主演第一作のフィルム・ノワール。
プロデューサーはハル・ウォリスで、監督はジェームズ・キャグニー主演「彼奴は顔役だ」でボギーを起用したラウール・ウォルシュ。脚本は「アフリカの女王」を10年後監督してボギーにアカデミー主演男優賞をもたらすジョン・ヒューストン。
形式上の主演はアイダ・ルピノ、足の不自由だった娘役に16歳のジョーン・レスリー、端役にアーサー・ケネディ。
日本公開は1988年。
あらすじ
凶悪な銀行強盗犯だったロイ・アールは、久しぶりに特赦で出所した。早速ボスのビッグ・マックの計らいでロスの高級リゾートを強盗することになった。
あてがわれた部下は若いベイブとレッドだ。ロイは二人が待つキャンプ場へ到着したが、二人ともひよっこの上に一緒に連れている娼婦マリーが目障りだ。事件に女が絡むと失敗するジンクスがある。
ロイはガンリンスタンドで出会ったグッドヒュー夫妻の孫娘ヴェルマに親子以上の歳の差があるのに好意を抱いて、足の悪い彼女の手術代を提供する。
ついに強盗を決行するが、ロイはパトロール中の警官を射殺、逃亡の際ベイブとレッドは運転をあやまり事故死。マックまで心臓発作で死亡、彼も一味の仲間割れで襲われ傷をマリーと逃亡する。途中でヴェルマを訪れたロイは、手術が成功して全快した彼女から婚約者を紹介される。
指名手配が回ったので、マリーと別れたロイは、車で逃走中に警察の非常線に引っ掛かりシエラネバダ山脈に追いつめられる。駆けつけたマリーの見ている最中に、ロイは警察のスナイパーに撃たれ崖から落ちて死ぬ。
雑感
苦労人ハンフリー・ボガートが随分、歳を取ってからの初主演作。とは言ってもタイトルロールではアイダ・ルピノの名前が上だ。
そのボギーの相手が16歳のジョーン・レスリーだとはまるでロリコンのような話なのだが、当時の16歳は発育が良くて大人であるということだったのか。単に愛があれば年の差なんてという考え方が、アメリカ人の常識だったのか?
それにしてはボギーが演ずるロイ役はくたびれて、子種が多そうな気がしなかった。
話としてはマリー役アイダ・ルピノがロイに惚れ込むが、ロイは若い娘に夢中。しかし娘からイケメンを紹介されて落ち込み、マリーに慰めを求めるが、そのラブシーンがヘイズ・コードのおかげで省略されている。だからわかりにくい作品だ。見ている側で抜けた部分を補わなければならない。
主演作が失敗だと後が続かないものだが、女性との逃避行(「カルメン」の原作もこんな話)が受けたのか幸いこの作品は好成績を挙げて、ボギーの主演人生は続く。
ジョーン・レスリーが同年のアカデミー主演男優賞をゲーリー・クーパーが受賞した「ヨーク軍曹」にヒロイン役で出演したこともプラスになったのだろう。
ハイ・シエラとはカリフォルニアの北東部にあるシエラネバダ山脈のこと。
スタッフ
製作総指揮 ハル・B・ウォリス
監督 ラウール・ウォルシュ
脚本 ジョン・ヒューストン 、 W・R・バーネット
原作 W・R・バーネット
撮影 トニー・ゴーディオ
キャスト
マリー アイダ・ルピノ
ロイ ハンフリー・ボガート
ベイブ アラン・カーティス
レッド アーサー・ケネディ
ヴェルマ ジョーン・レスリー