ホスト・コンピューター内でのセキュリティ・プログラムとセキュリティを破って破壊工作を行おうとする悪いOSの闘いを、史上初のフルCGを使った映像でお送りするささ作品。
監督・脚本はアニメ「アニマリンピック」を演出したスティーブン・リズバーガー。彼と共同製作のドナルド・カシュナーによるディズニーへの持ち込み企画。
主演ジェフ・ブリッジス、ブルース・ボックスライトナー。共演デイヴィッド・ワーナー、シンディ・モーガン、バーナード・ヒューズ。
あらすじ
ENCOMは国防総省にアクセスできるネットワークを持った会社だ。筆頭役員デリンジャーのシステム改悪に、セキュリティ・エンジニアのアランは反発する。物質のレーザー転送を研究しているローラとアランは、元同僚フリンをたずねる。フリンは将来を嘱望された天才エンジニアだったが、デリンジャーにプログラムを盗まれてしまい、会社を辞めた。フリンはApple III を使って、ENCOMのホストにハッキングしようとしたが、デリンジャーの設計したマスター・コントロール・プログラム(MCP)によって阻止されてしまった。
フリンはアランたちと古巣のENCOMに忍びこむ。フリンがローラの端末を使ってシステムに潜入しようとすると、レーザー光線が彼に照射され肉体がデータに変換される。
気付くとフリンは、コンピューター世界に飛ばされていた。フリンは、トロンに出会い、捕囚となった。アランによって作り出されたセキュリティ・プログラムのトロン、フリン、もう一人の囚人プログラムのラムが電子闘技場で戦わされた。ライト・サイクルをやらされた三人はゲームの途中で逃げ出した。
ラムは倒されるが、トロンは、ローラと瓜二つであるヨーリと合流しソーラー帆船に乗り込み、敵司令官サークの母艦と壮絶な戦いを展開した。フリンらはついにサークを倒しMCPに侵入して、ディリンジャーがフリンのプログラムを盗んだ証拠を掴んだ。
再びフリンは人間世界に戻ることが出来て、デリンジャーを失脚させ、フリン自らが社長に就任する。
雑感
CGがテレビ・コマーシャルや映画(マイケル・クライトン監督など)に使われたことはあるが、この映画でフルCGが全面的に使われたのが史上初。ただし使えたのは全面的ではなく十五分余りであり、他は実写あるいは部分的CG映像だった。
映画としては今見ると、たつき監督のような天才クリエイターなら一年かけてパソコン一台で作れるレベルに近いが、1982年には高性能ミニコンで作ったCGを使っていた。
「トロン」という映画は、当時スピルバーグの「ポルターガイスト」「ET」が全盛だったため、興行収入はさっぱりだった。しかし翌年、トロンのアーケード・ゲームが大流行して、映画の人気が復活して、採算が取れたのだ。これはゲームと映画の親和性を表している。
大学に坂村健という助手がいて、すぐ助教授になったけれども、トロンというOSを開発していた。これはこの映画「TRON」に因んで名付けたと講義で言ったのを覚えている。トロンは、その後日本初の一般向けOSとして学校向けに無料配布するとぶち上げたばかりに、アメリカや孫正義に潰されてしまった。でもIoTで組み込みi-TRONが、日本製品にはどんどん組み込まれている。
28年後に「トロン・レガシー」ではフリンの息子が活躍するが、世界観は変わっていない。
主題歌はジャーニーが歌った。
スタッフ
製作 ドナルド・カシュナー
製作総指揮 ロン・ミラー(ディズニー社長)
監督・脚本 スティーヴン・リズバーガー
撮影 ブルース・ローガン
音楽 ウェンディ・カーロス
主題歌 ジャーニー
プロダクション・デザイン シド・ミード 、 メビウス
特殊効果 スティーヴン・リズバーガー 、 リチャード・テイラー 、 ハリソン・エレンショウ
SFXスーパーバイザー リチャード・テイラー
キャスト
ケヴィン・フリン ジェフ・ブリッジス
アアン・ブラッドリー/トロン ブルース・ボックスライトナー
ディリンジャー/サーク デイヴィッド・ワーナー
ローラ/ヨーリ シンディ・モーガン
ウォルター・ギブス博士/デュモント バーナード・ヒューズ
ラム ダン・ショア
クロム ピーター・ジュラシク
中尉 トニー・ステファーノ