トーマス・ヤーン監督の演出作。
彼が監督になったエピソードが凄い。
彼はタクシーの運転手であり、たまたまドイツのスーパースターでハリウッドにも進出している、ティル・シュバイガーが彼の車に乗ったとき、自作の脚本を読んでもらい、気に入られたというのだ。
男っぽいマーチン(ティル・シュバイガ)と、ちょっとなよっとしたルディは、共に不治の病で、ホスピスに入院している同志。
ある日、この世の最後の思い出に、海を見に行こうと、車を盗んで北へ走る。
ところがその車がヤクザの大金を乗せた車だった。
彼らはそれも知らずに、強盗を繰り返し、北の海へ向かう。
追いかける警察とヤクザから逃げながら、彼らは果たして海に到達できるだろうか?
ボブ・ディランの「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」をバックに海を見つめながらの、最後のシーンが美しい。
面白いのは、最初はマーチンが男っぽい役だったのだが、だんだん死期が近づくにつれ、マーチンが無垢な子供のような表情を見せ、おっとりなよなよとした、ルディの方が、様々な経験を積んで大人っぽく、渋くなっていく。
死を見つめた男たちの表情の変化が、強く印象に残った。
「バンディッツ」、「ランローララン」に続き、日本で上映されたドイツ作品だ。
この映画がドイツではもっとも観客を動員したとのこと。
たしかに音楽的にも俳優的にも最もよくできている。
ドイツ映画って、どうも走っていたり旅先の話だったり、ロードムービー系ばかりのような気がする。
脇役も役者が揃っていて、欧州系映画に興味のある向きには、楽しめる一編。

ノッキン・オン・ヘブンズ・ ドア Knockin’ on Heaven’s Door 1997 ドイツ製作

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