ジョー・パステルナークが製作した青春ミュージカル映画。
アリーン・レスリーの原作ラジオ・ドラマからドロシー・クーパーとドロシー・キングスレイが脚本を書き上げ、「円卓の騎士」のリチャード・ソープが監督した。
主演は、原題のタイトルロールを演ずるジェーン・パウエルとエリザベス・テイラー。共演は、ウォーレス・ビアリー、カルメン・ミランダ。
ラテン音楽家のザヴィア・クガートがゲスト出演する。
本邦公開時のフィルムは白黒だったが、DVDでカラー版を見た。
あらすじ
缶詰会社を経営するフォスターの長女ジュディは歌の上手い女子高生。大富豪の親友キャロルの弟でバンド指揮者のウーギー(オグデン)から愛を告白されるが、「女は冷たくされた方が燃える」と姉に言われたためウーギーは出迎えをわざと下級生ジョージョーに任せる。
ジュディはカンカンに怒ってしまう。彼女はドラッグストア店主ポップの気遣いで甥スティーブンと知り合い、パーティーに一緒に行く。医学部に苦学して通うスティーブンにとって、ジュディはただの16歳の子供だった。そんな年上のスティーブンを見てキャロルも一目惚れする。
フォスター夫人は最近流行しているルンバを踊れるが、フォスター氏はを踊れない。結婚記念日のパーティーで妻と一緒にルンバを踊るため、ザヴィア・クガート楽団の歌手ロシータを事務所に招いてルンバを教わる。
翌日キャロルは早速スティーブンスにアタックして、家に誘う。キャロルの母は既に亡くなり、父はどうせ仕事ばかりで家には遅くにしか帰ってこない。しかしスティーブンスは、ジュディを一緒に連れてくる。キャロルは、慌ててウーギーを呼び戻してジュディの相手をさせようと考える。しかしどちらのカップルも言葉の行き違いで喧嘩別れしてしまう。
ある日、ジュディは父の事務所で見慣れない女物のハンドバッグを見つけ、父に愛人が出来たと思い込んでしまう。
一方キャロルの父プリングル氏は、いつもは仕事のことしか考えないのだが、娘に好きな人が出来たというのでスティーブンについて調査する。勝手に身元調査された彼は、怒ってプリングル氏に怒鳴り込む。財産目当てと思い込んでいたプリングル氏は、かえって彼を気に入ってしまう。そして娘がいずれ父の元から去っていくことに気付き、長らく話をしていなかったことを思い出す。
フォスター氏の結婚記念日パーティーでジュディは、ロシータが歌う姿を見て、キャロルと一緒に文句を言ってやろうと勇んで楽屋に押し掛ける。しかし父がルンバをマスターするためにロシータに教わっていたことを知り、誤解が解ける。
ところがパーティーにプリングル氏が連れてきたスティーブンがジュディと踊り出すと、キャロルは複雑な気持ちになる。ジュディはウーギーを振り向かせたいだけだった。ウーギーは、ジュディをボーカルとして舞台に呼び込み、スティーブンとキャロルを二人きりにしてあげる。キャロルは「私は傲慢な娘よ」と囁くと、スティーブンスは「何年も付き合っていれば、慣れるよ」と応える。舞台では両親の結婚20周年を祝って、ジュディが「イッツ・ア・モア・アンユージュアル・デイ」を熱唱し喝采を受けていた。
雑感
元々歌手兼ダンサーであり戦後MGMと契約したジェーン・パウエル(「恋愛準決勝戦」「掠奪された七人の花嫁」)が主演して、当時大ヒットした青春ミュージカル映画。地方の上流家庭の理想的なあり方を描いている。もちろん、現実にはありえないことだ。
ウォーレス・ピアリーは年長なのでタイトルロールの最初に名前が上がっているが、この映画は特にピアリーが主演と言うわけではない。年の割に芸歴が長いエリザベス・テイラーの気を遣ったのだろうが、見せ場の多さで言えばジェーン・パウエルが一番だ。
ジェーン・パウエルは、外見は当時16歳のエリザベス・テイラーと比ぶるベくもないが、歌わせたら怖いもの無しだ。基本的にソプラノ歌手なのだが、低い声まで出せるので、普通のミュージカル・ナンバーもこなせる。キャサリン・グレイソンより少し低くて、ジュディ・ガーランドより高い声が出ている。加齢することで次第に声は低くなり、普通のメゾソプラノになったが、この映画の19歳の頃は無敵だった。
この映画で歌った「イッツ・ア・モア・アンユージュアル・デイ」は、悲劇の歌手ビヴァリー・ケニーも歌っていて、スタンダード・ナンバーになった。
エリザベス・テイラーは、若干16歳にして女の色気をぷんぷんさせている。既にセレブであり、夜の生活も普通の16歳のものではなかっただろう。見方によれば、背の低いジェーン・パウエルよりも、ずっと年上に見えた。しかし歌を歌えないために、主役を演じることができなかった。彼女はMGMでラナ・ターナーが演じたような役を演じたかっただろう。結婚離婚を通して、ステージママとMGMから離れて、性格俳優に成長する。
ロバート・スタックはこう言うコメディにもしばしば出演するが、居心地が悪そう。やはり警察官がお似合いだ。
ルンバの王様ザヴィア・クガートとブラジルの歌姫カルメン・ミランダが、揃って客演している。特にカルメン・ミランダはパパ役のピアリーにルンバの踊り方を教える。これがダンス音痴にはなかなか参考になった。
スタッフ
監督リチャード・ソープ
製作ジョー・パスターナク
脚本ドロシー・クーパー、ドロシー・キングスレイ
原作アリーン・レスリー
撮影ロバート・サーティース
音楽ジョージー・ストール
キャスト
メルビン・フォスター ウォーレス・ビアリー
娘ジュディ・フォスター ジェーン・パウエル
キャロル・プリングル エリザベス・テイラー
歌手ロシータ カルメン・ミランダ
スティーヴン ロバート・スタック
ザヴィア・クガート 本人
キャロルの弟オグデン スコッティ・ベケット
フォスター夫人 セレナ・ロイル
プリングル氏 レオン・エイムス
ジェイムソン クリントン・サンドバーグ
グランプス ジョージ・クリーヴランド
ポップ・サム・スカリー ロイド・コリガン