「指環」と言うと最近では「指輪物語」(映画「ロード・オブ・ザ・リング」三部作2001年~2003年)が有名になったが、その元になったのが北欧神話の「エッダ」「サーガ」などと、ドイツの「ニーベルングの歌」である。19世紀にワーグナーはこれらを基にオペラ「ニーベルンゲンの指環」(十五時間)に作り上げた。
この映画ではジークフリートとブリュンヒルデの恋物語とそれを邪魔しようとする者たちの暗躍だけを描いている。ワーグナーのオペラで言えば第二夜「ジークフリート」第三夜「神々の黄昏(ラグナロク)」 に相当するが、ドイツ風「指環」でないので、出だしはかなり変わっているし、ワーグナーの音楽を使っていない。
監督はドイツ人のウーリ・エデル、VFXは同じくドイツ人フォルカー・エンゲル。
主演は北欧に祖先を持ちアメリカ生まれ「ターミネーター3」のT-X役を演じたクリスタナ・ローケンと「戦場のアリア」のドイツ人ベンノ・フユルマン。
共演に「陽のあたる教室」のアメリカ人アリシア・ウィット(美人です)、「眺めのよい部屋」のイギリス人ジュリアン・サンズ、そして「第七の封印」の名優マックス・フォン・シドー。
この作品は英国で先ず劇場上映されて、独伊米でテレビ映画として放送された多国籍作品だ。北欧神話のCG映画化だが、北欧諸国は資本を出していない。いくつか編集による版があるが、長からず短からずの184分の英語版を見た。
あらすじ
前半
- ジークフリートの子供時代、王子だったが、戦争で両親を失い、鍛冶屋のエイヴィントにエリックとして引き取られる。
- エリックが成長したある夜、アイスランドの女王ブリュンヒルデと出会い、愛し合い、結婚を誓い合う。
- エリックはグンター王国(カトリック)のお抱え鍛冶屋として王都に出かける。そこで竜を退治するが、血を浴びて不死身になる。(弱点あり)財宝を手に入れる波、ニーベルングの「指環」の呪いを受ける。
後半
- エリックは双子の王との戦いで、彼らが親の敵であり自分が王ジークフリートであることを思い出す。ニーベルング族のハーゲンはジークフリートにグンター王の妹クリムヒルトとの結婚を勧めるため、媚薬を使ってブリュンヒルデのことを忘れさせる。
- グンター王はブリュンヒルデと結婚するため、彼女と戦ってねじ伏せねばならなかった。そのためにジークフリートを自分の姿に変装させ、代わりに戦わせた。その結果、ブリュンヒルデは敗れ、グンター王はブリュンヒルデを手に入れる・・・。
- ジークフリートと結婚したクリムヒルトは、三日目に呵責の念に堪えきれず、ブリュンヒルデに全てを告白する。その頃、ジークフリートはグンター王、ハーゲンと狩りにでていた。そこでジークフリートは唯一の弱点である首筋を背後から槍で突かれて、死んでしまう。これによって財宝はクンター王家のものになった。
- クリムヒルトは怒り、兄であるグンター王を責める。グンター王は唆したハーゲンを攻めるが、逆にハーゲンに殺され、ブリュンヒルデがハーゲンを真っ二つにする。
- 新王ギーゼルヘアのもとで古代の作法に則り、ジークフリートの葬儀が行われる。舟に火を放って、河に遺体を流したが、船底に隠れていたブリュンヒルデが、ジークフリートの剣で自らの胸を刺し貫き、自害する。
雑感
オペラにすると、9時間ぐらい掛かる内容を、僅か3時間によくまとめた。
ただ、音楽に魅力を感じなかった。ワーグナーを使わなくとも、それに変わるクラスのものが必要。
またVFX(CG)が「ロード・オブ・ザ・リング」と比べても、もの足りない。
ドラゴンとの対決シーンは決して悪くなかった。
しかし、日本のVFXもそうだが、背景美術として見た時、随分見劣る。
さらに、最後にブリュンヒルデが火中に現れ、自殺するところは、60年前の合成映像より下手だった。
スタッフ・キャスト
監督・脚本 ウーリー・エデル(独)
脚本 ダイアン・ヂュアン、ピーター・モーウッド
製作 ローラ・バウアー、アンドレアス・シュミット、コンスタンティン・ソーレン
製作総指揮 アンドレアス・グロッシュ、ティム・ハルキン
音楽 イラン・エシュケリ
撮影 エレメール・ラガリイ
VFX フォルカー・エンデル
キャスト
ベノ・フュルマン (独) エリック(ジークフリート)
クリスタナ・ローケン (米) ブリュンヒルト
アリシア・ウィット(米) クリムヒルト
マックス・フォン・シドー(スウェーデン) エイヴィント
ジュリアン・サンズ(英) ハーゲン
サミュエル・ウェスト(英) グンター王
ロバート・パティンソン ギーゼルヘア
ショーン・ヒッグス アルベリヒ